問題
なお、対話の事例における各行為は、商行為に当たらないものとする。
教授 : まず、AがB所有の甲建物を売却するための代理権をBから授与されているという事例を前提に考えてみましょう。AがBの代理人であることを示さずに、自らがBであると称して、Cとの間で甲建物の売買契約を締結した場合に、BC間に売買契約は成立しますか。
学生 : ア AはBの代理人であることを示していないので、たとえAがBのためにする意思を有していたとしても、BC間に売買契約は成立せず、AC間に売買契約が成立することになります。
教授 : では、同じ事例で、AがBのためにする意思を有していたものの、Bの代理人であることを示さずに、Cとの間で甲建物の売買契約を締結しその契約書の売主の署名欄にAの名前だけを書いた場合は、どうなりますか。
学生 : イ CにおいてAがBのために売買契約を締結することを知ることができたときは、BC間に売買契約が成立します。
教授 : では、同じ事例で、AがBの代理人であることを示して、Cとの間で甲建物の売買契約を締結したものの、Aが、当初から、Cから受け取った売買代金を着服するつもりであったときは、どうなりますか。
学生 : ウ 代理の要件に欠けるところはないので、たとえCがAの意図を知っていた場合であっても、BC問に売買契約が成立します。
教授 : 次に、事例を変えて、今度は、AがBから代理権を授与されていないにもかかわらず、Bの代理人として、Cとの間でB所有の甲建物の売買契約を締結した場合を前提に考えてみましょう。Cが、AがBから代理権を授与されていないことを知らず、また、知らないことについて過失はあったものの、それが重大な過失でなかった場合に、Cは、Aに対し、無権代理人の賛任を追及することができますか。
学生 : エ Cに過失があったとしても、それが重大な過失でなければ、Aに対して無権代理人の責任を追及することができます。
教授 : では、この場合に、Cは、甲建物の売買契約を取り消すことができますか。
学生 : オ Aの無権代理について善意であるCは、Bが無権代理の追認をしない間は、売買契約を取り消すことができます。