司法書士の過去問
平成26年度
午前の部 問24
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問題
平成26年度 司法書士試験 午前の部 問24 (訂正依頼・報告はこちら)
刑法における共犯に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aは、知人Bとの間で、飲食店の店長に暴行を加えて現金を強奪することを計画し、Aが凶器を準備し、Bが実行役となって強盗をすることについて合意した。ところが、Bは、一人で実行するのが不安になり、Aに相談しないまま、Cに協力を持ち掛け、BとCとが一緒になって強盗をすることについて合意した。犯行当日、Bは、Cと二人で飲食店に押し入り、店員に暴行を加えて現金20万円を奪い取った。この場合、Aには、Cとの間でも強盗罪の共謀共同正犯が成立する。
イ AとBは、Cに対しそれぞれ金属バットを用いて暴行を加えた。その際、Aは、Cを殺害するつもりはなかったが、Bは、Cを殺害するつもりで暴行を加えた。その結果、Cが死亡した場合、殺意がなかったAには、Bとの間で殺人罪の共同正犯が成立するが、傷害致死罪の刑の限度で処断される。
ウ AとBは、態度が気に入らないCを痛め付けようと考え、それぞれ素手でCの顔面や腹部を殴り続けていたが、Aは、途中で暴行をやめ、暴行を続けていたBに「俺はもう帰るから。」とだけ言い残してその場を離れた。Bは、その後もCを殴り続けたところ、間もなくCは死亡した。Cの死亡の原因がAの暴行によるものかBの暴行によるものか不明であった場合、Aには、Bとの間で傷害罪の共同正犯が成立し、傷害致死罪の共同正犯は成立しない。
エ 顧客から委託を受けて現金1,000万円を業務上占有していた銀行員Aは、業務とは無関係の知人Bと相談し、当該現金を横領しようと考え、Bに当該現金を手渡して横領し、その後、当該現金を二人で折半して費消した。この場合、Bには、業務上横領罪の共同正犯が成立し、刑法第65条第2項により単純横領罪の刑が科される。
オ Aは、Bから、「友人Cが、多数の者を相手にわいせつ動画を見せるので、わいせつ動画が録画されたDVDディスクを貸してほしい」と依頼され、わいせつ動画が録画されたDVDディスク1枚をBに貸与した。その結果、Bは、同ディスクをCに貸与し、Cがこれを上映して、多数の者にわいせつ動画を観覧させた。この場合、Aには、わいせつ図画公然陳列幇助罪は成立しない。
( 参考 )
刑法
第65条 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
2 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
ア Aは、知人Bとの間で、飲食店の店長に暴行を加えて現金を強奪することを計画し、Aが凶器を準備し、Bが実行役となって強盗をすることについて合意した。ところが、Bは、一人で実行するのが不安になり、Aに相談しないまま、Cに協力を持ち掛け、BとCとが一緒になって強盗をすることについて合意した。犯行当日、Bは、Cと二人で飲食店に押し入り、店員に暴行を加えて現金20万円を奪い取った。この場合、Aには、Cとの間でも強盗罪の共謀共同正犯が成立する。
イ AとBは、Cに対しそれぞれ金属バットを用いて暴行を加えた。その際、Aは、Cを殺害するつもりはなかったが、Bは、Cを殺害するつもりで暴行を加えた。その結果、Cが死亡した場合、殺意がなかったAには、Bとの間で殺人罪の共同正犯が成立するが、傷害致死罪の刑の限度で処断される。
ウ AとBは、態度が気に入らないCを痛め付けようと考え、それぞれ素手でCの顔面や腹部を殴り続けていたが、Aは、途中で暴行をやめ、暴行を続けていたBに「俺はもう帰るから。」とだけ言い残してその場を離れた。Bは、その後もCを殴り続けたところ、間もなくCは死亡した。Cの死亡の原因がAの暴行によるものかBの暴行によるものか不明であった場合、Aには、Bとの間で傷害罪の共同正犯が成立し、傷害致死罪の共同正犯は成立しない。
エ 顧客から委託を受けて現金1,000万円を業務上占有していた銀行員Aは、業務とは無関係の知人Bと相談し、当該現金を横領しようと考え、Bに当該現金を手渡して横領し、その後、当該現金を二人で折半して費消した。この場合、Bには、業務上横領罪の共同正犯が成立し、刑法第65条第2項により単純横領罪の刑が科される。
オ Aは、Bから、「友人Cが、多数の者を相手にわいせつ動画を見せるので、わいせつ動画が録画されたDVDディスクを貸してほしい」と依頼され、わいせつ動画が録画されたDVDディスク1枚をBに貸与した。その結果、Bは、同ディスクをCに貸与し、Cがこれを上映して、多数の者にわいせつ動画を観覧させた。この場合、Aには、わいせつ図画公然陳列幇助罪は成立しない。
( 参考 )
刑法
第65条 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
2 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
- アイ
- アエ
- イオ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢はアとエとなるので、2が正解になります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 大審院昭和13年10月28日判決では「同一犯罪事実について、数人が順次通謀してこれを遂行したという事案において、たとえその中の一員が他の者との通謀関係がなかったとしても、通謀者全員がその犯行の事実についてその責任を負う」としています。したがって、AとCの間にも強盗罪の共謀共同正犯が成立するので、本選択肢は正しいです。
イ. Aに殺意がなかったので、AとBの間には傷害致死罪の共謀共同正犯が成立します。従って、本選択肢は誤りです。
ウ. Cの死の結果が、Aの暴行によるのかBの暴行によるのか分からない場合でも、AとBの暴行によぅてcが死亡した場合には、AとBには、傷害致死罪の共謀共同正犯が成立します。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 刑法65条1項では「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。」と規定しているので、Bは、銀行業務と無関係であっても、業務上横領罪の共同正犯が成立します。但し、刑法65条2項で「 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する」とありますので、身分のないBには、単純横領罪の刑が科されるます。従って、本選択肢は正しいです。
オ. Bには、わいせつ図画公然陳列罪が成立するので、Bにわいせつ動画のDVDを貸与したAには、わいせつ図画公然陳列幇助罪が成立します。従って、本選択肢は誤りです。
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02
ア 共謀共同正犯とは、2人以上の者が犯罪の実行を共謀し、そのうちの一部の者だけが実行をした場合、実行をしなかった他の共謀者も共同正犯になる、というものです。判例(最大判昭和33.5.28 練馬事件)は、本記述のような順次共謀でも「全員が共同正犯となる」としています。したがって、本記述は正しいです。
イ 判例(最決平成17.7.4 シャクティ治療殺人事件)は、「共同正犯中、重い罪を犯した者には重い罪が成立し、軽い罪を犯した者との間で軽い罪の限度で共同正犯となる」としています。本記述の場合、殺意のなかったAについては殺人罪の共同正犯は成立せず、強盗致死罪が成立します。殺意のあったBについては殺人罪が成立し、強盗致死罪の限度でAとの間で共同正犯となります。したがって、本記述は誤りです。
ウ 判例(最判平成1.6.26)は、「実行に着手した後に共犯からの離脱が認められるためには、離脱する旨を告げて了承を得るだけではなく、他の共犯者が犯行を続けることがないようにする措置を講じて犯罪が遂行されるおそれを消滅させ、共犯関係を解消すること」を要求しています。そして同判例は、「『俺帰る。』と告げて立ち去っただけでは、共犯関係が消滅したとはいえず、Aについては、Bとともに傷害致死罪が成立する」としています。したがって、本記述は誤りです。
エ 判例(最判昭和32.11.19)は、「業務上の物の占有者でない者が業務上横領罪に加功したときは。業務上横領罪の共犯が成立するが、刑法65条2項により単純横領罪の刑が科せられる」としています。したがって、本記述は正しいです。
オ 判例(最判昭和44.7.17)は、「従犯を幇助した場合(間接従犯)は、従犯と同様に処罰される」としています。本記述の場合、Cによるわいせつ物の上映を間接的に幇助したAにもわいせつ図画公然陳列幇助罪が成立します。したがって、本記述は誤りです。
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03
ア 正しい
数人間の順次の共謀と共謀共同正犯の成否について、判例(最大判昭和33年5月28日)は、「同一の犯罪について、数人の間の順次共謀が行われた場合は、これらの者のすべての間に当該犯行の共謀が行われたものと解するを相当とし、数人の間に共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所に会し、その数人の間に一個の共謀の成立することを必要とするものではない。」としています。
イ 誤り
判例(最決昭和54年4月13日)は、「殺人罪と傷害致死罪とは、殺害の有無という主観的な面に差異があるたけで、その余の犯罪構成要件要素はいずれも同一であるから、暴行・傷害を共謀した被告人乙ら7名のうち甲が…Aに対し未必の故意をもって殺人罪を犯した本件ににおいて、殺意のなかった被告人乙ら6名については、殺人罪の共同正犯と傷害致死罪の共同正犯の構成要件が重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯が成立するものと解すべきである。」としています。
ウ 誤り
判例(最判平成元年6月26日)は、「甲が、乙と共謀のうえ、こもごも丙に暴行を加えたのち、現場から立ち去るに際し、乙において丙に対しなお暴行を加えるおそれが消滅していなかったのに、格別これを防止する措置を講じなかったときは、甲乙間の当初の共犯関係は、右の立ち去った時点で解消したものということはできない。」としています。
したがって、本肢の場合、Aには、Bとの間で傷害致死罪の共同正犯が成立します。
エ 正しい
身分的共犯の処罰について、判例(最判昭和32年11月19日)は、「村長、助役が収入役と共謀のうえ、収入役の保管にかかる新制中学校建設資金の寄付金を横領したときは、刑法65条1項により同法253条(業務上横領)に該当する共犯となるが、村長、助役は業務上物の占有者たる身分がないから、同法252条1項(単純横領)の刑を科すべきものである。」としています。
オ 誤り
判例(最判昭和44年7月17日)は、「被告人が、甲またはその得意先の者において不特定の多数人に観覧せしめるであろうことを知りながら、わいせつ映画フィルムを甲に貸与し、甲からその得意先である乙に右フィルムが貸与され、乙においてこれを映写し十数名の者に観覧させて公然陳列するに至った場合、被告人の所為については、正犯たる乙の犯行を間接に幇助したものとして、従犯が成立する。」としています。
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