司法書士の過去問
平成31年度
午前の部 問30

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問題

平成31年度 司法書士試験 午前の部 問30 (訂正依頼・報告はこちら)

株主による議決権の行使に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、どれか。

ア  株式を譲り受けた株式取得者が株式会社に対し株主名薄の名義書換の請求をした場合において、当該株式会社の過失により名義書換が行われなかったときは当該株式会社は、株主名簿の名義書換がないことを理由として、当該株式の譲渡を否定することができない。

イ  株主総会において議決権を行使することができる株主の数が1000人以上である株式会社においては、株主総会を招集する場合には、当該株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができる旨を定めなければならない。

ウ  株主総会において議決権を行使する株主の代理人の資格を当該株式会社の株主に制限する旨の定款の定めは無効である。

工  株主が、書面による議決権行使の期限までに書面によって株主総会における議決権を行使した場合であっても、自ら当該株主総会に出席して議決権を行使したときは、書面による議決権の行使は、その効力を失う。

オ  他人のために株式を有する者でない株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができない。
  • アウ
  • アエ
  • イエ
  • イオ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解:2

ア:正
判例は、正当の事由なくして株式の名義書換請求を拒絶した会社は、その書換のないことを理由としてその譲渡を否認できず、このような場合には、会社は株式譲受人を株主として取り扱わなければならず、株主名簿上に株主として記載されている譲渡人を株主として取り扱うことはできない。そして、このことは、株式譲受人から名義書換請求があったのにかかわらず、会社が過失によりその書換をしなかったときも同様であるとしています(最判昭和41年7月28日民集第20巻6号1251頁)。
よって、正しい記述です。

イ:誤
会社法298条2項は、株主の数が一定数を超える場合には、「書面によって」議決権を行使することができる旨を定めなければならないとはしています(298条2項、1項3号)が、「電磁的方法」によって議決権を行使する旨を定めることの強制はしていません。
よって、誤った記述です。

ウ:誤
会社法310条1項は「株主は、代理人によってその議決権を行使することができる」と定めています。この代理人について、判例は、定款の定めによって、合理的な理由による相当と認められる程度の制限を加えることは認められるとして、株主総会において議決権を行使する株主の代理人の資格をその株式会社の株主に制限することは認められるとしています(最判昭和43年11月1日民集22巻12号2402頁)。
よって、誤った記述です。

エ:正
複数の方法での議決権行使が重複してなされた場合について、明確な判例はありません。
学説では、この場合には、後にされた議決権行使により先になされたものが撤回されたものと取り扱うとするという見解が有力です。
この考え方によれば、書面による議決権行使をしたが、後に自ら株主総会に出席して議決権を行使したという場合には、株主総会に出席しての議決権行使により、書面による議決権行使が撤回され、効力が失われるということになります。
よって、正しい記述です。

オ:誤
会社法313条1項「株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる」と原則を定め、同条3項「株式会社は、第一項の株主が他人のために株式を有する者でないときは、当該株主が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる」と定めています。このように3項は「他人のために株式を有する者でないとき」に株式会社が、統一しないでする議決権行使を拒むことができるにとどまり、そのような議決権行使そのものを禁止するものではありません。
よって、誤った記述です。

参考になった数16

02


正解 2

ア 正しい
株式会社の過失により株主名簿の名義書換が行われなかった場合について、判例は、「正当の自由なくして株式の名義書換請求を拒絶した会社は、その書換のないことを理由としてその譲渡を否認しえないのであり…、従って、このような場合には、会社は株式譲受人を株主として取り扱うことを要し、株主名簿上に株主として記載されている譲渡人を株主として取り扱うことを得ない。そして、この理は会社が過失により株式譲受人から名義書換請求があったのにかかわらず、その書換をしなかったときにおいても、同様であると解すべきである」(最判昭和41年7月28日)としています。

イ 誤り
取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の数が1000人以上である場合には、株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができる旨を定めなければなりませんが(会社法298条2項)、当該株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができる旨を定めなければならないとする規定は存在しません。

ウ 誤り
議決権を行使する株主の代理人の資格を当該株式会社の株主に制限する旨の定款の定めの効力について、判例は、「代理人は株主にかぎる旨の定款の規定は、株主総会が、株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨にでたものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限ということができるから、有効であると解するのが相当である」(最判昭和43年11月1日)としています。

エ 正しい
株主が、書面によって株主総会における議決権を行使した場合であっても、自ら当該株主総会に出席して議決権を有効に行使することができ、その場合は、書面による議決権の行使は、その効力を失います。

オ 誤り
株式会社は、株主が他人のために株式を有する者でないときは、当該株主がその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができます(会社法313条3項)。
もっとも、この規定は任意的であるため、当該株主は議決権を統一しないで行使することもできます。

以上から、正しい選択肢はアとエとなり、正解は2となります。

参考になった数3

03

正解:2

ア:正
判例は、株式譲受人から名義書換請求があったのに、会社が過失によりその書換えをしなかった場合には、会社は株式譲受人を株主として取り扱うことを要し、株主名簿に株主として記載されている譲渡人を株主として取り扱ってはならない(最判昭41.7.28)としています。

イ:誤
取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の数が1000人以上である場合には、株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができる旨を定めなければなりません(当該株式会社が金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社であって法務省令で定めるものである場合を除く)(会298参照)。
しかし、人数の多寡によって株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができる旨を定めなければならないとする規定はありません。

ウ:誤
議決権行使の代理人の資格を株主に制限する旨の定款の規定の効力について、判例は、代理人は株主にかぎる旨の定款の規定は、株主総会が、株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨にでたものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限ということができるから、有効であると解するのが相当である(最判昭43.11.1)としています。

エ:正
書面によって株主総会における議決権を行使したときであっても、さらに自ら当該株主総会に出席して議決権を行使することができます。この場合、書面による議決権の行使は、その効力を失います。

オ:誤
株式会社は、他人のために株式を有する者でない株主に対して、議決権を統一しないで行使することを拒むことができます(会313Ⅲ)が、この不統一行使の拒否は任意的であり、必ずしも当該株主が議決権を統一しないで行使できなくなるわけではありません。

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