社会保険労務士の過去問
第54回(令和4年度)
健康保険法 問10

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問題

社労士試験 第54回(令和4年度) 択一式 健康保険法 問10 (訂正依頼・報告はこちら)

費用の負担に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 3月31日に会社を退職し、翌日に健康保険の被保険者資格を喪失した者が、4月20日に任意継続被保険者の資格取得届を提出すると同時に、4月分から翌年3月分までの保険料をまとめて前納することを申し出た。この場合、4月分は前納保険料の対象とならないが、5月分から翌年の3月分までの保険料は、4月末日までに払い込むことで、前納に係る期間の各月の保険料の額の合計額から、その期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額(この額に1円未満の端数がある場合において、その端数金額が50銭未満であるときは、これを切り捨て、その端数金額が50銭以上であるときは、これを1円として計算する)を控除した額となる。
  • 6月25日に40歳に到達する被保険者に対し、6月10日に通貨をもって夏季賞与を支払った場合、当該標準賞与額から被保険者が負担すべき一般保険料額とともに介護保険料額を控除することができる。
  • 4月1日にA社に入社し、全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者資格を取得した被保険者Xが、4月15日に退職し被保険者資格を喪失した。この場合、同月得喪に該当し、A社は、被保険者Xに支払う報酬から4月分としての一般保険料額を控除する。その後、Xは4月16日にB社に就職し、再び全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者資格を取得し、5月以降も継続して被保険者である場合、B社は、当該被保険者Xに支払う報酬から4月分の一般保険料額を控除するが、この場合、A社が徴収した一般保険料額は被保険者Xに返還されることはない。
  • 育児休業期間中に賞与が支払われた者が、育児休業期間中につき保険料免除の取扱いが行われている場合は、当該賞与に係る保険料が徴収されることはないが、標準賞与額として決定され、その年度における標準賞与額の累計額に含めなければならない。
  • 日雇特例被保険者が、同日において、午前にA健康保険組合管掌健康保険の適用事業所で働き、午後に全国健康保険協会管掌健康保険の適用事業所で働いた。この場合の保険料の納付は、各適用事業所から受ける賃金額により、標準賃金日額を決定し、日雇特例被保険者が提出する日雇特例被保険者手帳に適用事業所ごとに健康保険印紙を貼り、これに消印して行われる。

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この過去問の解説 (3件)

01

健康保険法のうち、費用の負担については、特に会社員についてはいわゆる給与天引きで、どのような考え方でいくら給与から引かれているのか、わかりづらい部分があるかと思います。ですがお金の面では大変重要な点なので、ぜひ学習しておきましょう。それでは問題を見ていきましょう。

選択肢1. 3月31日に会社を退職し、翌日に健康保険の被保険者資格を喪失した者が、4月20日に任意継続被保険者の資格取得届を提出すると同時に、4月分から翌年3月分までの保険料をまとめて前納することを申し出た。この場合、4月分は前納保険料の対象とならないが、5月分から翌年の3月分までの保険料は、4月末日までに払い込むことで、前納に係る期間の各月の保険料の額の合計額から、その期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額(この額に1円未満の端数がある場合において、その端数金額が50銭未満であるときは、これを切り捨て、その端数金額が50銭以上であるときは、これを1円として計算する)を控除した額となる。

本設問文の場合は、後半の1文について、結果として(簡単に言うと)年4分の利率を乗じた程度の(とても低額の)保険料を納めればよいように読み取れてしまうので、その点が(常識的に考えて)誤りだと指摘できると考えます。

本設問文は、後半の1文がとても長く、カッコ書きもありかつ長いので、主語と述語のつながりがとらえづらいと思います。

主語と述語のポイントをとらえて正誤の見当をつけたら、いったん他の設問文に行くのもありだと筆者は考えています。

選択肢2. 6月25日に40歳に到達する被保険者に対し、6月10日に通貨をもって夏季賞与を支払った場合、当該標準賞与額から被保険者が負担すべき一般保険料額とともに介護保険料額を控除することができる。

本設問文のとおりです。

介護保険料については、40歳に到達した月から、支払う必要があるものと理解しておきましょう。

選択肢3. 4月1日にA社に入社し、全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者資格を取得した被保険者Xが、4月15日に退職し被保険者資格を喪失した。この場合、同月得喪に該当し、A社は、被保険者Xに支払う報酬から4月分としての一般保険料額を控除する。その後、Xは4月16日にB社に就職し、再び全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者資格を取得し、5月以降も継続して被保険者である場合、B社は、当該被保険者Xに支払う報酬から4月分の一般保険料額を控除するが、この場合、A社が徴収した一般保険料額は被保険者Xに返還されることはない。

本設問文のとおりです。

本設問文の場合の被保険者Xは、とても例外的な行動をする点があるのは置いておいて、このような場合には、条文に従うとA社・B社の両方より保険料額が控除される点を理解しておくとよいでしょう。

選択肢4. 育児休業期間中に賞与が支払われた者が、育児休業期間中につき保険料免除の取扱いが行われている場合は、当該賞与に係る保険料が徴収されることはないが、標準賞与額として決定され、その年度における標準賞与額の累計額に含めなければならない。

本設問文のとおりです。

育児休業期間中の本設問文の条件については、この通り理解しておきましょう。

選択肢5. 日雇特例被保険者が、同日において、午前にA健康保険組合管掌健康保険の適用事業所で働き、午後に全国健康保険協会管掌健康保険の適用事業所で働いた。この場合の保険料の納付は、各適用事業所から受ける賃金額により、標準賃金日額を決定し、日雇特例被保険者が提出する日雇特例被保険者手帳に適用事業所ごとに健康保険印紙を貼り、これに消印して行われる。

本設問文の場合、午前に働いた事業所にて納付を行います。

日雇特例被保険者の保険料の納付に関して、1日に2以上の事業所で使用される場合は、最初の事業所における賃金額にもとづく納付を行う点を、理解しておくとよいでしょう。

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02

正解肢が日雇特例被保険者の2以上の事業所で使用される場合の保険料に関するもので、これは合算しないと記憶していれば、他の選択肢の正誤判断がつかなくても回答できる問題でした。

選択肢1. 3月31日に会社を退職し、翌日に健康保険の被保険者資格を喪失した者が、4月20日に任意継続被保険者の資格取得届を提出すると同時に、4月分から翌年3月分までの保険料をまとめて前納することを申し出た。この場合、4月分は前納保険料の対象とならないが、5月分から翌年の3月分までの保険料は、4月末日までに払い込むことで、前納に係る期間の各月の保険料の額の合計額から、その期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額(この額に1円未満の端数がある場合において、その端数金額が50銭未満であるときは、これを切り捨て、その端数金額が50銭以上であるときは、これを1円として計算する)を控除した額となる。

正:任意継続被保険者の保険料の前納に関する問です。保険料の支払月、前納の要件と期間、割引率、端数処理など細かな規定ですが、正しい内容です。(後日に本問は誤りとされました。その理由は1か月の保険料を100円、前納に係る期間を12か月とする場合、「前納に係る期間の各月の保険料の額の合計額(1200円)から、その期間の各月の保険料の額を年4分の利率(4%として4円)による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額(1152円)を控除した額(48円)」となってしまうため)

(任意継続被保険者の保険料の前納)

第百六十五条 任意継続被保険者は、将来の一定期間の保険料を前納することができる。

2 前項の場合において前納すべき額は、当該期間の各月の保険料の額から政令で定める額を控除した額とする。

3 第一項の規定により前納された保険料については、前納に係る期間の各月の初日が到来したときに、それぞれその月の保険料が納付されたものとみなす。

(保険料の前納期間)

第四十八条 法第百六十五条第一項の規定による保険料の前納は、四月から九月まで若しくは十月から翌年三月までの六月間又は四月から翌年三月までの十二月間を単位として行うものとする。ただし、当該六月又は十二月の間において、任意継続被保険者の資格を取得した者又はその資格を喪失することが明らかである者については、当該六月間又は十二月間のうち、その資格を取得した日の属する月の翌月以降の期間又はその資格を喪失する日の属する月の前月までの期間の保険料について前納を行うことができる。

(前納の際の控除額)

第四十九条 法第百六十五条第二項の政令で定める額は、前納に係る期間の各月の保険料の合計額から、その期間の各月の保険料の額を年四分の利率による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額(この額に一円未満の端数がある場合において、その端数金額が五十銭未満であるときは、これを切り捨て、その端数金額が五十銭以上であるときは、これを一円として計算する。)を控除した額とする。

選択肢2. 6月25日に40歳に到達する被保険者に対し、6月10日に通貨をもって夏季賞与を支払った場合、当該標準賞与額から被保険者が負担すべき一般保険料額とともに介護保険料額を控除することができる。

正:40歳に達する月の賞与にかかる介護保険料は当月の保険料から控除するか否かを問うものですが、控除します。40歳到達月に介護保険第二号被保険者となりますので、介護保険料の徴収が始まります。

選択肢3. 4月1日にA社に入社し、全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者資格を取得した被保険者Xが、4月15日に退職し被保険者資格を喪失した。この場合、同月得喪に該当し、A社は、被保険者Xに支払う報酬から4月分としての一般保険料額を控除する。その後、Xは4月16日にB社に就職し、再び全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者資格を取得し、5月以降も継続して被保険者である場合、B社は、当該被保険者Xに支払う報酬から4月分の一般保険料額を控除するが、この場合、A社が徴収した一般保険料額は被保険者Xに返還されることはない。

正:同月に健康保険被保険者の得喪があり、更に同じ月にもう一度健康保険の被保険者資格を取得する場合、保険料はどうなるのかという問です。健康保険法では本肢の場合では2回分の保険料が徴収され、還付されることはありません。

選択肢4. 育児休業期間中に賞与が支払われた者が、育児休業期間中につき保険料免除の取扱いが行われている場合は、当該賞与に係る保険料が徴収されることはないが、標準賞与額として決定され、その年度における標準賞与額の累計額に含めなければならない。

正:育児休業中の保険料免除期間中に支払われる賞与は標準賞与として決定されるかという問ですが、決定されます。保険料免除と標準賞与の決定とは関係がありません。類似の規定として、被保険者資格の喪失月に賞与が支払われる場合に保険料の徴収は行われませんが、標準賞与として決定されます。

選択肢5. 日雇特例被保険者が、同日において、午前にA健康保険組合管掌健康保険の適用事業所で働き、午後に全国健康保険協会管掌健康保険の適用事業所で働いた。この場合の保険料の納付は、各適用事業所から受ける賃金額により、標準賃金日額を決定し、日雇特例被保険者が提出する日雇特例被保険者手帳に適用事業所ごとに健康保険印紙を貼り、これに消印して行われる。

誤:日雇特例被保険者が同日に2以上事業所で使用される場合の標準賃金日額はどのように計算されるかという問です。最初に使用される事業所から受ける賃金により決定します。

「・・・この場合の保険料の納付は、各適用事業所から受ける賃金額により、標準賃金日額を決定し・・・」

(賃金日額)第百二十五条

六 一日において二以上の事業所に使用される場合には、初めに使用される事業所から受ける賃金につき、前各号によって算定した額

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03

費用の負担からの出題です。通達からの出題も含まれていたため、解答に迷う箇所があったと思われます。なお、この設問は複数の正答がありますが、どちらも基本的な内容でしたので、両方とも正解できるようにしてもらいたいです。

選択肢1. 3月31日に会社を退職し、翌日に健康保険の被保険者資格を喪失した者が、4月20日に任意継続被保険者の資格取得届を提出すると同時に、4月分から翌年3月分までの保険料をまとめて前納することを申し出た。この場合、4月分は前納保険料の対象とならないが、5月分から翌年の3月分までの保険料は、4月末日までに払い込むことで、前納に係る期間の各月の保険料の額の合計額から、その期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額(この額に1円未満の端数がある場合において、その端数金額が50銭未満であるときは、これを切り捨て、その端数金額が50銭以上であるときは、これを1円として計算する)を控除した額となる。

誤り:(根拠)法37条1項、157条、165条1項・2項・4項、令48条、49条

前納保険料の額は、前納に係る期間の各月の保険料の額の合計額から、その期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額(この額に1円未満の端数がある場合において、その端数金額が50銭未満であるときは、これを切り捨て、その端数金額が50銭以上であるときは、これを1円として計算する)を控除した額「を控除した額」となる。

選択肢2. 6月25日に40歳に到達する被保険者に対し、6月10日に通貨をもって夏季賞与を支払った場合、当該標準賞与額から被保険者が負担すべき一般保険料額とともに介護保険料額を控除することができる。

正しい:(根拠)法156条1項1号、167条2項、介護保険法9条2号

被保険者に関する保険料額は各月ごとに算定するため、40歳に達した月に賞与が支払われた場合には、その支払日が介護保険第2号被保険者になる前であっても、当該標準賞与額から介護保険料を控除することができます。

選択肢3. 4月1日にA社に入社し、全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者資格を取得した被保険者Xが、4月15日に退職し被保険者資格を喪失した。この場合、同月得喪に該当し、A社は、被保険者Xに支払う報酬から4月分としての一般保険料額を控除する。その後、Xは4月16日にB社に就職し、再び全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者資格を取得し、5月以降も継続して被保険者である場合、B社は、当該被保険者Xに支払う報酬から4月分の一般保険料額を控除するが、この場合、A社が徴収した一般保険料額は被保険者Xに返還されることはない。

正しい:(根拠)法156条3項、167条1項、S19.6.6保発363号、S27.7.14保文発3917号

被保険者資格の同月得喪の場合は、通貨をもって支払う報酬から当該月(設問の場合は4月)の標準報酬月額に係る保険料を控除することができますが、さらに同月に別の被保険者資格を取得し、翌月以降に継続して被保険者である場合は、被保険者資格取得に際して決定した標準報酬月額に係る当該月分(設問の場合は4月)の保険料を控除することができます。

選択肢4. 育児休業期間中に賞与が支払われた者が、育児休業期間中につき保険料免除の取扱いが行われている場合は、当該賞与に係る保険料が徴収されることはないが、標準賞与額として決定され、その年度における標準賞与額の累計額に含めなければならない。

正しい:(根拠)法45条1項、159条1項、H19.1.31事務連絡

保険料免除期間に支払われた賞与については、保険料は徴収されないが、標準賞与額の累計額の573万円には含まれます。

選択肢5. 日雇特例被保険者が、同日において、午前にA健康保険組合管掌健康保険の適用事業所で働き、午後に全国健康保険協会管掌健康保険の適用事業所で働いた。この場合の保険料の納付は、各適用事業所から受ける賃金額により、標準賃金日額を決定し、日雇特例被保険者が提出する日雇特例被保険者手帳に適用事業所ごとに健康保険印紙を貼り、これに消印して行われる。

誤り:(根拠)法169条2項、3項

日雇特例被保険者が1日に2以上の事務所に使用される場合における保険料は、初めにその者を使用する事業主が負担することになります。そのため設問の場合は、午前に働いた事業所の事業主が日雇特例被保険者手帳に健康保険印紙を貼り、これに消印をすることで保険料を納付することになります。

まとめ

基本的な内容からの出題が多かったため、他の問題と比べると解答しやすいといえます。また、この設問は複数の正答があるため、どちらかを選択すればよいことになりますが、いずれも基本的な内容ですので、しっかりと選べるようにしましょう。

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