司法書士の過去問
平成30年度
午前の部 問17

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問題

平成30年度 司法書士試験 午前の部 問17 (訂正依頼・報告はこちら)

弁済に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  金銭債権について、外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。

イ  法律行為の当事者が第三者の弁済を禁止する意思を表示したときは、弁済について利害関係を有する第三者であっても、弁済をすることができない。

ウ  債権の目的が特定物の引渡しである場合において、別段の意思表示がないときは、弁済をする者は、債権発生の時の現状でその物を引き渡さなければならない。

エ  弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは、引渡しをすべき時にその物が存在する場所において、しなければならない。

オ  弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は債務者の負担となるが、債権者の行為によって弁済の費用が増加したときは、その増加額は債権者の負担となる。
  • アウ
  • アオ
  • イエ
  • イオ
  • ウエ

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この過去問の解説 (3件)

01

誤っている肢はウとエで【正解は5】です。

ア ○ 外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができます(民法403条)。

イ ○ 債務の弁済は、第三者もすることができます(改正民法474条1項)。この規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しません(改正民法474条4項)。

ウ × 債権の目的が特定物の引渡しである場合において、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければなりません(改正民法483条)。

エ × 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければなりません(改正民法484条1項)。

オ ○ 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とします。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とします(民法485条)。

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02

正解は5です。特定物と不特定物の区別は、法律などの規定ではなく、当事者の主観によって決まります。

ア…正しいです。金銭債権は、外国の通貨で債権額を指定したときは、履行地における為替相場により、日本における通貨で弁済をすることができます(403条)。

イ…正しいです。債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、または法律行為の当事者が第三者の弁済を禁止する意思を示したときは、第三者は弁済ができません(474条4項)。これは、同条の例外を許しません。

ウ…誤りです。特定物の引渡しにおいて、契約その他の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないとき、弁済をする者は「その引渡しをすべき時の現状で」その物を引き渡さなければいけません(483条)。

エ…誤りです。特定物の引渡場所は、別段の意思表示のない場合、「債権発生の時にその物が存在した場所」になります(484条1項)。

オ…正しいです。弁済の費用は別段の意思表示がないときは、債務者の負担となります。しかし、債権者の引っ越しなどにより弁済の費用が増加したときは、増加分は債権者の負担となります(485条)。

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03

正解:5

ア:正
民法403条は、「外国通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済することができる」と規定しています。
よって、正しい記述です。

イ:正
民法474条1項は、「債務の弁済は、第三者もすることができる」と規定して、第三者も原則として弁済を有効にすることができるとしています。
しかし、この規定は、「当事者が第三者の弁済を禁止」する旨の意思表示をしたときは、適用されません(第474条4項)。法律行為の当事者が第三者の弁済を禁止する意思を表示したときは、弁済について法律関係を有する第三者であっても、弁済をすることはできません。
よって、正しい記述です。

なお、弁済に関しては、平成29年民法改正により条文の文言、構造の整理がされています。

ウ:誤
別段の意思表示がないときは、弁済をする者は「その引渡しをすべき時の現状で」その物を引き渡さなければならないのであって(民法483条)、債権発生時の現状ではありません。
よって、誤った記述です。

なお、平成29年改正後の民法483条は、「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは」として、このような場合の補充規定である趣旨を明らかにしています。

エ:誤
民法484条1項前段は、「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは、債権発生の時にその物が存在した場所において」しなければならないと定めています。したがって、特定物の引渡しは、「債権の発生時にその物が存在した場所」でしなければならないのが原則であり、「引渡しをすべき時にその物が存在する場所」においてではないので、誤りです。
よって、誤った記述です。

オ:正
民法485条「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする」と定めています。
よって、正しい記述です。

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