司法書士の過去問
平成25年度
午前の部 問10

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問題

平成25年度 司法書士試験 午前の部 問10 (訂正依頼・報告はこちら)

AがB所有の甲土地の利用権として地上権又は賃借権を有する場合に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らしAの有する利用権が地上権である場合にのみ正しいこととなるものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
なお、当該利用権は、建物の所有を目的としないものとする。


ア  Bの承諾を得ずにAから当該利用権を譲り受け、甲土地を使用しているCがいるときは、Bは、Cに対し、甲土地の明渡しを請求することができる。

イ  Aは、当該利用権を目的とする抵当権を設定することができる。

ウ  Bは、Aに対し、甲土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。

エ  当該利用権の設定行為において存続期間を定めなかったときは、Bは、裁判所に対し、その存続期間を定めるよう請求することができる。

オ  当該利用権は、時効により取得することができる。
  • アウ
  • アエ
  • イエ
  • イオ
  • ウオ

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この過去問の解説 (4件)

01

正解は 3 です。

正しい選択肢はイとエなので、3が正解です。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 地上権者は、土地所有者の承諾なしに自由に地上権を譲渡できる一方、賃借人は、賃貸人の承諾がなければ、その賃借権を譲り渡し、又は、賃借物を転貸できません。従って、本選択肢は賃借権のみに該当します。

イ. 地上権には、抵当権を設定できる一方、賃借権には抵当権を設定できません。従って、本選択肢は地上権のみに当てはまります。

ウ. 地上権設定者は、特約がある場合を除き、土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負わないとされます。一方、賃貸人は、賃貸物の使用及び収益必要な修繕を負う義務を負います。従って、本選択肢は、賃借権のみについての記述です。

エ. 地上権設定者は、設定行為において、存続期間を定めなあった場合には、裁判所に、その存続期間を定めるように請求できるのに対して、賃借権設定者には、そのような請求はできません。従って、本選択肢は、地上権についてのみ当てはまります。

オ. 賃借権、地上権とも、時効により取得することができるので、本選択肢は、地上権と賃借権の双方に当てはまります。

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02

正解は3(イ、エ)です。

ア 賃借権の場合にのみ正しい。
地上権は物権であるため、地上権者の意思のみで処分を行うことが可能です。一方で、賃借権の場合、土地の転貸については賃貸人の承諾(612条・原則)または地主の承諾に変わる裁判所の許可(借地借家法19条、20条・特別法)を必要とし、これらを欠く場合賃貸人は転借人に明渡請求が可能であるほか、賃貸借契約の解除原因となります。

イ 地上権の場合にのみ正しい。
地上権は物権であり、369条2項においても抵当権の目的物たり得ることが明文にて規定されています。一方賃借権は債権であり、特別法にて抵当権設定の目的物たらしめる修正もなされていませんので、抵当権は設定できません。

ウ 賃借権にのみ正しい。
賃借権の場合、賃借人の修繕義務につき606条1項に明文で定められていますが、地上権には同旨の規定は存在せず、判例による修正もありません。よって修繕義務が認められるのは賃借権のみといえます。

エ 地上権の場合にのみ正しい。
利用権について期間の定めのない場合につき、地上権については、268条2項により当事者が存続期間を定めるべき旨の請求が可能であることを規定しています。一方賃借権についてはその旨の定めはなく、(1)借地契約については、期間の定めのない契約は存続期間30年となり、(2)借家契約については、期間の定めのない場合6ヶ月の猶予期間および正当事由(賃貸人からの請求の場合)による解約、が法定されています。

オ 地上権、賃借権の双方の場合とも正しい。
地上権は物権であるため時効取得の対象となります。また、賃借権についても、「他人の土地の継続的な用益という外形的事実が存在し,かつ,その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているとき」は民法163条に基づき時効取得するというのが判例です。判例の把握のほか、所有権以外の財産権も時効取得の対象となることの理解が正答を導き出すポイントといえましょう。

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03

正解 3

ア 賃借権である場合にのみ正しい
地上権は物権であるため、地上権者は当該地上権を自由に譲渡することができます。
一方で、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡すことはできず(民法612条1項)、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに第三者に賃借物の使用をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができ(同条2項)、賃借人に対し、賃借物の明渡しを請求することができます。

イ 地上権である場合にのみ正しい
地上権は、抵当権の目的とすることができます(民法369条2項)。
一方で、債権である賃借権について、抵当権の目的とすることができるとする規定は存在しません。

ウ 賃借権である場合にのみ正しい
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負います(民法606条1項)。一方で、地上権の設定者について、修繕義務に関する規定は存在しません。

エ 地上権である場合にのみ正しい
設定行為で、地上権の存続期間を定めなかった場合において、地上権者がその権利を放棄しないときは、裁判所は、当事者の請求により、20年以上50年以下の範囲内において、その存続期間を定めることができます(民法268条2項)。
一方で、借地権(建物所有を目的とする土地の賃借権)について、存続期間を定めなかった場合は自動的に30年となります。

オ 地上権である場合、賃借権である場合のいずれも正しい
地上権は物権であるため、時効により取得することができます。
一方で、土地の賃借権の時効取得が認められるかという点について、最判昭和43年10月8日は、「他人の土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときには、民法163条により、土地の賃借権を時効取得するものと解すべき」と判示しました。

以上から、Aの有する利用権が地上権である場合にのみ正しい肢はイとエであり、3が正解となります。

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04

正解は3.イとエになります。

賃借権は貸す側と借りる側の契約によって成り立つので、債権ですが、地上権は物権となります。
これが賃借権と地上権の大きな違いです。

ア:Bが甲土地の所有権者でないとCに甲土地の明け渡しを請求できません。
甲土地を借りているAはBの承諾なしにCに甲土地の転貸をすることはできません。したがってBがCに甲土地の明け渡しの請求が出来るという事は「賃借権」の場合であるという事が出来ます。

イ:甲土地に抵当権を設定できるのは、甲土地に対し、物権を有していなければなりません。
賃借権は他人の土地を借りているだけであって、土地に対して物権を有しているわけではありません。
従って、本肢のようにAが甲土地に抵当権を設定できるのは物権である地上権を有している場合であるという事になります。


ウ:民法601条によると、賃貸人は賃貸人に対し、目的物を使用収益させる義務があります。
また民法606条により、使用収益に支障が生じないよう目的物を修繕する義務を負う旨が規定されています。
従って本肢は賃借権の場合であるという事になります。

エ:民法268条第2項によると、地上権の設定行為で存続期間を定めなかった場合は、裁判所は当事者の請求により、20年以上50年以下の範囲内において(中略)存続期間を定める、とされてます。
従って本肢は地上権の場合であるという事になります。

オ:民法163条では、所有権以外の財産権に対して取得時効が成立することが規定されています。この所有権以外の財産権に地上権が含まれます。

また、最高裁判例昭和43年10月8日によると、
「土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、土地の賃借権を時効により取得することができる。」
とされています。

従って、本肢は賃借権、地上権の両方の権利に該当します。

以上から地上権である場合のみ正しいのはイとエになり、正解は3となります。

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