司法書士の過去問
平成26年度
午前の部 問25
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問題
平成26年度 司法書士試験 午前の部 問25 (訂正依頼・報告はこちら)
刑法における罪数に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aは、不法に他人の住居に侵入し、そこに居住するB及びCの2名を殺害した。この場合、Aに成立する不法侵入罪とB及びCに対して成立する各殺人罪とがそれぞれ牽連犯の関係にあり、これらは、併合罪となる。
イ Aは、Bを殺害した後、Bの死体を山林に遺棄した。この場合、Aに成立する殺人罪と死体遺棄罪とは、併合罪となる。
ウ 私人であるAは、何の権限もないのに、私人であるBの名義の委任状を作成し、これを登記官に提出して行使し、B名義の不動産についての登記を申請した。この場合、Aに成立する私文書偽造罪と偽造私文書行使罪とは、観念的競合となる。
エ Aは、1回の焼却行為によりBが所有する物とCが所有する物を損壊した。この場合、Aに成立するBに対する器物損壊罪とCに対する器物損壊罪とは、観念的競合となる。
オ Aは、Bが所有する時計を窃取したものの、自分が欲しかった時計ではなかったことに気付き、ハンマーで叩いて粉々にした上で山中に投棄した。この場合、Aに成立する窃盗罪と器物損壊罪とは、牽連犯となる。
ア Aは、不法に他人の住居に侵入し、そこに居住するB及びCの2名を殺害した。この場合、Aに成立する不法侵入罪とB及びCに対して成立する各殺人罪とがそれぞれ牽連犯の関係にあり、これらは、併合罪となる。
イ Aは、Bを殺害した後、Bの死体を山林に遺棄した。この場合、Aに成立する殺人罪と死体遺棄罪とは、併合罪となる。
ウ 私人であるAは、何の権限もないのに、私人であるBの名義の委任状を作成し、これを登記官に提出して行使し、B名義の不動産についての登記を申請した。この場合、Aに成立する私文書偽造罪と偽造私文書行使罪とは、観念的競合となる。
エ Aは、1回の焼却行為によりBが所有する物とCが所有する物を損壊した。この場合、Aに成立するBに対する器物損壊罪とCに対する器物損壊罪とは、観念的競合となる。
オ Aは、Bが所有する時計を窃取したものの、自分が欲しかった時計ではなかったことに気付き、ハンマーで叩いて粉々にした上で山中に投棄した。この場合、Aに成立する窃盗罪と器物損壊罪とは、牽連犯となる。
- アイ
- アオ
- イエ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア 判例(最決昭和29.5.27)は、「1個の住居侵入行為と3個の殺人行為とがそれぞれ牽連犯の関係にある場合には、全体を科刑上一罪として(牽連犯として)、その最も重い刑に従って処断すべきである」としています。これをかすがい現象といいます。本記述の場合も、併合罪ではなく牽連犯となります。したがって、本記述は「併合罪となる」としている点で誤りです。
イ 判例(大判昭和9.2.2、大判明治43.11.1)は、「殺人罪と死体損壊(遺棄)罪は、併合罪(刑法45条)である」としています。したがって、本記述は正しいです。
ウ 私文書偽造罪(刑法159条)と同行使罪(刑法161条)は、目的手段の関係にあるため、牽連犯(刑法54条1項後段)となります。したがって、本記述は誤りです。
エ 1個の行為によって異なる所有者に属する物を損壊した場合、所有者の数だけ器物損壊罪が成立し、1個の行為によって行っているので観念的競合となります(刑法54条1項前段)。したがって、本記述は正しいです。
オ 窃盗罪(刑法235条)のような状態犯(既遂となった後も違法状態が継続する犯罪)が犯された場合において、事後になされた行為が犯罪を構成するように見えても、それがもとの構成要件で予定されているものであれば、不可罰的事後行為として、別罪を構成しません。例えば、窃盗罪の犯人が、窃取した物を損壊しても、器物損壊罪(刑法261条)は成立しません。盗品等の損壊は、窃盗罪等の構成要件で予定されている(評価し尽くされている)からです。したがって、本記述は誤りです。
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02
ア 誤り
判例(最決昭和29年5月27日)は、「一個の住居侵入行為と三個の殺人行為とがそれぞれ牽連犯の関係にある場合には、刑法54条1項後段(牽連犯)、10条を適用し一罪としてその最も重き刑に従い処断すべきものである。」としています。
イ 正しい
殺人罪との関係では、死体遺棄罪は併合罪であるとするのが判例です。
ウ 誤り
私文書偽造罪(刑法159条)と偽造私文書行使罪(刑法161条)とは、目的手段の関係にあるため、牽連犯(刑法54条1項後段)となります。
エ 正しい
観念的競合とは、1個の行為が2個以上の罪名に触れることをいいます。
本肢の場合、Aによる1回の焼却行為がBに対する器物損壊罪とCに対する器物損壊罪に触れるため、観念的競合となります。
オ 誤り
状態犯が、財物を窃取した後に損壊するような行為は、不可罰的事後行為として、別罪を構成しません。
本肢の場合、Aは窃盗犯(状態犯)であるため、Bが所有する時計を窃取した後に損壊したとしても、器物損壊罪(刑法261条)は成立しません。
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03
正しい選択肢はイとエになりますので、3が正解です。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 正しくは、Aに成立する不法侵入罪とB及びCに対して成立する各殺人罪とが全体として牽連犯の関係にあるところ、本選択肢は、Aに成立する不法侵入罪とB及びCに対して成立する各殺人罪とがそれぞれ牽連犯の関係にあり、これらは、併合罪となるとしているので、誤っています。
イ. 人を殺害した者が死体を山林に遺棄した場合には、殺人税と死体遺棄罪が成立し、両罪は併合罪となります。従って、本選択肢は正しいです。
ウ. 正しくは、Aに成立する私文書偽造罪と偽造私文書行使罪は牽連犯となりますが、本選択肢では、に成立する私文書偽造罪と偽造私文書行使罪は観念的競合になるとしているので、誤っています。
エ. 観念的競合とは、1個の行為が2個以上の罪名に触れることをいいます。Aが1回の焼却行為によりBが所有する物とCが所有する物を損壊した場合には、Aの1回の行為が、Bに対する器物損壊罪とCに対する器物損壊罪に触れるため、観念的競合となります。従って、本選択肢は正しいです。
オ. 窃盗犯による盗品の事後処分は、窃盗犯に含まれているために別罪を構成しません。しかし、本選択肢では、Aには、窃盗罪と器物損壊罪が成立し、両罪は牽連犯となるとしているため、誤りです。
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