司法書士の過去問
平成26年度
午後の部 問69
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問題
平成26年度 司法書士試験 午後の部 問69 (訂正依頼・報告はこちら)
株式会社(取締役会設置会社を除く。)の取締役又は代表取締役の変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 任期の満了による退任後もなお取締役としての権利義務を有する者を代表取締役に選定し、その後、当該代表取締役が死亡した場合には「死亡」を原因とする取締役及び代表取締役の退任の登記を申請しなければならない。
イ 種類株主総会によって選任された取締役を当該種類株主総会の決議によって解任した場合における変更の登記の申請書には、当該取締役を解任した種類株主総会の議事録のほか、当該取締役を選任した種類株主総会の議事録を添付しなければならない。
ウ 定款に「取締役が2名あるときは、取締役の互選によって代表取締役1名を置く。」旨の定めがあり、取締役A及びB並びに代表取締役Aが登記されている会社について、取締役Aが取締役を辞任した場合におけるBを代表取締役とする変更の登記の申請書には、定款を添付しなければならない。
エ 取締役が成年被後見人となった場合における当該取締役の退任の登記の申請書には、後見開始の審判書の謄本及びその確定証明書を添付し、又は後見に関する登記に係る登記事項証明書を添付しなければならない。
オ 取締役につき破産手続開始決定があった場合には、当該取締役について「資格喪失」を原因とする退任の登記を申請しなければならない。
ア 任期の満了による退任後もなお取締役としての権利義務を有する者を代表取締役に選定し、その後、当該代表取締役が死亡した場合には「死亡」を原因とする取締役及び代表取締役の退任の登記を申請しなければならない。
イ 種類株主総会によって選任された取締役を当該種類株主総会の決議によって解任した場合における変更の登記の申請書には、当該取締役を解任した種類株主総会の議事録のほか、当該取締役を選任した種類株主総会の議事録を添付しなければならない。
ウ 定款に「取締役が2名あるときは、取締役の互選によって代表取締役1名を置く。」旨の定めがあり、取締役A及びB並びに代表取締役Aが登記されている会社について、取締役Aが取締役を辞任した場合におけるBを代表取締役とする変更の登記の申請書には、定款を添付しなければならない。
エ 取締役が成年被後見人となった場合における当該取締役の退任の登記の申請書には、後見開始の審判書の謄本及びその確定証明書を添付し、又は後見に関する登記に係る登記事項証明書を添付しなければならない。
オ 取締役につき破産手続開始決定があった場合には、当該取締役について「資格喪失」を原因とする退任の登記を申請しなければならない。
- アウ
- アオ
- イエ
- イオ
- ウエ
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この過去問の解説 (3件)
01
誤っている選択肢はアとオなので、2が正解です。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 取締役の任期満了及び辞任により法律又は定款に定めた取締役の員数を欠くに至った場合には、退任又は辞任した取締役は、後任者が就任するまで、取締役の権利義務を有します(会社法346条1項参照)。そして先例は、かかる権利義務取締役が死亡した場合には、その地位を失い、退任の登記を申請すべきことになるが、この場合、任期満了又は辞任が退任事由であり、死亡が退任事由となるわけではない、と規定しています(昭和39年10月3日民甲3197参照)。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 先例は、種類株主総会によって選任された取締役を当該種類株主総会の決議によって解任した場合における変更の登記申請書には、当該取締役を解任した種類株主総会の議事録のほか、当該取締役を選任した種類株主総会の議事録を添付しなくてはならない、としています(平成14年12月27日民甲3239参照)。従って、本選択肢は正しいです。
ウ. 定款に「取締役が2名ある時は、取締役の互選により代表取締役1名を置く」という定めがある場合には、当該定めは「取締役が2名ある時は、代表取締役を互選によって定めるが、取締役が1名の場合には、その者が当然代表取締役になる」旨の趣旨と解することができるので、当該定めに従い、他の残存取締役が代表取締役となり、変更の登記を申請できると解されています。そして、この場合における変更登記の申請書には、定款の添付が必要です(登研646P.118参照)。従って、本選択肢は正しいです。
エ. 成年後見人は欠格事由にあたり、後見開始の審判の確定により退任することになります(会社法331条1項2号参照)。そして、取締役の退任登記の申請書には、退任を証する書面を添付しなくてはなりません(商業登記法54条4項参照)。この場合の退任を証する書面としては、後見開始の審判書謄本及びその確定証明書、又は、後見に関する登記に係る登記事項証明書等があげられます(昭和57年7月20日民甲4455参照)。従って、本選択肢は正しいです。
オ. 破産開始手続開始の決定は、会社法331条1項に定める欠格事由ではないことから、取締役につき破産開始手続き開始の決定があった場合には、当該取締役について「資格喪失」を原因とする退任の登記を申請することはできません。従って、本選択肢は誤りです。
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02
ア…誤りです。任期満了による退任後もなお取締役としての権利義務を有する者(権利義務取締役)も取締役ですので、代表取締役に選任することができます。この場合、権利義務取締役と、(権利義務代表取締役ではない)代表取締役を兼任することになります。権利義務取締役または権利義務代表取締役に関して退任の登記を行う際には、委任関係が終了した時を退任の原因と考え、本来の任期満了の日または辞任の日を原因日付として登記すべきとされますので、当該代表取締役が死亡した場合には、①「退任」を登記原因とし、本来の任期満了の日を原因日付とする取締役の退任の登記と、②「死亡」を登記原因とし、死亡の日を原因日付とする代表取締役の退任の登記をしなければなりません(昭39・10・3民甲3197号)。
イ…正しいです。種類株主総会の決議によって選任された取締役は、その解任の決議も、当該取締役の選任に係る種類株主総会でする必要があります(会社法347条1項)。したがって解任の決議を行った種類株主総会が、選任の決議を行ったことを証するために、当該取締役の選任の種類株主総会の議事録も添付します(商業登記法46条2項)。
ウ…正しいです。定款に「取締役が2名あるときは、取締役の互選によって代表取締役1名を置く。」という定めがある場合、代表取締役が取締役を辞任し、会社に残る取締役が1名になったときは、代表取締役の代表権が、会社に残る取締役に当然に帰属します。これは定款の定めがある場合のみ有効な解釈なので、登記原因を証する書面として、本問の取締役Bの代表取締役の選任の登記には、定款を添付しなければなりません(商業登記法61条1項)。
エ…正しいです。取締役の退任の登記には、これを証する書面を提供しなければなりません(商業登記法54条4項)。したがって後見開始の審判を受けたことで退任する場合(会社法607条1項7号)は、後見開始の審判書の謄本およびその確定証明書、もしくは後見に関する登記に係る登記事項証明書を添付する必要があるといえます。
オ…誤りです。取締役につき破産手続開始決定があった場合には、会社から取締役に対する委任が終了するため(民法653条2項)、改めて株主総会などで当該取締役について選任がされるなどの事情がない限り、当該取締役について退任の登記を申請すべきということになります。破産手続開始決定は、取締役の欠格事由には当たらないため(会社法331条1項)、「資格喪失」を登記原因とすることはできません。
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03
当該記述の場合の登記原因は死亡ではなく任期満了です。
イ正
記述の通りです。
ウ正
その通り。代表取締役を変更する際に当該定款を添付しなければなりません。
エ正
取締役の欠格事由に該当することにより退任する際には後見に関する登記に係る登記事項証明書の添付が必要です。
オ誤
登記原因は資格喪失ではなく退任です。
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