司法書士の過去問
平成25年度
午前の部 問9
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問題
平成25年度 司法書士試験 午前の部 問9 (訂正依頼・報告はこちら)
共有に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、幾つあるか。
ア 共有物の分割について共有者間に協議が成立した場合には、その分割は、共有関係の成立の時に遡ってその効力を生ずる。
イ 共有関係は、当事者の合意によって生ずるほか、法律の規定によっても生ずる。
ウ 要役地が数人の共有に属する場合において、当該要役地のために地役権の設定の登記手続を求める訴えを提起するときは、共有者全員が原告とならなければならない。
エ 遺産である賃貸不動産から生じた相続開始から遺産分割協議の成立までの間の賃料債権は、遺産分割によって当該賃貸不動産を取得した者に帰属する。
オ 不動産の共有者間で持分の譲渡がされたものの、その譲渡について登記がされていない場合における当該不動産の共有物分割訴訟において、裁判所は、当該持分が譲受人である共有者に帰属するものとして、共有物分割を命ずることができる。
ア 共有物の分割について共有者間に協議が成立した場合には、その分割は、共有関係の成立の時に遡ってその効力を生ずる。
イ 共有関係は、当事者の合意によって生ずるほか、法律の規定によっても生ずる。
ウ 要役地が数人の共有に属する場合において、当該要役地のために地役権の設定の登記手続を求める訴えを提起するときは、共有者全員が原告とならなければならない。
エ 遺産である賃貸不動産から生じた相続開始から遺産分割協議の成立までの間の賃料債権は、遺産分割によって当該賃貸不動産を取得した者に帰属する。
オ 不動産の共有者間で持分の譲渡がされたものの、その譲渡について登記がされていない場合における当該不動産の共有物分割訴訟において、裁判所は、当該持分が譲受人である共有者に帰属するものとして、共有物分割を命ずることができる。
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この過去問の解説 (4件)
01
正しい記述の個数は「1個」です。
ア. 判例は、「遺産分割による共有関係の終了のように遡及効についての条文がいない以上、共有物分割の効力は遡及するものではない」としています。(大阪地裁平成4年4月24日判決)。
従って、本記述は誤りです。
イ. 法律の規定によっても、当然に、共有関係が生じます。
従って、本記述は正しいです。
ウ. 最高裁平成7年7月18日判決では「要役地が数人の共有に属する場合、各共有者は、単独で共有者全員にために共有物の保存行為として、要役地のために地役権設定登記を求める訴えを提起することができるというべきであって、右訴えは、固有必要的共同訴訟に当たらない」としています。
従って、本記述は誤りです。
エ. 最高裁平成17年9月8日判決「遺産は、相続人が数人ある時は、相続開始から遺産分割までの間は、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生じる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である」としています。
従って、本記述は誤りです。
オ. 最高裁昭和46年6月18日判例では「不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法177条にいう「第三者」に該当するから、右譲渡につき登記が存在しない時には、譲受人は、右持分の取得をもって他の共有者に対抗することができない。そして、共有物分割の訴は、共有者間全員の権利関係を画一的に創設する訴であるから、持分譲渡があっても、これをもって他の共有者に対抗できない時は、共有者全員に対する関係において、右持分がなお譲渡人に帰属するものとして共有物分割をなすべき」としています。
従って、本記述は誤りです。
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02
ア:間違い
共有物分割に遡及効はないため、その分割は当事者間で協議が成立した時点から効力を生じることになります。したがって本肢は間違いです。
イ:正しい
民法250条では、目的物の共有者が持っている持分の割合は、当事者間に別段の合意のない限り平等と推定されています。例えば相続が発生した場合、相続人が相続財産である不動産に対し有している持分は当事者間に別段の合意のない限り平等となります。このように、法律の規定によっても共有関係が生じることがあるので、本肢は正しいです。
ウ:間違い
要役地のために地役権設定の登記手続きを求める訴えの提起をすることは保存行為にあたります。
そのため判例(最判平7.7.18)では必ずしも共有者全員から地役権設定登記請求をする必要はないとしています。
よって、本肢は間違いです。
エ:間違い
判例(最判平17.9.8)では、相続開始から遺産分割協議終了までの賃料債権は遺産とは別個の財産として、各相続人が自身の相続分に応じて相続することとなり、当該賃貸不動産を取得した者に帰属するものではありません。
よって、本肢は間違いです。
オ:間違い
判例(最判昭46.6.18)では、不動産の共有者間で持分の譲渡がされたものの、その譲渡について登記がされていない場合における当該不動産の共有物分割訴訟において、裁判所は当該持分は「譲渡人」に帰属するものとして共有分割を命ずるべきであるとしています。
従って、本肢は間違いです。
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03
ア 誤り。
共有者はいつでも共有物の分割を請求することができますが(民法256条)、分割に遡及効はありません。よって、協議の成立後将来に向かってのみ効力を有します。なお、これに対して相続により取得した遺産の分割の場合は遡及効が認められるため(909条本文)、少なくとも当事者間では相続開始時に遡って分割の効力が生じます。
イ 正しい。
当事者の合意によって共有関係を発生させることが可能であるのは無論のこと、不動産の複数の相続人による相続等法律の規定によっても発生します。
ウ 誤り。
共有物の変更行為は全員の同意が、管理行為には共有者の共有持分の過半数による決定が必要ですが、保存行為については単独で行うことができます。そして、承役地への地役権設定登記請求は保存行為に当たるため、各共有者が単独で行うことができます。
エ 誤り。
相続により取得した共有財産が遺産分割協議によって分割された場合、分割の効力は相続の開始時に遡及します。一方で遺産から生じた果実については、各人が相続分に応じて単独分割債権として取得するというのが判例の立場です。89条2項の規定(「法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。」)に引きずられないようにしましょう。
オ 誤り。
共有者間で持分の移転がなされその移転につき未登記である場合、譲渡人・譲受人以外の共有者は177条の第三者に該当するため、譲受人が持分の取得を他の共有者に対抗するためには登記が必要となるというのが判例の立場です。よって、裁判所は当該持分が譲受人である共有者に帰属しないものとして分割を命ずることとなります。持分譲渡の当事者以外の共有者の権利保護へ配慮した判例といえるでしょう。
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04
ア 誤り
共有物分割に遡及効を認めるような規定は存在しません。
よって、共有物の分割について共有者間に協議が成立した場合には、その分割は、共有者間に協議が成立した時点から効力を生じることになります。
イ 正しい
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属します(民法898条)。
このように、共有関係は、当事者の合意によって生ずるほか、法律の規定によっても生じます。
ウ 誤り
要役地が数人の共有に属する場合において、当該要役地のために地役権の設定の登記手続を求める訴えを提起するときは、各共有者が単独ですることができます(最判平成7年7月18日)。
地役権の登記を受けることにより、その地役権を第三者に対抗できることになるため、地役権の設定の登記手続きを求める訴えは、共有者全員の利益となり、保存行為にあたるためです(民法252条但し書)。
エ 誤り
相続開始から遺産分割までの間の相続不動産から生ずる賃料債権の帰属について、最判平成17年9月8日は、「相続開始から遺産分割が確定するための間に相続不動産から生じた賃料債権は、その相続分に応じて分割単独債権として取得したものであり、これを前提に清算されるべきである」と判示しました。
その理由として、「遺産は、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであり、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものである」と判示しています。
オ 誤り
共有物分割訴訟と持分譲受の登記について、最判昭和46年6月18日は、「不動産の共有物分割訴訟においては、共有者間に持分の譲渡があっても、その登記が存しないため、譲受人が持分の取得をもって他の共有者に対抗することができないときは、共有者全員に対する関係において、右持分がなお譲渡人に帰属するものとして共有物分割を命ずべきである」と判示しています。
その理由として、「不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法177条にいう「第三者」に該当するから、右譲渡につき登記が存しないときには、譲受人は、右持分の取得をもつて他の共有者に対抗することができない」ということを挙げています。
以上から、正しい肢はイであり、1が正解となります。
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