司法書士の過去問
平成30年度
午前の部 問19
このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。
問題
平成30年度 司法書士試験 午前の部 問19 (訂正依頼・報告はこちら)
委任契約又は請負契約に関する次のアからオまでの記述のうち、「この契約」が委任契約である場合にのみ正しいこととなるものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア この契約は、各当事者がいつでもその解除をすることができるが、相手方にとって不利な時期に解除をするには、やむを得ない事由が必要である。
イ この契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
ウ この契約は、有償契約のものも、無償契約のものもある。
エ この契約の当事者の一方による解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
オ この契約は、当事者のいずれかが後見開始の審判を受けた場合には、終了する。
ア この契約は、各当事者がいつでもその解除をすることができるが、相手方にとって不利な時期に解除をするには、やむを得ない事由が必要である。
イ この契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
ウ この契約は、有償契約のものも、無償契約のものもある。
エ この契約の当事者の一方による解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
オ この契約は、当事者のいずれかが後見開始の審判を受けた場合には、終了する。
- アイ
- アエ
- イオ
- ウエ
- ウオ
正解!素晴らしいです
残念...
この過去問の解説 (3件)
01
ア 委任×請負× 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができます(改正民法651条1項)。この規定により委任の解除をした者は、相手方に不利な時期に委任を解除した場合には、相手方の損害を賠償しなければなりません。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りではありません(改正民法651条2項1号)。一方、請負は、請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます(民法641条)。
イ 委任×請負× 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生じます(民法643条)。一方、請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生じます(民法632条)。いずれも書面によることは要しません。
ウ 委任○請負× 委任は、受任者は特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができません(民法648条1項)。一方、請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生じます(民法632条)。
エ 委任○請負× 委任の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生じます(民法652条、620条)。一方、請負は、当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負います(改正民法545条1項)。
オ 委任×請負× 委任は、受任者が後見開始の審判を受けたことによって終了します(民法653条3項)。委任者の場合は終了しません。一方、請負は各当事者の後見開始の審判が終了事由とされている規定はありません。
参考になった数18
この解説の修正を提案する
02
ア:「この契約」が委任契約と請負契約とのいずれを指すのであっても、誤
委任契約については、民法651条は、「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる」と規定しています。「やむを得ない事由」が関係するのは、解除に伴い損害賠償をしなければならないかという場面です(651条2項)。
請負契約については、民法641条は、「請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる」と規定しています。なお、請負人からいつでも解除できるということを定める規定はないことに注意してください。
よって、「この契約」が委任契約と請負契約とのいずれを指すのであっても、誤った記述です。
イ:「この契約」が委任契約と請負契約とのいずれを指すのであっても、誤
委任契約については、民法643条は、「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」と規定しているため、委任契約は、委託の意思表示と承諾の意思表示の合致のみで成立する諾成契約です。
請負契約については、民法632条は、「請負は、当事者の一方がある仕事の完成をすることを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と規定していますので、請負契約も諾成契約です。
よって、「この契約」が委任契約と請負契約とのいずれを指すのであっても,誤った記述です。
ウ:「この契約」が委任契約を指す場合のみ、正
委任契約については、民法648条1項は、「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない」と定めていますので、委任契約は有償契約の場合も無償契約の場合もあります。
請負契約については、民法632条は、「請負は、当事者の一方がある仕事の完成をすることを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と規定していますので、請負契約は有償契約です。
よって、「この契約」が委任契約を指す場合のみ、正しい記述です。
エ:「この契約」が委任契約を指す場合のみ、正
民法652条が委任について準用する620条は、「解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる」と定めていますので、委任契約の一方当事者による解除は、将来に向かってのみ効力を生じます。
これに対して、請負契約においては、将来効を定める規定はなく、620条の準用もありませんので、545条1項によって、「その相手方を原状に復させる義務を負う」ことになります。
よって、「この契約」が委任契約を指す場合のみ、正しい記述です
オ:「この契約」が委任契約と請負契約とのいずれを指すのであっても、誤
委任契約については、民法653条3号が、委任の終了事由として、「受任者が後見開始の審判を受けたこと」を定めていますが、委任者が後見開始の審判を受けたことは終了事由とはしていません。
請負契約については、当事者のいずれについても後見開始の審判を受けたことは契約の終了事由とはされていません。
よって、「この契約」が委任契約と請負契約とのいずれを指すのであっても、誤った記述です。
参考になった数5
この解説の修正を提案する
03
ア…委任契約も請負契約も正しくありません。委任契約はいつでも当事者の一方から解除ができます(651条1項)。ただし、相手方に不利な時期に委任を解除する場合には損害賠償支払義務が発生し、これを免れるためにはやむを得ない事由が必要です(651条2項1号)。一方、請負契約は仕事を完成しない間は、損害賠償をしていつでも契約解除ができます(641条)。完成してしまった仕事に対しては、仕事の完成をもって契約が終了しているため、解除ができません。
イ…委任契約も請負契約も正しくありません。委任契約も請負契約も諾成契約であり、当事者の相手方に対する意思表示で契約が成立します。
ウ…委任契約についてのみ正しいです。委任契約は、原則として無償契約ですが、特約で報酬を支払うこともでき、その場合には有償契約となります(648条1項)。一方、請負契約は、請負人が一定の仕事の完成を約束することで成り立つため、つねに有償契約です。
エ…委任契約についてのみ正しいです。委任契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生じます(652条、620条)。一方、請負契約は原状回復義務があります(545条1項)。
オ…委任契約も請負契約も正しくありません。委任契約は、受任者が後見開始の審判を受けた場合には、終了します(653条3号)。委任者が後見開始の審判を受けた場合には終了しないので、「いずれかが」という不定の規定ではありません。一方、請負契約の終了原因には後見開始の審判を受けた場合の規定はありません。
参考になった数4
この解説の修正を提案する
前の問題(問18)へ
平成30年度問題一覧
次の問題(問20)へ