司法書士の過去問
平成30年度
午後の部 問70

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問題

平成30年度 司法書士試験 午後の部 問70 (訂正依頼・報告はこちら)

合資会社又は合同会社の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  社員Aの死亡時に解散する旨を定款で定めている合資会社において、Aが死亡した場合には、Aの死亡による変更の登記、解散の登記及び清算人の登記は、同時に申請しなければならない。

イ  合資会社の業務を執行しない無限責任社員Aの責任を有限責任に変更したことによる変更の登記は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する社員の全員の同意があったことを証する書面を添付して申請することができる。

ウ  合同会社の設立に際し、定款の定めに基づく社員の互選によってAが代表社員と定められた場合において、Aが代表社員への就任を承諾したことを証する書面に押印された印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければ、設立の登記を申請することができない。

エ  合同会社の設立に際し、自然人A及び合同会社Bが業務執行社員として定められた場合において、合同会社Bの代表社員がC株式会社であり、その職務執行者がDであるときは、資本金の額の決定についてA及びDの一致を証する書面を添付して、設立の登記を申請することができる。

オ  合同会社の業務執行社員としてAが新たに出資をして加入するに際し、平成30年6月25日にAの加入に関する事項についての総社員の同意があり、同月28日にAが出資に係る払込みの全部を完了した場合には、平成30年6月28日を変更日として業務執行社員の加入及び資本金の額の変更の登記を申請することができる。
  • アイ
  • アウ
  • イエ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01


正解 5

ア 誤り
持分会社は、定款で定めた解散の事由の発生により解散します(会社法641条2号)。
よって、本肢では、社員Aの死亡時に解散する旨が定款で定められているため、Aの死亡による変更の登記及び解散の登記を申請しなければなりません。
また、持分会社が解散した場合には、清算人を置く必要があるため(同法644条1号、同646条)、清算人の登記も申請する必要があります。
もっとも、これらの登記を同時に申請しなければならないとする規定はありません。

イ 誤り
持分会社の定款には、社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別を記載しなければなりません(会社法576条1項5号)。
そのため、社員の責任を変更するには、定款を変更する必要があります。持分会社において定款変更をするには、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意をもってしなければなりません(同法637条)。
本肢は、「業務を執行する社員の全員の同意」としている点で誤りです。

ウ 誤り
持分会社の代表社員が、定款の定めに基づく社員の互選によって定められた場合、設立の登記申請書に当該代表社員の就任承諾書を添付する必要がありますが、当該就任承諾書に押印された印鑑につき印鑑証明書を添付する必要はありません。

エ 正しい
合同会社の設立に際し、資本金の額は業務執行社員の過半数の同意をもって決定します。
よって、本肢の場合、業務執行社員であるAと合同会社Bの代表社員の職務執行者であるDの一致を証する書面を添付して、設立の登記を申請することができます(商業登記法118条、同93条)。

オ 正しい
持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をしたときに、その効力が生じます(会社法604条2項)。持分会社において定款変更をするには、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意をもってしなければなりません(同法637条)。
また、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が定款の変更をしたときにその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了したときに、合同会社の社員となります(同604条3項)。
よって、本肢の場合、平成30年6月25日にAの加入に関する事項についての総社員の同意があり、同月28日にAが出資に係る払込みの全部を完了した場合には、平成30年6月28日を変更日として業務執行社員の加入及び資本金の額の変更の登記を申請することができます(同914条5項6項)。

よって、正しい肢はエとオとなり、5が正解となります。

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02

正解:5

ア:誤
持分会社は、解散の事由を定款で定めた場合、当該事由の発生によって解散するところ、本肢は、特定の社員の死亡が解散事由として定められているので、当該社員の死亡による変更の登記及び解散の登記を申請しなければなりません。また、持分会社が解散したとき、清算人の登記の申請も必要となります(任意清算の場合を除く)。これらの登記の申請を同時にしなければならないという規定はありません。

イ:誤
持分会社の定款には、社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別を記載する必要がある(絶対的記載事項、会576Ⅰ⑤)ので、社員の責任を変更するには、定款の変更を要します。この定款の変更は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意をもってしなければなりません(会637)。したがって、合資会社の業務を執行しない無限責任社員の責任を有限責任に変更したことによる変更の登記の申請書には、総社員の同意があったことを証する書面を添付することを要します(商登93、111)。

ウ:誤
持分会社の設立の登記の申請書には、当該持分会社の代表社員が、定款の定めに基づく社員の互選によって定められた場合、当該代表社員の就任承諾書の添付が必要ですが、当該就任承諾書の印鑑につき印鑑証明書を添付することを要しません。

エ:正
合同会社の設立に際し、資本金の額は業務執行社員(自然人A及び合同会社B)の過半数の同意をもって決定します。当該業務執行社員(合同会社B)の意思表示は、合同会社Bの代表者である株式会社Cの職務執行者Dが行うこととなるので、資本金の額の決定についてA及びDの一致を証する書面を添付して、設立の登記を申請することができます(商登118、93)。

オ:正
持分会社が新たに社員を加入させる場合において、その加入の効力の発生は当該社員に係る定款の変更をしたときに生じます(会604ⅠⅡ)。また、合同会社の場合においては、新たに社員となろうとする者が、定款の変更をしたときにその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了したときに、合同会社の社員となります(会604Ⅲ)。したがって、平成30年6月25日に業務執行社員Aの加入に関する事項についての総社員の同意があり、同月28日にAが出資に係る払込みの全部を完了した場合には、平成30年6月28日を変更日として業務執行社員の加入及び資本金の額の変更の登記を申請することができます(会914⑤⑥)。

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03

正解:5

<解説>

ア:誤りです。

Aの死亡による変更の登記、解散の登記及び清算人の登記は、申請する必要はありますが、それらを同時に申請しなければならないとする規定はありません。

したがって、本肢は誤りです。

イ:誤りです。

持分会社において、社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別は、定款の記載事項です(会社法576条①⑸)。

ですから、本肢の変更は、定款の変更に該当します。

持分会社の定款の変更は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務執行社員全員の同意ではなく、総社員の同意によって、定款の変更をすることができます(会社法637条)。

よって、変更の登記には、総社員の同意を証する書面を添付して申請しなければなりません(商業登記法111条、93条)。

したがって、本肢は誤りです。

ウ:誤りです。

持分会社が定款の定めに基づく社員の互選によって代表社員を定めたときは、代表社員の就任承諾書の添付が必要ですが(平18・3・31民商782号)、その書面に押印された印鑑について、印鑑証明書を添付しなければならないとする規定はありません。

したがって、本肢は誤りです。

エ:正しいです。

持分会社の設立に際しての資本金の額の決定方法については、業務執行社員の過半数をもって決定します。

また、業務執行社員が法人であるときは、当該法人の代表者が意思表示をします。

このことから、本肢の場合には、AとDが意思表示をする者であり、その2人の過半数、つまりAとDの一致により資本金の額が決定され、資本金の額の決定についてA及びDの一致を証する書面を添付して、設立の登記を申請することができます。

したがって、本肢は正しいです。

オ:正しいです。

持分会社は、新たに社員を加入させることができますが、持分会社の社員の加入は、原則として、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力が生じます(会社法604条①②)。

また、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が当該社員に係る定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となります(会社法604条③)。

本肢では、平成30年6月28日に出資に係る払込みの全部が完了していることから、この日にAの加入の効力が生じます。

よって、平成30年6月28日を変更日として業務執行社員の加入及び資本金の額の変更の登記を申請することができます。

したがって、本肢は正しいです。

以上により、正しいものは肢エ・オであり、正解は5となります。

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