司法書士の過去問
平成28年度
午前の部 問22
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問題
平成28年度 司法書士試験 午前の部 問22 (訂正依頼・報告はこちら)
Aを被相続人とする相続と登記に関する次の1から5までの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、どれか。なお、いずれの事例においても、Aが死亡した当時、Aには、亡妻との間の子であるB及びCがいたが、他に親族はいなかったものとする。
- Aは、その所有する甲土地をBに相続させる旨の遺言をした。Aが死亡した後、Cの債権者であるDは、甲土地につきB及びCが各2分の1の持分を有する旨の相続登記をした上でCの持分を差し押さえた。この場合に、Bは、Dに対し、登記なくして甲土地全部の所有権の取得を対抗することができない。
- Aが死亡した後、B及びCは、遺産分割協議において、BがAの遺産である甲土地の所有権を取得することに合意した。その後、Cは、Dに対し、甲土地の2分の1の持分を売却し、その旨の所有権の移転の登記をした。この場合に、Bは、Dに対し、登記なくして甲土地全部の所有権の取得を対抗することができる。
- Aが死亡した後、Cが相続の放棄をした。Cの債権者であるDは、Aの遺産である甲土地につきB及びCが各2分の1の持分を有する旨の相続登記をした上でCの持分を差し押さえた。この場合に、Bは、Dに対し、登記なくして甲土地全部の所有権の取得を対抗することができない。
- Aは、Bに対してA所有の甲土地を贈与したが、その旨の所有権の移転の登記がされないまま、Cに対して甲土地を遺贈する旨の遺言をし、その後に死亡した。この場合に、Bは、Cに対し、登記なくして甲土地全部の所有権の取得を対抗することができない。
- Aが死亡した後、Cは、Bに無断で、Aの遺産である甲土地につきCが単独で相続した旨の登記をし、甲土地をDに売却してその旨の所有権の移転の登記をした。この場合に、Bは、Dに対し、登記なくして甲土地の2分の1の持分の取得を対抗することができない。
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢は4なので、4が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
1. 判例は、特定の遺産を特定の相続人に相続させる相続させる趣旨の遺言は、何らの行為を要せずに、被相続人の死亡の時に、直ちに、当該遺産が当該相続人に相続により承継される。このように相続させる趣旨の遺言による権利移転は、法定相続分又は指定相続分の相続の場合と本質的に異なることはない。そして、法定相続分又は指定相続分による不動産の権利の取得については、登記なくして第三者に対抗できる、としています。(最高裁平成14年6月10日判決)。従って、本選択肢は誤りです。
2. 判例は、遺産の分割は、相続開始の時に遡ってその効力を生じるものではあるが、第三者に関する関係においては、相続人が相続によりいったん取得した権利につき分割時に新たな変更を生じるものと実質的に異ならないものであるから、不動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については、民法177条の適用があり、分割により相続分とは異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産について権利を取得した第三者に対して、自己の権利の取得を対抗することができないものと解するのが相当である、としています。(最高裁昭和46年1月26日判決)。従って、本選択肢は誤りです。
3. 判例は、(相続放棄によって)相続人は相続開始時に遡って相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり、この効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生じるべきと解すべきである、としています。(最高裁昭和42年1月20日判決)。従って、本選択肢は誤りです。
4. 判例は、被相続人が、生前、その所有に係る不動産を推定相続人の一人に贈与したが、その登記未了のの間に、他の推定相続人に右不動産の特定遺贈をし、その後相続の開始があった場合、右贈与及び遺贈に係る物権変動の優劣は、対抗要件たる登記の具備の有無をもって決すると解するのが相当であり、この場合、受贈者及び受遺者が、相続人として、被相続人の権利義務を包括的に承継し、受贈者が受贈の履行義務を、受遺者が贈与契約上の履行義務を承継することがあっても、このことは右の理を左右するに足りない、としています。(最高裁昭和46年11月16日)。従って、本記述は正しいです。
5. 判例は、共同相続人甲と乙がおり、相続財産に関する不動産につき、乙が勝手に単独所有権移転の登記をし、当該不動産について、乙から丙が単独の所有権移転を受けた事案において、甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるべきであると解すべきである、としています。(最高裁昭和38年2月22日判決)。従って、本選択肢は誤りです。
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02
ア. 「相続させる」旨の遺言をした場合ですので、Bのみが相続人になります。つまり、Cは無権利者ですのでCの債権者であるDが差押をしてもBとDは対抗関係にはならず、BはDに対し所有権の取得を対抗できます。
イ. 遺産分割の「後」にDが2分の1を取得していますのでBとDは対抗関係になります。未登記のBは全部の所有権をDに対抗することはできません。
ウ. 相続放棄の効果は絶対的であり、DがCの持分を差押えたとしてもDは無権利者です。
よってBはDに登記なくして所有権を対抗できます。
エ. 判例は生前贈与と遺贈の関係を対抗関係としています。つまり先に登記を備えたほうが勝ちです。
未登記のBはCに対して対抗できません。
オ. Cの相続分を超える2分の1に関してはCは無権利者であり、それを取得したDも無権利者です。
したがって、BはDに対して自己の持分である2分の1を登記なくして対抗できます。
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03
1.…誤りです。遺言により特定遺贈が行われた場合、被相続人の死亡後ただちに相続人に物権的に移転します。相続人による相続分の取得は、法定相続分であるか指定相続分であるかにかかわらず、登記なくして第三者に対抗できますので、本問でAの死亡時に、Bの指定相続分である甲土地の所有権はBに移転しています。よってその後のC持分に関する所有権移転の登記および差押えは無効です。したがってBはDに甲土地全部の所有権を対抗できます。
2.…誤りです。遺産分割により権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、遺産分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相続分をこえる権利の取得を対抗することができません(最判昭46・1・26)。遺産分割は相続開始の時にさかのぼって効果を生じますが、遺産分割後に権利を取得した第三者は、相続人が相続時に取得した権利につき、新たな変更を生じさせるのと変わらないためです。
3.…誤りです。相続放棄については、相続開始後の限られた期間しか行えないことから(915条)、遺産分割の場合と異なり遡及効が認められます。したがって、相続放棄をした人物(本問のC)が初めから相続分がなかったものとされる事実は確定したものであり、その後にCの持分についてなされた所有権の登記、ならびに、Cの持分の差押えは無効です(最判昭42・1・20)。よって本問のBは自身の単独所有を主張でき、第三者Dに甲土地全部の所有権を対抗できます。
4.…正しいです。被相続人が、生前、同一の不動産をある相続人に贈与し、他の相続人にも遺贈する旨の遺言を行い、その後に相続が発生した場合において、これら贈与と遺贈の優劣は、二重譲渡と同様に考え、対抗要件である登記によって決せられると解すべきとされました(最判昭46・11・16)。
5.…誤りです。本問のCは、B持分に関して無権利者となります。よってDの登記も公信力がないので、共同相続人Bは自己の持分に関して登記なくして対抗できます(最判昭38・2・22)。また、同判例ではC持分に対して、Dの権利は当然に認められるため、登記手続き上も、B持分のみについて所有権更正登記をすること認めています。
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