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司法書士の過去問 平成25年度 午後の部 問38

問題

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弁論主義に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  所有権に基づく土地の明渡請求訴訟において、原告が被告に対して当該土地の使用を許した事実を原告自身が主張し、裁判所がこれを確定した場合には、被告が当該事実を自己の利益に援用しなかったときでも、裁判所は、当該事実を判決の基礎とすることができる。

イ  裁判所は、原告及び被告の間に仲裁の合意があることが証拠から認められる場合には、被告が当該合意の存在を主張していないときであっても、訴えを却下することができる。

ウ  裁判所は、売買代金請求訴訟において、被告が同時履行の抗弁権を基礎付ける客観的事実を主張し、この事実が証拠から認められる場合には、被告が当該抗弁権を行使する旨の意思を表明していないときであっても、同時履行の抗弁を判決の基礎とすることができる。

エ  裁判所は、債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟において、債務者である被告が原告である債権者の過失となるべき事実を主張し、この事実が証拠から認められる場合には、被告が過失相殺の主張をしていないときであっても、過失相殺の抗弁を判決の基礎とすることができる。

オ  土地の所有権の移転の登記手続請求訴訟において、当該土地につき、原告がAから原告の被相続人Bへの売却及びBから原告への相続があったことを主張し、被告がAからCへの売却があったことを主張した場合において、AからBへの売却の後、BからCへの死因贈与があったことが証拠から認められるときは、裁判所は、BからCへの死因贈与があったことを判決の基礎とすることができる。
   1 .
アウ
   2 .
アエ
   3 .
イウ
   4 .
イオ
   5 .
エオ
( 平成25年度 司法書士試験 午後の部 問38 )
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この過去問の解説 (3件)

13
正解は 2 です。

正しい選択肢はアとエなので、2が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 最高裁昭和41年9月8日判決では、同様の事案において「被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したという事実は、元来、控訴人の主張・立証すべき事案ではあるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の路益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきであると解するのが相当である」としています。従って、本選択肢は正解です。

イ. 仲裁合意には弁論主義が適用されるとされています。従って、本選択肢では、被告が仲裁合意を主張していなくても、仲裁合意に基づいて訴えを却下することができるとしているので、誤りです。

ウ. 同時履行の抗弁権は、弁論主義が適用されるため、被告が同時履行の抗弁権を主張していない場合には、当該抗弁権を判決の基礎とすることはできません。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 最高裁昭和43年12月24日判決は「民法418条による過失相殺は、債務者の主張がなくても、裁判所が職権ですることができるが、債権者に過失があった事実は、債務者において立証責任を負うものと解すべきである」としています。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 原告がAからBの被相続人を経由してBに対して所有権移転があったことを主張し、被告がAからCへの所有権移転があったことを主張している場合に、裁判所が、双方が主張していないBからCへの所有権移転があったことを主張することは、弁論主義に反して
いるのでできません。従って、本選択肢は誤りです。

付箋メモを残すことが出来ます。
6
正解は2(ア、エ)です。

弁論主義の内容は、主に
1.裁判所の、当事者により主張されない主要事実を判決の基礎とすることの禁止
2.当事者間に争いのない事実は当然に判決の基礎となる(自白)
3.証拠方法は、当事者が提出したものへ限定(職権証拠調べの禁止)
と理解されています。

ア 正しい。
 弁論主義の原則から、裁判所は当事者によって主張されてない主要事実を判決の基礎とすることができますが、当事者によって主張された事実であればいずれの当事者の利益にも用いることができます(主張共通の原則)。よって、本選択肢の如く不利益陳述も判決の基礎とすることができます。

イ 誤り。
 仲裁の合意の存在は権利抗弁事項であり、主張共通の原則の例外として当事者による援用が必要とされます。なお、仲裁合意の存在を妨訴抗弁事項(本案前の訴訟要件の欠缺を主張する抗弁)とするか権利抗弁事項(訴訟手続内にて相手方の主張を弾劾する抗弁)とするかには学説の争いがありますが、いずれにしろ当事者の援用なくして裁判所が斟酌することはできません。

ウ 誤り。
 選択肢イでの解説の通り、権利抗弁事項については主張共通の原則の例外として当事者による援用が必要となりますが、同時履行の抗弁権もこれに該当します(最判昭和27・11・27)。

エ 正しい。
 過失相殺の抗弁は、過失の事実が主張されている限りにおいて裁判所が職権で行うことができるというのが判例です(最判昭和43・12・24)。公平性の原則がその理由であるとして議論が展開されていますが、抗弁事項の例外を認めるものであることから学説の批判も存在します。

オ 誤り。
 弁論主義の原則から、裁判所は当事者の主張していない主要事実を判決の基礎とすることができませんが、ここでBからCへの死因贈与による所有権の移転は主要事実とされています。よって、当事者の主張なくして死因贈与の事実を認定することはできません。

2

正解は2。

ア:正

裁判所は、当事者の主張していない事実を判決の基礎としてはなりません(弁論主義の第1テーゼ)。これが主要事実について妥当することに争いはなく、所有権に基づく土地の明渡請求訴訟において、「原告が被告に対して当該土地の使用を許した事実」は被告による土地の占有が正当な権原に基づくことを基礎づける事実ですので、(被告が主張すべきである抗弁にあたる)主要事実にあたります。したがって、この事実を判決の基礎とするためには当事者からの主張が必要です。

もっとも、この原則は、裁判所を拘束するものであって、当事者相互の関係を規律したものではないため、ある事実がいずれかの当事者から主張されていれば、他方の当事者が自己の利益に援用しなくとも、裁判所はこの事実を判決の基礎とすることができます(主張共通の原則)。

設例では、原告が被告に対して当該土地の使用を許した事実を原告自身が主張しているのですから、裁判所は、当該事実を判決の基礎とすることができます。

よって、正しい記述です。

イ:誤

仲裁の合意の存在は、抗弁事項であり、これについては被告から主張があったときのみ裁判所は考慮します。したがって、被告が、仲裁合意の存在を主張していないときは、裁判所は訴えを却下することができません。

よって、誤った記述です。

ウ:誤

抗弁の中には、法律効果の発生・障害・消滅・阻止がもたらされるために、それを基礎づける主要事実の主張だけでは足りず、権利を行使するとの意思表示も必要とされるものがあります(権利抗弁)。同時履行の抗弁権は、権利抗弁の1つですので、権利者である被告による権利を行使するとの意思表示が必要とされます。

よって、誤った記述です。

エ:正

判例は、民法418条による過失相殺は、債権者の過失を基礎づける事実の主張がされている場合には、債務者の主張がなくても、裁判所が職権ですることができるとしています(最判昭和43年12月24日民集22巻13号3454頁)。民法418条による過失相殺は権利抗弁ではないのです。

よって、正しい記述です。

オ:誤

判例は、「被相続人の右財産所有が争われているときは同人が生前その財産の所有権を取得した事実」および「自己が被相続人の死亡により同人の遺産を相続した事実」を主張立証すれば足り、「その後被相続人の死亡時まで同人につき右財産の所有権喪失の原因となるような事実はなかったこと、及び被相続人の特段の処分行為により右財産が相続財産の範囲から逸出した事実」もなかつたことは「相続人による財産の承継取得を争う者において抗弁としてこれを主張立証すべきもの」としています。そして、「土地の死因贈与を受けたとの事実」は抗弁であるから、証拠から認められるとしても、当事者が主張していないにもかかわらず、裁判の基礎とすることは弁論主義に反するとしています(最判昭和55年2月7日民集34巻2号123頁)。

土地の所有権の移転の登記手続請求において、原告としては、自己に所有権が現在あることを主張立証する必要があります(請求原因の一部です)。A→B→原告という権利移転の経過を主張し、自己に所有権があることを基礎づけるのです。

これに対して、この権利の移転の過程のいずれかにおいて、各譲渡人に所有権を喪失する原因となる事実があれば、原告への所有権の移転は生じていないことになります。このような事実の主張は、(権利移転という法律効果のレベルではなく)権利移転の原因行為をしたという事実のレベルでは両立するため抗弁事実にあたり、被告が主張立証すべき事実です。

「BからCへの死因贈与があったこと」は、Bから原告への相続による所有権の取得という効果を阻害し、相続の原因事実である被相続人の死亡という事実と両立しますので、抗弁にあたり、主要事実にあたります。そのため、このような事実は、当事者からの主張がない限り、たとえ証拠から認定することができても裁判の基礎としてはなりません(弁論主義の第1テーゼ)。

よって、誤った記述です。

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