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司法書士の過去問 平成28年度 午前の部 問1

問題

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取材の自由に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  報道機関による事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法第21条の保障のもとにあり、また、このような報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法第21条の精神に照らし、十分尊重に値する。

イ  報道機関の国政に関する取材行為は、取材の手段・方法が一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合はもちろん、その手段・方法が一般の刑罰法令に触れないものであっても、取材対象者である国家公務員の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びる。

ウ  憲法が裁判の対審及び判決を公開法廷で行うことを規定しているのは、手続を一般に公開してその審判が公正に行われることを保障する趣旨にほかならず、公判廷の状況を一般に報道するための取材活動として行われる写真撮影は、その後に行われる報道を通じて審判の公正の担保に資する点で正にこの趣旨に合致するものであるから、取材のための公判廷における写真撮影の許可を裁判所の裁量に委ねることは、許されない。

エ  国家の基本的要請である公正な刑事裁判を実現するためには、適正迅速な捜査が不可欠の前提であるが、取材により得られたビデオテープを証拠として押収することについては、付審判請求事件を審理する裁判所の提出命令に基づき提出させる場合よりも、裁判官が発付した令状に基づき検察事務官が差し押さえる場合の方が、取材の自由に対する制約の許否に関して、より慎重な審査を必要とする。

オ  報道関係者の取材源の秘密は、民事訴訟法第197条第1項第3号の「職業の秘密」に当たるが、取材源の秘密が保護に値する秘密であるかどうかは、秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量により決せられる。


(参考)
憲法
第21条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
民事訴訟法
第197条  次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。

一・二  (略)
三  技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合
2 (略)
   1 .
アエ
   2 .
アオ
   3 .
イウ
   4 .
イオ
   5 .
ウエ
( 平成28年度 司法書士試験 午前の部 問1 )
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この過去問の解説 (3件)

12
正解は 5 です。

誤っている選択肢は、ウとエなので、5が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 判例は、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障の下にあることは言うまでもない。また、このような報道機関の報道が正しい内容を持つためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分に尊重に値するものと言わなければならない、としています(最高裁昭和44年11月26日判決参照)。従って、本選択肢は正しいです。

イ. 判例は、取材の手段、方法が贈賄、脅迫、強要等の一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合はもちろん、その手段・方法が一般の刑罰法規に触れない場合であっても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らして社会観念上是認できない態様のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を逸脱し、違法性を帯びるものと言わなければならない、としています(最高裁昭和53年5月31日判決)。従って、本選択肢は正しいです。

ウ. 判例は、憲法が裁判の対審及び判決を公開法廷で行うことを規定しているのは、手続きを一般に公開してその審判が公正に行われることを保障する趣旨に他ならないとしつつ、公判廷における写真の撮影等は、その行われる時、場所等のいかんによっては、前記のような好ましくない結果を生じる恐れがあるので、刑事訴訟規則215条は、写真撮影の許可等を裁判所の裁量にゆだね、その許可に従わない限り、これらの行為をすることができないことを明らかにしたのであって、右規則は憲法に違反するものではない、としています(最高裁昭和33年2月17日決定)。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 判例は、付審判請求事件を審理する裁判所の提出命令に関する事案と、検察官の請求によって発付された裁判官の差押許可状によって検察事務官が行った差押処分に関する事案は、報道の自由ないし取材の自由に対する制約の拒否に関しては、本質的に差がない、としています(最高裁平成元年1月30日決定参照)。従って、本選択肢は誤りです。

オ. 判例は、報道関係者の取材源は、一般に、それがみだりに開示されると、報道関係者と取材源となる者の間の信頼関係が損なわれ、将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり、報道機関の業務に深刻な影響を与え、以後、その遂行が困難になるものと解されるので、取材源の秘密は職業上の秘密に当たるというべきであり、保護に値する秘密であるかどうかは、秘密の公表により生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の構成との比較考量により決せられるというべきである、としています(最高裁平成18年10月3日決定参照)。従って、本選択肢は正しいです。

付箋メモを残すことが出来ます。
6
正解は5です。

ア…正しいです。米原子力空母の寄港に反対した学生が博多駅で警察官と衝突した件に基づく付審判請求事件の審理にあたって、NHKテレビ局の撮影したテレビフィルムの提出を求められたことで、テレビ局側が報道の自由と取材の自由の侵害を主張した事件について、判例は、「事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあり、…また、このような報道機関の報道が正しい内容を持つためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する」とし、報道の自由と取材の自由を認めています(最決昭44・11・26、博多駅事件)。なお、取材制限の可否は比較衡量により判断されるべきであるともされ、本件においては、報道機関の被る不利益は将来の取材の自由が妨げられるおそれがあるという程度であり、忍受される程度の性質のものであるとして、当該テレビフィルムの提出を求めています。

イ…正しいです。沖縄日米交渉に関する外務省の電文3通の写しをもって衆議院議員が政府に質問を行ったことで、情報の出所である毎日新聞社記者と外務省の事務官が秘密漏洩罪に問われた事件において、取材の正当性と違法性について、判例は、「報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害する権利を有するものではなく、取材の手段・方法が贈賄、脅迫、強要等の一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合は勿論、その手段・方法が一般の刑罰法令に触れない者であっても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らし社会観念上認容することのできない態様のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びる」としています(最決昭53・5・31、沖縄密約電文漏洩事件)。

ウ…誤りです。新聞記者が傍聴席から強盗事件の被告人に対し、裁判長の指示と制止に反して被告人の写真を撮影した事件において、写真撮影に許可を要するとした刑事訴訟規則215条は合憲であるかについて、判例は、「公開法廷とする理由は、手続を一般に公開してその審判が公正に行われることを保障する趣旨にほかならず、たとえ取材活動であってもその活動が公法廷における秩序を乱し被告人その他訴訟関係人の正当な利益を不当に害するがごときものは許されないのであり、公判廷における写真撮影はその行われる時、場所等のいかんによっては好ましくない結果を生じる恐れがあり、刑事訴訟規則215条は写真撮影の許可等を裁判所に委ね、その許可に従わない限りこれらの行為をすることができないことを明らかにしたのであって、合憲である」としました(最決昭33・2・17、「北海タイムス」事件)。よって報道のための写真撮影といえども、公共の福祉のためには裁判所の裁量で制限されるので、誤りです。

エ…誤りです。贈賄被疑事件についての報道内容が記録されたビデオテープにつき、検察官が差押え請求をしたことが、いわゆる博多駅事件における、公正な刑事裁判の実現の必要性と報道の自由に対する弊害との比較衡量を誤って、過度な報道制限を行ったのではないかについて、判例は、「〔博多駅事件における〕決定は、付審判請求事件を審理する裁判所の提出命令に関する事案であるのに対し、本件は、検察官の請求によって発付された裁判官の差押許可状に基づき検察事務官が行った差押処分に関する事案であるが、国家の基本的要請である公正な刑事裁判を実現するためには、適正迅速な捜査が不可欠の前提であり、報道の自由ないし取材の自由に対する制約の許否に関しては両者の間に本質的な差異がない」としました(最決平元・1・30、日本テレビ事件)。しかし、本判決には裁判官により、報道の自由への弊害は個々の事例を超えたところで生ずる可能性があり、博多駅事件の判断基準の運用は慎重にした方がよいとの意見が付されています。

オ…正しいです。判例は、「取材源の秘密は、それが公表されると報道機関の業務に深刻な影響を与え、以後その遂行が困難になるという意味で、職業上の秘密に当たるというべき」とし、取材源について、民事訴訟法197条の適用による証言拒否を認める一方、「ある秘密が職業の秘密に当たる場合でも、そのことから直ちに証言拒絶が認められるものではなく、そのうちの保護に値する秘密にのみ証言拒否を認めるべきである。そして保護に値する秘密であるかどうかは、秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見および裁判の公正との比較衡量により決せられるとすべきである」としています。(最決平18・10・3)。

4
ア正
事実の報道の自由は憲法21条の保障のもとにありますが取材の自由は尊重に値するとされています。

イ正
社会観念上是認することのできない態様の取材行為は違法性を帯びます。

ウ誤
写真撮影の許可を裁判所の裁量に委ねることは憲法違反ではありません。

エ誤
そのような判示はありません。

オ正
その通り。比較衡量によって判断されます。

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