司法書士の過去問
平成26年度
午後の部 問68

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問題

平成26年度 司法書士試験 午後の部 問68 (訂正依頼・報告はこちら)

会社法上の公開会社でない株式会社における募集株式の発行による変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  株主に株式の割当てを受ける権利を与えないでする募集株式の発行の場合において、募集株式を発行する株式会社の代表取締役と、募集株式を引き受ける株式会社の代表取締役が同一人であるときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書に、募集株式を引き受ける株式会社において利益相反取引についての承認を受けたことを証する取締役会の議事録又は株主総会の議事録を添付しなければならない。

イ  株主に株式の割当てを受ける権利を与えてする募集株式の発行の場合において、取締役会設置会社が募集事項を取締役会の決議により決定したときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書に、取締役会の議事録に加え、定款を添付しなければならない。

ウ  株主に株式の割当てを受ける権利を与えないでする募集株式の発行の場合において、払込みの期日が、募集事項の決定をした株主総会の決議の日の10日後であったときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書に、期間の短縮についての総株主の同意を証する書面を添付しなければならない。

エ  株主に株式の割当てを受ける権利を与えてする募集株式の発行の場合において、募集株式の引受けの申込みの期日が、募集事項の決定をした株主総会の決議の日の10日後であったときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書に、期間の短縮についての総株主の同意を託する書面を添付しなければならない。

オ  出資の目的が株式会社に対する弁済期が到来している金銭債権であって、募集事項として定められた価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合には、募集株式の発行による変更の登記の申請書に、会計帳簿に記載された当該金銭債権の帳簿価額についての公認会計士又は監査法人による証明を記載した書面を添付しなければならない。
  • アイ
  • アウ
  • イエ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 3 です。

正しい選択肢はイとエなので、3が正解です。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 募集株式を発行する株式会社の代表取締役と、募集株式を引き受ける株式会社の代表取締役が同一人物であるときは、当該代表取締役が募集株式の申し込みをすることは、募集株式を引き受ける会社において利益相反行為に該当するため当該会社の株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)の承認を受けなければなりません。しかし、募集株式の発行による変更の登記申請書には、当該議事録の添付は不要です(会社法356条1項、265条1項、登研457P.121参照)。従って、本選択肢は誤りです。

イ. 公開会社でない株式会社において、株主に株式の割当を受ける権利を与えた募集株式の発行をする場合、募集事項の決定は、原則として、株主総会の決議によります。もっとも、定款に募集事項を取締役会の決議により定めることができる旨の定款の定めがある場合には、取締役会の決議によることができます。この場合、募集株式の発行による変更の登記申請書には、取締役会の議事録に加え、定款を添付しなくてはなりません(商業登記法46条2項、商業登記規則61条1項、会社法202条3号1号参照)。従って、本選択肢は正しいです。

ウ. 公開会社でない株式会社が株主に株式の割当を受ける権利を与えないでする募集株式の発行の場合において、募集事項等の決議の日と払込期日との間に少なくとも2週間なくとも、期間短縮についての総株主の同意を証する書面の添付を要せず、登記を申請することができます(会社法199条2項、201条3項、4項参照)。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 先例は、公開会社でない会社において、株主に株式の割当を受ける権利を与えた募集株式を発行する場合において、募集事項を決定した株主総会の決議の日と募集株式の引受け申し込み期日との間に2週間の期間がない時は、募集株式の発行の発行による変更の登記申請書には、当該期間短縮についての総株主の同意を証する書面を添付しなくてはならない、と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 出資の目的が株式会社に対する弁済期が到来している金銭債権であって、募集事項として定められた価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合には、募集株式に発行による変更の登記の申請書には、当該金銭債権について記載された書面(会計帳簿)を提供しなくてはならないが、これについて、公認会計士又は監査法人の証明は要求されていません(商業登記法56条3項ニ参照)。従って、本選択肢は誤りです。

参考になった数11

02

正解は3です。

ア…誤りです。株主に株式の割当てを受ける権利を与えないでする募集株式の発行の場合に、募集株式を発行する会社の代表取締役と、募集株式を引き受ける会社の代表取締役が同一人物である場合、当該募集株式の引受けは利益相反行為に当たりますので、募集株式を引き受ける会社では、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)において、当該取引について重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(会社法356条1項)。しかし、承認を受けたことを証する書面として、株主総会議事録または取締役会議事録を添付すべきと定められているわけではなく、株主全員の同意でも足りるとされています(最判昭49・9・26)。とはいえ実際には、登記上は書面審理主義から書類の添付が必要とされるので、本問の場合、株主全員の同意書または株主総会議事録が必要となると考えられます。

イ…正しいです。取締役会設置会社は、定款に定めのあるときに限り、募集事項を取締役会の決議で決定することができます(会社法202条3項2号)。したがって、募集株式の変更の登記の申請には、取締役会議事録とともに、定款を添付しなければなりません(商業登記規則61条1項)。

ウ…誤りです。株主に株式の割当てを受ける権利を与えないでする募集株式の発行の場合、非公開会社にあっては、株主への通知または公告なくして、当該募集株式の発行を決定することができます。したがって払込の期日に関する定めはありません。「公開会社」の場合は、取締役会の決議において募集要項を決定した場合、払込期日または払込期間の初日の2週間前までに株主に募集事項の通知を行わなければならず(会社法201条3項)、この期間を短縮するときは、総株主の同意が必要です(先例)。

エ…正しいです。株主に対してする募集株式の発行の場合、株式の引受けの申込期日の2週間前までに株主に対して募集事項の通知をしなくてはなりません(会社法202条4項)。募集事項の決定をした株主総会の期日から10日しかたたない期間を設定されているので、2週間より前に通知をしていないことは明らかです。しかしこの場合、総株主全員の同意があれば、期間を短縮してもよいと認められています(先例)。

オ…誤りです。出資の目的が株式会社に対する弁済期が到来している金銭債権であって、募集事項として定められた価額が、当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合には、検査役の調査は不要です(会社法207条9項5号)。この場合、当該金銭債権について記載された会計帳簿を添付しなければなりません(商業登記法56条3号ニ)。しかし、当該会計帳簿について公認会計士または監査法人による証明書を添付するべきとした規定はありません。

参考になった数3

03

ア誤
募集株式の発行の際にする変更登記に記述の議事録の添付は必要ありません。

イ正
その通り。記述の場合に取締役議事録に加えて定款添付が必要です。

ウ誤
期間の短縮についての総株主の同意を証する書面の添付は不要です。

エ正
記述の場合に期間の短縮についての総株主の同意を証する情報の添付が必要です。

オ誤
商業登記法56条。公認会計士又は監査法人による証明を記載した書面の添付は不要です。

参考になった数3