社会保険労務士の過去問
第54回(令和4年度)
厚生年金保険法 問3

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問題

社労士試験 第54回(令和4年度) 択一式 厚生年金保険法 問3 (訂正依頼・報告はこちら)

厚生年金保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  • 甲は、昭和62年5月1日に第3種被保険者の資格を取得し、平成元年11月30日に当該被保険者資格を喪失した。甲についての、この期間の厚生年金保険の被保険者期間は、36月である。
  • 老齢厚生年金の加給年金額の加算の対象となっていた子(障害等級に該当する障害の状態にないものとする。)が、18歳に達した日以後の最初の3月31日よりも前に婚姻したときは、その子が婚姻した月の翌月から加給年金額の加算がされなくなる。
  • 適用事業所に使用されている第1号厚生年金被保険者である者は、いつでも、当該被保険者の資格の取得に係る厚生労働大臣の確認を請求することができるが、当該被保険者であった者が適用事業所に使用されなくなった後も同様に確認を請求することができる。
  • 障害手当金の受給要件に該当する被保険者が、障害手当金の障害の程度を定めるべき日において遺族厚生年金の受給権者である場合は、その者には障害手当金は支給されない。
  • 同時に2以上の適用事業所で報酬を受ける厚生年金保険の被保険者について標準報酬月額を算定する場合においては、事業所ごとに報酬月額を算定し、その算定した額の平均額をその者の報酬月額とする。

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この過去問の解説 (3件)

01

概ね基本事項からの出題ですが、被保険者期間の特例はそれだけを見て確実な正誤判断が難しい可能性もあるかもしれません。しかし正解肢の複数の事業所に使用される者の標準報酬月額の決定は近年の法改正事項であり、多くの方が注意して学習していたと思われ正誤判断が可能と思います。

選択肢1. 甲は、昭和62年5月1日に第3種被保険者の資格を取得し、平成元年11月30日に当該被保険者資格を喪失した。甲についての、この期間の厚生年金保険の被保険者期間は、36月である。

正:被保険者期間の計算(第3種被保険者であった期間)からの出題です(昭60法附則47条2項~4項)。昭和61年4月1日~平成3年3月31日までの期間について厚生年金保険の第3種被保険者であった期間は実際の期間を5分の6倍した期間と規定されています。本肢の被保険者期間は30カ月(昭和62年5月1日~平成10月31日)のため、5分の6倍した36か月が正しいです。

選択肢2. 老齢厚生年金の加給年金額の加算の対象となっていた子(障害等級に該当する障害の状態にないものとする。)が、18歳に達した日以後の最初の3月31日よりも前に婚姻したときは、その子が婚姻した月の翌月から加給年金額の加算がされなくなる。

正:加給年金額の改定からの出題です。年金額の改定は事由に至った月の翌月から改定です。

(加給年金額)

第四十四条 4 第一項の規定によりその額が加算された老齢厚生年金については、配偶者又は子が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、同項の規定にかかわらず、その者に係る同項の加給年金額を加算しないものとし、次の各号のいずれかに該当するに至つた月の翌月から、年金の額を改定する。

選択肢3. 適用事業所に使用されている第1号厚生年金被保険者である者は、いつでも、当該被保険者の資格の取得に係る厚生労働大臣の確認を請求することができるが、当該被保険者であった者が適用事業所に使用されなくなった後も同様に確認を請求することができる。

正:被保険者資格の確認の請求に関する問です。確認に請求期限はありません。

(確認の請求)

第三十一条 被保険者又は被保険者であつた者は、いつでも、第十八条第一項の規定による確認を請求することができる。

選択肢4. 障害手当金の受給要件に該当する被保険者が、障害手当金の障害の程度を定めるべき日において遺族厚生年金の受給権者である場合は、その者には障害手当金は支給されない。

正:障害手当金の支給要件について支給されない場合を問うものです。厚生年金法の年金たる保険給付の受給権者(現に障害に該当しない)は除かれます。本肢では遺族厚生年金の受給権者とあるため、そちらで生活ができると考えられ、わざわざ一時金は支給しません。

第五十六条 前条の規定により障害の程度を定めるべき日において次の各号のいずれかに該当する者には、同条の規定にかかわらず、障害手当金を支給しない。

一 年金たる保険給付の受給権者(最後に障害等級に該当する程度の障害の状態(以下この条において「障害状態」という。)に該当しなくなつた日から起算して障害状態に該当することなく三年を経過した障害厚生年金の受給権者(現に障害状態に該当しない者に限る。)を除く。)

選択肢5. 同時に2以上の適用事業所で報酬を受ける厚生年金保険の被保険者について標準報酬月額を算定する場合においては、事業所ごとに報酬月額を算定し、その算定した額の平均額をその者の報酬月額とする。

誤:複数の事業所に使用される場合の標準報酬月額の決定に関する問です。それぞれの事業所から受け取る報酬の生の額を先に合算し、合算した報酬金額を等級表に当てはめて標準報酬月額を決定します。「・・・事業所ごとに報酬月額を算定し・・・」

(報酬月額の算定の特例)

第二十四条 (中略)

2 同時に二以上の事業所で報酬を受ける被保険者について報酬月額を算定する場合においては、各事業所について、第二十一条第一項、第二十二条第一項、第二十三条第一項、第二十三条の二第一項若しくは前条第一項又は前項の規定によつて算定した額の合算額をその者の報酬月額とする

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02

この問題で覚えておくポイントは各イベントでの「計算」「時期」「条件」になります。

選択肢1. 甲は、昭和62年5月1日に第3種被保険者の資格を取得し、平成元年11月30日に当該被保険者資格を喪失した。甲についての、この期間の厚生年金保険の被保険者期間は、36月である。

(〇)

厚生年金第3種(船員・坑内員)の被保険者期間の計算の特例に該当します。

被保険者期間の実期間が30カ月なので、特例の計算式に当てはめると30カ月×6/5倍=36カ月となります。

選択肢2. 老齢厚生年金の加給年金額の加算の対象となっていた子(障害等級に該当する障害の状態にないものとする。)が、18歳に達した日以後の最初の3月31日よりも前に婚姻したときは、その子が婚姻した月の翌月から加給年金額の加算がされなくなる。

(〇)

加給年金は、18歳に達した日以後の最初の3月31日よりも前に婚姻したときは、その子が婚姻した「月の翌月」から加給年金額の加算がされなくなります。

選択肢3. 適用事業所に使用されている第1号厚生年金被保険者である者は、いつでも、当該被保険者の資格の取得に係る厚生労働大臣の確認を請求することができるが、当該被保険者であった者が適用事業所に使用されなくなった後も同様に確認を請求することができる。

(〇)

被保険者の資格の取得に係る厚生労働大臣への確認請求は、適用事業所に使用されなくなった後も同様にいつでも請求することができます。

選択肢4. 障害手当金の受給要件に該当する被保険者が、障害手当金の障害の程度を定めるべき日において遺族厚生年金の受給権者である場合は、その者には障害手当金は支給されない。

(〇)

障害手当金が支給されない場合とは、厚生年金保険、国民年金保険の年金給付の受給権者であると支給されません。

問題では、遺族厚生年金を受給している場合ですので、障害手当金は支給されません。

選択肢5. 同時に2以上の適用事業所で報酬を受ける厚生年金保険の被保険者について標準報酬月額を算定する場合においては、事業所ごとに報酬月額を算定し、その算定した額の平均額をその者の報酬月額とする。

事業所ごとに報酬月額を算定した後、その算定した額の「平均額」ではなく、それぞれの会社の報酬月額を「合算」した額をその者の報酬月額とします。

まとめ

厚生年金第3種(船員・坑内員)の被保険者期間特例については、

【 昭和61年3月31日まで 】第3種被保険者期間=被保険者期間(実期間)×4/3倍

【 昭和61年4月1日~平成3年3月31日 】第3種被保険者期間=被保険者期間(実期間)×6/5倍

【 平成3年4月1日以降 】第3種被保険者期間=被保険者期間(実期間)になります。

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03

 厚生年金保険は、いわゆる多様な労働者の種類に応じて様々な規定を設けているため、自分自身の実生活の立場を中心として、周囲の人に広げながら各種規定にかかる知識を習得していくようにすると、足場を固めるような形で知識が身についていく(忘れることが少ない)と思われます。

 あまり隅の知識にはこだわりすぎずに学習していくとよいでしょう。

選択肢1. 甲は、昭和62年5月1日に第3種被保険者の資格を取得し、平成元年11月30日に当該被保険者資格を喪失した。甲についての、この期間の厚生年金保険の被保険者期間は、36月である。

 正しい記述です。

 本設問文の場合、実期間は30月となります。

 これに対し、該当期間は実期間を5分の6倍した月数を被保険者期間とする特例があるため、本設問文のとおり36月となります。

 第3種被保険者にかかる被保険者期間カウント方法の特例については、実世界での適用数は年々減少するため、学習の優先度は下げてもよいと筆者は考えています。

選択肢2. 老齢厚生年金の加給年金額の加算の対象となっていた子(障害等級に該当する障害の状態にないものとする。)が、18歳に達した日以後の最初の3月31日よりも前に婚姻したときは、その子が婚姻した月の翌月から加給年金額の加算がされなくなる。

 正しい記述です。

 通常は18歳に達した日以後の最初の3月31日を経過した時点で、いわゆる「子供」から「大人(成人)」に扱いが変わりますが、それより前に婚姻した場合には、その時点で子供ではなく大人(成人)と同等に扱われる(婚姻できるのだから既に一人前であるとみなされる)ものと理解しておきましょう。

選択肢3. 適用事業所に使用されている第1号厚生年金被保険者である者は、いつでも、当該被保険者の資格の取得に係る厚生労働大臣の確認を請求することができるが、当該被保険者であった者が適用事業所に使用されなくなった後も同様に確認を請求することができる。

 正しい記述です。

 厚生年金保険の被保険者の資格取得(資格喪失も同様です)は、適用事業所の事業主の届出により行われ、保険者の確認によってその効力を生じます。

 しかし、事業主の未届又は事実と相違する届出が行われた場合には、後日、被保険者が保険給付等を受けるときに不利益を被ってしまう場合があります。

 このため、被保険者又は被保険者であった者が、自らも保険者へ被保険者資格の確認の請求ができるようになっています。

選択肢4. 障害手当金の受給要件に該当する被保険者が、障害手当金の障害の程度を定めるべき日において遺族厚生年金の受給権者である場合は、その者には障害手当金は支給されない。

 正しい記述です。

 簡単に言うと、障害手当金は、他の事由による年金の受給権がない人に対し、いわば支援のために支給されるものである点を、理解しておくとよいでしょう。

選択肢5. 同時に2以上の適用事業所で報酬を受ける厚生年金保険の被保険者について標準報酬月額を算定する場合においては、事業所ごとに報酬月額を算定し、その算定した額の平均額をその者の報酬月額とする。

 誤った記述です。

 本設問文の場合、それぞれの事業所で算定した報酬月額の合算額が報酬月額となります。

 報酬月額は、将来受給できる年金額に直接影響するものであり、報酬を2以上の事業所で受けているがために平均額となる(=将来の受給額が報酬に見合わず低額となってしまう)本設問文は誤りである(当事者であれば納得いかないであろう)点は、容易に判断が可能だと考えます。

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