司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問36
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問題
平成31年度 司法書士試験 午後の部 問36 (訂正依頼・報告はこちら)
民事訴訟における管轄に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。
ア 土地管轄についての管轄違いを理由に移送を受けた簡易裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合には、更に当該訴訟をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができない。
イ 外国の社団の普通裁判籍は、日本における主たる事務所又は営業所があるときであっても、当該事務所又は営業所の代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
ウ 訴えの提起の時にその管轄区域内に被告の住所がなかったことを理由として、受訴裁判所である地方裁判所が管轄裁判所である地方裁判所に移送する旨の決定をした場合には、その決定が確定する前に被告が当該受訴裁判所の管轄区域内に住所を移したときであっても、当該決定は、適法であり、即時抗告がされても取り消されない。
工 審級を異にする裁判所が同一の事件についてした判決に対する再審の訴えは、上級の裁判所が併せて管轄する。
オ 簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき、被告から移送の申立てがあるときは、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合でない限り、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。
ア 土地管轄についての管轄違いを理由に移送を受けた簡易裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合には、更に当該訴訟をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができない。
イ 外国の社団の普通裁判籍は、日本における主たる事務所又は営業所があるときであっても、当該事務所又は営業所の代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
ウ 訴えの提起の時にその管轄区域内に被告の住所がなかったことを理由として、受訴裁判所である地方裁判所が管轄裁判所である地方裁判所に移送する旨の決定をした場合には、その決定が確定する前に被告が当該受訴裁判所の管轄区域内に住所を移したときであっても、当該決定は、適法であり、即時抗告がされても取り消されない。
工 審級を異にする裁判所が同一の事件についてした判決に対する再審の訴えは、上級の裁判所が併せて管轄する。
オ 簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき、被告から移送の申立てがあるときは、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合でない限り、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。
- アウ
- アエ
- イウ
- イオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解:5
ア:誤
管轄違いの場合は、管轄裁判所に訴訟が移送されます(民事訴訟法16条1項)。確定した移送の裁判は、移送を受けた裁判所を拘束し(22条1項)、移送を受けた裁判所は、更に事件を他の裁判所に移送することができない(同条2項)とされています。
もっとも、この拘束力は、同一の移送の事由について生じるもので、これとは異なる事由をもってさらに移送をすることは禁じられていません(裁判例として、東京地決昭和61年1月14日判時1182号103頁)。
したがって、土地管轄についての管轄違いを理由に移送を受けた簡易裁判所は、土地管轄についての管轄違いとは異なる事由による場合(民事訴訟法18条等)には、更に当該訴訟をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができます。
よって、誤った記述です。
イ:誤
民事訴訟法4条5項は、「外国会社の社団又は財団の普通裁判籍は、前項の規定にかかわらず、日本における主たる事務所又は営業所により、日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる」と規定しています。「日本における主たる事務所又は営業所があるとき」は、「日本における主たる事務所又は営業所により」普通裁判籍が定まるのです。
よって、誤った記述です。
ウ:誤
民事訴訟法15条は「裁判所の管轄は、訴えの提起の時を標準として定める」としていますので、訴え提起時にその管轄区域内に被告の住所がないという瑕疵があります。
しかし、この瑕疵は、のちに被告が管轄区域内に住所を移したときには治癒されると一般的に解されています。そして、移送の決定がなされる前にこの治癒が生じた場合には、移送の決定に対して即時抗告をすることができ(民事訴訟法21条)、移送の決定はこの即時抗告において違法として取り消されます。
よって、誤った記述です。
エ:正
民事訴訟法340条2項は、「審級を異にする裁判所が同一の事件についてした判決に対する再審の訴えは、上級の裁判所が併せて管轄する」と規定しています。
よって、正しい記述です。
オ:正
民事訴訟法19条2項は、「簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。ただし、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合は、この限りでない」と定めています。
よって、正しい記述です。
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02
ア:誤
移送を受けた裁判所は、更に事件を他の裁判所に移送することができません(民訴22Ⅱ)。しかし、民事訴訟法第22条第2項は、移送を受けた裁判所が他の事由に基づいて事件を他の裁判所に移送することを禁止する趣旨ではないから、管轄違いを理由とする移送を受けた裁判所が民事訴訟法第18条(簡易裁判所の裁量移送)の規定による移送を行うことは違法ではありません(東京高決昭32.10.24)。
イ:誤
外国の社団又は財団の普通裁判籍は、民事訴訟法第4条第4項の規定にかかわらず、日本における主たる事務所又は営業所により、日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まります(民訴4Ⅴ)。
ウ:誤
訴えの提起の時にその管轄区域内に被告の住所がなかったことを理由として、受訴裁判所である地方裁判所が管轄裁判所である地方裁判所に移送する旨の決定をした場合であっても、その決定が確定する前に被告が当該受訴裁判所の管轄区域内に住所を移転したときは、管轄違いの瑕疵が治癒され、当該決定は即時抗告がされることによって取り消されます。
エ:正
審級を異にする裁判所が同一の事件についてした判決に対する再審の訴えは、上級の裁判所が併せて管轄します(民訴340Ⅱ)。
オ:正
簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合を除いて、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければなりません(民訴19Ⅱ)。
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03
正解 5
ア 誤り
移送を受けた裁判所は、更に事件を他の裁判所に移送することができません(民事訴訟法22条2項)。
もっとも、判例は、民事訴訟法22条2項について、「移送を受けた裁判所が他の事由に基づいて事件を他の裁判所に移送することを禁止する趣旨ではないから、管轄違いを理由とする移送を受けた裁判所が民事訴訟法18条の規定による移送を行うことは違法ではない」(東京高決昭和32年10月24日)としています。
よって、管轄違いを理由に移送を受けた裁判所が簡易裁判所は、更に当該訴訟をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができます。
イ 誤り
外国の社団の普通裁判籍は、日本における主たる事務所又は営業所により、日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まります(民事訴訟法4条5項)。
ウ 誤り
本肢のように、訴えの提起時にその管轄区域内に被告の住所がなかったことを理由として、受訴裁判所である地方裁判所が管轄裁判所である地方裁判所に移送する旨の決定をした場合であっても、その決定が確定する前に被告が当該受訴裁判所の管轄区域内に住所を移したときは、管轄違いの瑕疵は治癒されるため、当該決定は即時抗告により取り消されることになります。
エ 正しい
審級を異にする裁判所が同一の事件についてした判決に対する再審の訴えは、上級の裁判所が併せて管轄します(民事訴訟法340条2項)。
オ 正しい
簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき、被告から移送の申立てがあるときは、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合を除き、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければなりません(民事訴訟法19条2項)。
以上から正しい選択肢はエとオとなり、5が正解となります。
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