司法書士の過去問
平成25年度
午前の部 問8

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問題

平成25年度 司法書士試験 午前の部 問8 (訂正依頼・報告はこちら)

A所有のデジタルカメラ甲の取引に関する次の1から5までの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、どれか。
  • Aから甲を賃借していたCが死亡し、その相続人Bは、その相続によって甲の占有を取得した。この場合において、Bは、Cが甲に関し無権利者であったことについて善意無過失であるときは、甲を即時取得する。
  • Aは、甲をDに売却し、その現実の引渡しをした後、自己が未成年者であることを理由として当該売買契約を取り消したが、その後、Dは、甲をBに売却し、その現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Dが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であったとしても、甲を即時取得しない。
  • Aから甲の寄託を受けていたEは、甲をBに売却したが、その際、Bは、Eが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であった。この場合において、Bは、その後にEから甲の現実の引渡しを受けた際、Eが甲に関し無権利者であることについて悪意となっていたときは、甲を即時取得しない。
  • Aから甲を賃借していたFは、甲をBに売却し、その現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Aに対して甲の即時取得を主張するためには、Fが甲に関し無権利者であることについて自己が善意無過失であったことを証明しなければならない。
  • Gは、Aの代理権を有しないにもかかわらず、Aを代理して、甲をBに売却しその現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Gが無権代理人であることについて善意無過失であるときは、甲を即時取得する。

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この過去問の解説 (4件)

01

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

選択肢1. Aから甲を賃借していたCが死亡し、その相続人Bは、その相続によって甲の占有を取得した。この場合において、Bは、Cが甲に関し無権利者であったことについて善意無過失であるときは、甲を即時取得する。

民法192条は、「取引行為によって、平穏、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」と規定しています。相続によって動産を取得した場合には、本規定の適用はないので、甲が動産を取得するという本選択肢は誤りです。

選択肢2. Aは、甲をDに売却し、その現実の引渡しをした後、自己が未成年者であることを理由として当該売買契約を取り消したが、その後、Dは、甲をBに売却し、その現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Dが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であったとしても、甲を即時取得しない。

取り消された行為は、初めから無効であったものと見做されるから、Dは無権利者であり、Dから取引行為によって、善意無過失で動産の占有を取得したBは、甲の所有権を取得します。従って、Dが即時取得をすることができないとしている本選択肢は、誤りです。

選択肢3. Aから甲の寄託を受けていたEは、甲をBに売却したが、その際、Bは、Eが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であった。この場合において、Bは、その後にEから甲の現実の引渡しを受けた際、Eが甲に関し無権利者であることについて悪意となっていたときは、甲を即時取得しない。

民法192条にいう善意無過失という条件は、動産の占有を取得した時点において、満たしている必要があります。従って、引渡しの時点で悪意となっているEには即時取得は成立しないので、本選択肢は正しいです。

選択肢4. Aから甲を賃借していたFは、甲をBに売却し、その現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Aに対して甲の即時取得を主張するためには、Fが甲に関し無権利者であることについて自己が善意無過失であったことを証明しなければならない。

民法186条1項では「占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有を取得するものと推定する」と規定しています。従って、善意の主張・立証責任は、主張する者の相手側に転換され、相手側が、取得者の悪意を主張・立証する必要があります。従って、本選択肢は誤りです。

選択肢5. Gは、Aの代理権を有しないにもかかわらず、Aを代理して、甲をBに売却しその現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Gが無権代理人であることについて善意無過失であるときは、甲を即時取得する。

即時取得の趣旨は、取引における占有取得者の前主の占有に対する信頼を保護するものです。

従って、取引原因となる取引行為は有効なものである必要があります。

本選択肢は、無権代理行為によって取引がなされているために、取引は有効とはならず、

Bは、Gが無権代理人であることに善意・無過失であっても、動産甲を即時取得しません。従って、本選択肢は誤りです。

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02

即時取得の要件は(1)動産について、(2)処分権限がなく、占有する前所有者から、(3)有効な取引行為によって、(4)平穏・公然・善意・無過失にて占有を開始したこと、です。

選択肢1. Aから甲を賃借していたCが死亡し、その相続人Bは、その相続によって甲の占有を取得した。この場合において、Bは、Cが甲に関し無権利者であったことについて善意無過失であるときは、甲を即時取得する。

誤り。

相続は取引行為でないことから、(3)有効な取引行為による、との要件を満たしません。

選択肢2. Aは、甲をDに売却し、その現実の引渡しをした後、自己が未成年者であることを理由として当該売買契約を取り消したが、その後、Dは、甲をBに売却し、その現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Dが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であったとしても、甲を即時取得しない。

誤り。

未成年者を理由とする取消しによってDは処分権限を喪失したのですから、即時取得の成立する事例です。本件のごとき事例は、まさに公示制度の存在しない動産について即時取得が取引の安全のを保護したものといえるでしょう。

選択肢3. Aから甲の寄託を受けていたEは、甲をBに売却したが、その際、Bは、Eが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であった。この場合において、Bは、その後にEから甲の現実の引渡しを受けた際、Eが甲に関し無権利者であることについて悪意となっていたときは、甲を即時取得しない。

正しい。

売買契約の成立時点では占有が移転していないため、(4)占有を開始した、との要件を満たしません。また、Bが占有を開始した時点では(4)善意、の要件を満たしません。よって、即時取得は成立しないこととなります。

選択肢4. Aから甲を賃借していたFは、甲をBに売却し、その現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Aに対して甲の即時取得を主張するためには、Fが甲に関し無権利者であることについて自己が善意無過失であったことを証明しなければならない。

誤り。

平穏・公然・善意・無過失は推定されます。

選択肢5. Gは、Aの代理権を有しないにもかかわらず、Aを代理して、甲をBに売却しその現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Gが無権代理人であることについて善意無過失であるときは、甲を即時取得する。

誤り。

Gは無権代理人であることから、(3)有効な取引行為、であるとの要件を充足しません。よって即時取得が成立しません。

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03

正解は「Aから甲の寄託を受けていたEは、甲をBに売却したが、その際、Bは、Eが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であった。この場合において、Bは、その後にEから甲の現実の引渡しを受けた際、Eが甲に関し無権利者であることについて悪意となっていたときは、甲を即時取得しない。」です。

選択肢1. Aから甲を賃借していたCが死亡し、その相続人Bは、その相続によって甲の占有を取得した。この場合において、Bは、Cが甲に関し無権利者であったことについて善意無過失であるときは、甲を即時取得する。

間違い

民法第192条では即時取得の要件として「取引行為によって」動産を取得した時とされていますが、この「取引行為」は売買や譲渡、質権設定契約等を指しており、本肢のような相続による動産の取得の場合は即時取得は成立しません。

従って本肢は間違いです。

選択肢2. Aは、甲をDに売却し、その現実の引渡しをした後、自己が未成年者であることを理由として当該売買契約を取り消したが、その後、Dは、甲をBに売却し、その現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Dが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であったとしても、甲を即時取得しない。

間違い

民法第192条では「善意であり、かつ、過失がないときは即時にその動産について行使する権利を取得する。」とあります。

本肢のように売買契約で甲の現実の引き渡しを受けたBが、Dが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であった場合は即時取得が成立します。

従って本肢は間違いです。

選択肢3. Aから甲の寄託を受けていたEは、甲をBに売却したが、その際、Bは、Eが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であった。この場合において、Bは、その後にEから甲の現実の引渡しを受けた際、Eが甲に関し無権利者であることについて悪意となっていたときは、甲を即時取得しない。

正しい

即時取得の要件として「善意である」事が必要です。

動産の占有を開始した時点で「善意である」事が求められるので、甲の引き渡しの時点で悪意であるEは即時取得しません。

従って、本肢は正しいです。

選択肢4. Aから甲を賃借していたFは、甲をBに売却し、その現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Aに対して甲の即時取得を主張するためには、Fが甲に関し無権利者であることについて自己が善意無過失であったことを証明しなければならない。

間違い

即時取得が成立するためには「平穏にかつ公然と」動産の占有を始め「善意であり、かつ、過失がない」ことが必要です。

ただし、平穏、公然、善意、無過失は推定され自分自身で立証する必要はありません。

従って、本肢は間違いです。

選択肢5. Gは、Aの代理権を有しないにもかかわらず、Aを代理して、甲をBに売却しその現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Gが無権代理人であることについて善意無過失であるときは、甲を即時取得する。

間違い

即時取得が成立するためにはBとGの間の取引が有効でなければなりません。

しかし本肢の場合、GはAの無権代理人であるため、そもそもBとGの間の取引は無効な取引です。

そのため、Bが、Gが無権代理人であることについて善意無過失であったとしても甲を即時取得しません。

従って、本肢は間違いです。

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04

正解「Aから甲の寄託を受けていたEは、甲をBに売却したが、その際、Bは、Eが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であった。この場合において、Bは、その後にEから甲の現実の引渡しを受けた際、Eが甲に関し無権利者であることについて悪意となっていたときは、甲を即時取得しない。

選択肢1. Aから甲を賃借していたCが死亡し、その相続人Bは、その相続によって甲の占有を取得した。この場合において、Bは、Cが甲に関し無権利者であったことについて善意無過失であるときは、甲を即時取得する。

誤り

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得します(民法192条)。

ここでいう「取引行為」には、相続は含まれません。

選択肢2. Aは、甲をDに売却し、その現実の引渡しをした後、自己が未成年者であることを理由として当該売買契約を取り消したが、その後、Dは、甲をBに売却し、その現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Dが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であったとしても、甲を即時取得しない。

誤り

本肢では、売買契約が取り消されているため、Dは、甲につき無権利者となります。

そのため、売買契約(取引行為)によって、無権利者Dから甲を取得したBは、Dが甲に関し無権利者であることについて善意無過失ある場合には、甲を即時取得します。

選択肢3. Aから甲の寄託を受けていたEは、甲をBに売却したが、その際、Bは、Eが甲に関し無権利者であることについて善意無過失であった。この場合において、Bは、その後にEから甲の現実の引渡しを受けた際、Eが甲に関し無権利者であることについて悪意となっていたときは、甲を即時取得しない。

正しい

即時取得が成立するためには、動産の占有を開始した時点において、善意無過失であることが必要です(民法192条)。

よって、本肢のように、動産の引渡しの時点(動産の占有開始時)で悪意となっている場合には、即時取得は成立しません。

選択肢4. Aから甲を賃借していたFは、甲をBに売却し、その現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Aに対して甲の即時取得を主張するためには、Fが甲に関し無権利者であることについて自己が善意無過失であったことを証明しなければならない。

誤り

占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定されます(民法186条1項)。

よって、本肢の場合、B側で善意無過失を証明する必要はなく、Bが善意無過失でなかったことをAが証明する必要があります。

選択肢5. Gは、Aの代理権を有しないにもかかわらず、Aを代理して、甲をBに売却しその現実の引渡しをした。この場合において、Bは、Gが無権代理人であることについて善意無過失であるときは、甲を即時取得する。

誤り

民法192条にいう「取引行為」は有効であるものでなければなりません。これは、取引における占有取得者の前主の占有に対する信頼を保護する点に、即時取得を認める趣旨があるからです。

本肢の取引行為は、Gによる無権代理行為によってなされているため、有効な取引行為であるとはいえません。

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