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司法書士の過去問 平成31年度 午前の部 問19

問題

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民法第714条第1項所定の法定の監督義務者の責任に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、どれか。

ア  不法行為をした未成年者が責任を弁識する知能を備えている場合であっても、その未成年者の監督義務者が監督義務を果たさなかったことと損害との間に相当因果関係が認められるときは、監督義務者は民法第714条第1項に基づく責任を負う。

イ  責任を弁識する知能を備えていない未成年者の行為により火災が発生した場合には、失火ノ責任二関スル法律にいう「重大ナル過失」の有無は未成年者の監督義務者の監督について考慮され、監督義務者は、その監督について菫大な過失がなかったときは、当該火災により生じた損害を賠償する責任を免れる。

ウ  民法第714条第1項所定の法定の監督義務者に当たらない者であっても、責任無能力者との身分関係等に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、法定の監督義務者に準ずべき者として、同項が類推適用される。

工  責任を弁識する知能を備えていない未成年者が、通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合にはその親権者は、当該行為について具体的に予見することができなかったときであっても、当該行為から生じた損害について、民法第714条第1項に基づく責任を負う。

オ  夫婦の一方が認知症により責任を弁識する能力を有しないときは同居する配偶者は、民法第714条第1項所定の法定の監督義務者に当たる。

(参考)
民法
第712条  未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
第713条  精神上の障舎により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。
第714条  前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
(略)
失火ノ責任二関スル法律
民法 第709条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者二重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限二在ラス
   1 .
アイ
   2 .
アオ
   3 .
イウ
   4 .
ウエ
   5 .
エオ
( 平成31年度 司法書士試験 午前の部 問19 )
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この過去問の解説 (3件)

8
正解:3

ア:誤
714条は、行為者に責任能力がなかった場合の規定ですので、不法行為をした未成年者が責任を弁識する能力を備えている場合には適用されません。判例は、この場合に、「監督義務者の義務違反と当該未成年の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であって、民法714条の規定が右解釈の妨げとなるものではない」として、民法709条に基づく責任の問題であるとしています。
よって、誤った記述です

イ:正
判例は、「責任を弁識する能力のない未成年者の行為により火災が発生した場合においては、民法714条1項に基づき、未成年者の監督義務者が右火災による損害を賠償すべき義務を負うが、右監督義務者に未成年者の監督について重大な過失がなかったときは、これを免れるものと解するのが相当というべきであり、未成年者の行為の態様のごときは、これを監督義務者の責任の有無の判断に際して斟酌することは格別として、これについて未成年者自身に重大な過失に相当するものがあるかどうかを考慮するのは相当でない」(最判平成7年1月24日民集49巻1号25頁)としています。
つまり、監督義務者に未成年者の監督について重大な過失がなかったときは、損害賠償責任を免れるのです。
よって、正しい記述です。

ウ:正
判例は、「法定の監督義務者に該当しない者であっても、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視してその者に対し民法714条に基づく損害賠償責任を問うことができるとするのが相当であり、このような者については、法定の監督義務者に準ずべき者として、同条1項が類推適用されると解すべきである」としています(最判平成28年3月1日民集70巻3号681頁)。
よって、正しい記述です。

エ:誤
判例は、「責任能力のない未成年者の親権者は,その直接的な監視下にない子の行動について,人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があると解されるが,」「親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ないから,通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではなく」、民法714条1項の責任を負わないとしています(最判平成27年4月9日民集第69巻3号455頁)。
よって、誤った記述です。

オ:誤
判例は、「民法752条は,夫婦の同居,協力及び扶助の義務について規定しているが、これらは夫婦間において相互に相手方に対して負う義務であって、第三者との関係で夫婦の一方に何らかの作為義務を課するものではなく、」義務の内容からしても、「同条の規定をもって同法714条1項にいう責任無能力者を監督する義務を定めたものということはでき」ず、したがって、「精神障害者と同居する配偶者であるからといって,その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできないというべきである」(最判平成28年3月1日民集70巻3号681頁)。
よって、誤った記述です。

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4
正解は3です。監督義務者の損害賠償責任(714条)と予見可能性(709条)についての質問です。判例では、714条をより広義の包括的責任として言及し、709条を危険発生の予見可能性がある場合のみに適用される責任としています。したがって、どのような者を監督義務者として認めるか、どのような場合に監督義務が発生するか、などに関する詳細な判例知識が必要になります。

ア…誤りです。本文参考部分に示された通り、未成年者が自己の行為の責任を弁識することができたときは、賠償責任を逃れることはできません。しかし未成年者本人は資力がないため、損害賠償請求の相手として帰属させることは現実的ではありません。判例では、未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と、当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当の因果関係を認めるときは、監督義務者につき709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であるとされました(最判昭49・3・22)。これは714条の規定によって妨げられるものではないとされています。

イ…正しいです。責任を弁識する能力のない未成年者の行為により、火災が発生した場合において、「失火の責任に関する法律」にいう「重大な過失の有無」は、未成年者の監督義務者の監督責任について決せられるべきであり、監督義務者に重大な過失がなかったときは、当該火災により生じた損害を賠償する責任を免れます(最判平7・1・24)。

ウ…正しいです。法定の監督義務者以外の者であっても、責任無能力者との関係性や日常生活での関わりに照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行い、その態様が単なる事実上の監督を超えているなど、その監督義務を引き受けたとみるべき特別の事情が見られる場合には、法定の監督義務者に準ずべき者として、714条1項が類推適用されるとしました(最判平28・3・1)。準監督義務者という概念が初めて登場した形になります。

エ…誤りです。未成年者の蹴ったサッカーボールが通行人に当たり、その後当該通行人が死亡した問題について、判例は、未成年者が行っていたフリーキックの練習は通常は人身に危険が及ぶような行為でなく、道路に向けて意図的に蹴ったものではないこと、親が当該未成年者に日頃から事故の起こらないようにしつけをしていたことなどを根拠に、通常は人身に危険が及ぶものとは見られない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情があると認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとはいえず、714条の監督義務違反には当たらないとしました(最判平27・4・9、サッカーボール事件)。

オ…誤りです。選択肢ウと同じ判例では、夫婦は民法752条により、相互扶助の義務はあるが、第三者に対しての監督責任まで負うものではなく、精神障害者(認知症患者など)と同居する配偶者であることをもって、714条1項の「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない、としました(最判平28・3・1)。また、精神障害者の保護者や成年後見人という立場は、法律行為を行う際に当該精神障害者の身上に配慮することを求められるけれども、事実行為として現実の介護や行動の監視まで求められるものではなく、同様に714条の監督義務者には当らないとしています。

4
正解:3

ア:誤
判例は、未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法第709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当(最判昭49.3.22)としています。

イ:正
判例は、責任を弁識する能力のない未成年者の行為により火災が発生した場合において、失火の責任に関する法律にいう重大な過失の有無は、未成年者の監督義務者の監督について考慮され、当該監督義務者は、その監督について重大な過失がなかったときは、当該火災により生じた損害を賠償する責任を免れると解すべきである(最判平7.1.24)としています。

ウ:正
判例は、法定の監督義務者に該当しない者であっても、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けて、その者が当該責任無能力者の監督を現に行い、その態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、法定の監督義務者に準ずべき者として、民法第714条第1項が類推適用されると解すべきである(最判平28.3.1)としています。

エ:誤
判例は、責任能力のない未成年者の親権者は、その直接的な監視下にない子の行動について、人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があると解されるが、通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではなく、民法第714条1項の監督義務者としての義務を怠らなかったというべきである(最判平27.4.9)としています。
よって、本肢のような場合、親権者は、未成年者の行為から生じた損害について、民法第714条第1項に基づく責任を負いません。

オ:誤
判例は、精神障害者と同居する配偶者であるからといって、その者が民法第714条第1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない(最判平28.3.1)としています。

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