司法書士の過去問
平成25年度
午後の部 問64
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問題
平成25年度 司法書士試験 午後の部 問64 (訂正依頼・報告はこちら)
次の対話は、株式会社(委員会設置会社を除く。)の設立の登記の申請書に添付すべき書面のうち、出資の履行に関する書面(以下「出資履行書面」という。)に関する司法書士と補助者との間の対話である。司法書士の質問に対する次のアからオまでの補助者の解答のうち、適切でないものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
司法書士 : 払込取扱機関における預金口座に入金の記録のある預金通帳の写しを合てつした設立時代表取締役の作成に係る払込取扱金融機関に払い込まれた金銭を証明する書面(以下「合てつ書面」という。)は、発起設立と募集設立のいずれの場合でも、出資履行書面とすることができますか。
補助者 : ア 発起設立の場合には、合てつ書面を出資履行書面とすることができますが、募集設立の場合には、合てつ書面を出資履行書面とすることはできません。
司法書士 : それでは、合てつ書面における預金通帳の写しに記録されている預金口座への入金の日付が、定款の作成日後、その認証日より前のものである場合には、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができますか。
補助者 : イ 定款は公証人の認証を受けなければ効力が生じませんので、当該預金口座への入金の日付が定款の認証日より前のものである場合には、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができません。
司法書士 : 合てつ書面における預金通帳の写しに係る預金口座が設立時代表取締役名義のものであっても、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができますか。
補助者 : ウ 合てつ書面における預金通帳の写しに係る預金口座は、設立中の会社を代表する発起人の名義のものでなければならず、当該設立時代表取締役が発起人でない場合には、当該設立時代表取締役の名義の預金通帳の写しに係る当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができません。
司法書士 : 次に、払込金額が1,000万円とされている場合について考えてみましょう。合てつ書面における預金通帳の写しには、預金口座の現在残高としては1,000万円の記録があるものの、預金通帳の繰越しがされ、入金の記録を合算しても、900万円分しかないとします。このような場合には、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができますか。
補助者 : エ 合てつ書面における預金通帳の写しは、当該預金口座に1,000万円が払い込まれた事実が明らかとなるものでなければなりませんので、当該写しにおいて1,000万円に相当する金額の入金の記録の一部が欠落している場合には、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができません。
司法書士 : それでは、合てつ書面における預金通帳の写しには、払込金額である1,000万円に相当する金額の入金の記録はあるものの、設立の登記の申請の前日に100万円の出金記録があるため、当該預金口座の現在残高としては900万円の記録しかないとします。このような場合には、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができますか。
補助者 : オ 合てつ書面における預金通帳の写しは、払込金額である1,000万円に相当する金額の入金の記録があるものであれば、引き出しの記録があるために当該預金口座の残高としては1,000万円に満たない記録しかないものであっても、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができます。
司法書士 : 払込取扱機関における預金口座に入金の記録のある預金通帳の写しを合てつした設立時代表取締役の作成に係る払込取扱金融機関に払い込まれた金銭を証明する書面(以下「合てつ書面」という。)は、発起設立と募集設立のいずれの場合でも、出資履行書面とすることができますか。
補助者 : ア 発起設立の場合には、合てつ書面を出資履行書面とすることができますが、募集設立の場合には、合てつ書面を出資履行書面とすることはできません。
司法書士 : それでは、合てつ書面における預金通帳の写しに記録されている預金口座への入金の日付が、定款の作成日後、その認証日より前のものである場合には、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができますか。
補助者 : イ 定款は公証人の認証を受けなければ効力が生じませんので、当該預金口座への入金の日付が定款の認証日より前のものである場合には、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができません。
司法書士 : 合てつ書面における預金通帳の写しに係る預金口座が設立時代表取締役名義のものであっても、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができますか。
補助者 : ウ 合てつ書面における預金通帳の写しに係る預金口座は、設立中の会社を代表する発起人の名義のものでなければならず、当該設立時代表取締役が発起人でない場合には、当該設立時代表取締役の名義の預金通帳の写しに係る当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができません。
司法書士 : 次に、払込金額が1,000万円とされている場合について考えてみましょう。合てつ書面における預金通帳の写しには、預金口座の現在残高としては1,000万円の記録があるものの、預金通帳の繰越しがされ、入金の記録を合算しても、900万円分しかないとします。このような場合には、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができますか。
補助者 : エ 合てつ書面における預金通帳の写しは、当該預金口座に1,000万円が払い込まれた事実が明らかとなるものでなければなりませんので、当該写しにおいて1,000万円に相当する金額の入金の記録の一部が欠落している場合には、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができません。
司法書士 : それでは、合てつ書面における預金通帳の写しには、払込金額である1,000万円に相当する金額の入金の記録はあるものの、設立の登記の申請の前日に100万円の出金記録があるため、当該預金口座の現在残高としては900万円の記録しかないとします。このような場合には、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができますか。
補助者 : オ 合てつ書面における預金通帳の写しは、払込金額である1,000万円に相当する金額の入金の記録があるものであれば、引き出しの記録があるために当該預金口座の残高としては1,000万円に満たない記録しかないものであっても、当該合てつ書面は、出資履行書面とすることができます。
- アウ
- アエ
- イウ
- イオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
適切でない選択肢は、イとウなので、3が正解です。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 合てつ書面は、発起設立の場合には、出資の履行を証する書面として利用できますが、募集設立の場合には、利用できません。募集設立の場合には、払込金融機関の払込証明書が必要となります。従って、本選択肢は適切です。
イ. 預金口座への入金の日付が、公証人の認証の前であっても、定款の作成又は発起人全員の同意の後であれば、合てつ書面は、出資の履行書面として利用できます。従って、本選択肢は適切ではありません。
ウ. 出資の履行に当たって、払い込みを行うべき口座は、必ずしも、発起人の口座でなくてもよく、設立時代表取締役の口座でもよいとされています。従って、本選択肢は適切ではありません。
エ. 合てつ書面における預金通帳の写しに記載された履歴から、払込金額に相当する金銭が、当該口座に入金されていることが確認できる必要があります。よって、払込金額に相当する金銭の入金が確認できない場合には、当該合てつ書面は、出資の履行書面として取り扱うことはできません。従って、本選択肢は適切です。
オ. 合てつ書面で、払込金額に相当する金銭の入金が確認できれば、その後の引き出しによって、残高が
払込金額相当額に満たない場合でも、出資の履行書面とすることができます。従って、本選択肢は適切です。
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02
ア 発起設立の場合の出資履行書面としては、設立時代表取締役又は設立時代表執行役の作成に係る払込取扱機関に払い込まれた金額を証明する書面に払込取扱機関における預金口座に入金の記録のある預金通帳の写しを合てつしたもので足りますが,募集設立の場合は、払込み取扱機関による株式払込金の保管に関する証明書を添付しなければなりません(商登法47条2項5号)。したがって、本記述は適切です。
イ 出資の履行は定款の認証日以降が原則ですが、定款の作成後又は設立時発行株式に関する発起人全員の同意の後であれば、定款認証前であっても発起人は出資の履行をすることができます(昭和31.5.19民四103号回答)。したがって、本記述は適切ではありません。
ウ 出資履行書面は、通常は発起人の口座に振り込まれたことを証する書面ですが、設立時代表取締役(設立時代表執行役)の口座でも差し支えなく、この場合は、発起人の代表者が口座名義人に払込金受領の権限を授与する旨を委任した代理権限証書も添付することになります。したがって、本記述は適切ではありません。
エ 出資履行書面は、預金通帳の記載上、「入金」「振込入金」等の原因により口座に金員が払い込まれたことが明らかになるものである必要があり、口座に一定の残高があることを示す預金通帳(入金記録のないもの)だけでは出資履行書面とはなりません。したがって、本記述は適切です。
オ 募集設立の場合は、会社の成立後でなければ出資金の引出しができません。これに対し、発起設立の場合(合綴書面が添付書面となる場合)は、発起人は、会社成立前に金銭の払戻しを受けることができますので、払込金額相当の入金記録があるものであれば、出金記録があるものであっても、出資履行書面とすることができます。したがって、本記述は適切です。
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03
正解は3。
ア:適切である
株式会社の設立の登記の申請書には、出資の履行に関する書面として、発起設立の場合には、金銭の払込があったことを証する書面を、募集設立の場合には、金銭の保管に関する証明書を添付しなければなりません(商業登記法47条2項5号)。そして、「設立時代表取締役等の作成に係る払込取扱機関に払い込まれた金額を証明する書面に払込取扱機関における口座の預金通帳の写しを合てつしたもの」をもって、金銭の払込みがあったことを証する書面として取り扱って差し支えないとされています(平成18年3月31日民商782号通達)。
以上を整理すると、発起設立の場合には、合てつ書面を出資履行書面とすることができますが、募集設立の場合には、金銭の保管に関する証明書を添付を要するのです。
よって、適切な解答です。
イ:適切でない
出資の履行の時期は、定款の認証前であっても、定款の作成または発起人の同意の後であれば、差し支えないものとして扱われています(松井信憲『商業登記ハンドブック[第3版](商事法務、2015)』113頁)。したがって、当該預金口座への入金の日付が定款の認証日より前のものである場合でも、当該合てつ書面を、出資履行書面とすることができます。
よって、適切な解答ではありません。
ウ:適切でない
合てつ書面における預金通帳の写しに係る預金口座の名義は、原則として、発起人代表の名義となります。もっとも、設立時代表取締役の名義の預金通帳であっても、発起人代表が口座名義人に対し払込金の受領に係る権限を授与する旨を委任した代理権原証明書を添付した場合には、登記実務上、設立の登記は受理されます(松井信憲『商業登記ハンドブック[第3版](商事法務、2015)』111頁)。
よって、適切な解答ではありません。
エ:適切である
払込みがあったことを証する書面とするには、預金通帳の記載上、「入金」などの原因により口座に金員が払い込まれたことが明らかになるものである必要があり、どの取引記録が設立に際しての出資分であるかが示されていなければなりません。口座に一定の残高を有していることを示す預金通帳(入金記録のないもの)だけでは、足りないとされています(松井信憲『商業登記ハンドブック[第3版](商事法務、2015)』111-112頁)。
設例では、どの取引記録が設立に際しての出資分であることが明らかにされているとはいえませんし、入金記録があるともいえませんので、出資履行書面とすることはできません。
よって、適切な解答です。
オ:適切である
発起人が払込金を引き出して設立費用のために支出することも可能とされています(松井信憲『商業登記ハンドブック[第3版](商事法務、2015)』113頁)。したがって、設例の合てつ書面でも、1,000万円の入金の記録があれば、出資履行書面とすることができます。
よって、適切な解答です。
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