司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問37
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問題
平成31年度 司法書士試験 午後の部 問37 (訂正依頼・報告はこちら)
処分権主義に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、どれか。
ア 裁判所が当事者の主張しない主要事実を認定し、これに基づいて判決をすることは、民事訴訟法第246条に違反する。
イ 買主が売主に対し売買契約に基づく動産の引渡しを求める訴訟において、売主から買主が売買代金を支払うまでは当該動産の引渡しを拒絶するとの同時履行の抗弁が主張された場合に、その抗弁が認められるときは、裁判所は、当該売買代金の支払と引換えに当該動産の引渡しを命ずる判決をすることとなる。
ウ 買主が売主に対し売買契約に基づく動産の引渡しを求める訴訟において、売主から引渡しについて履行期の合意があるとの抗弁が主張された場合に、その抗弁が認められるときは、裁判所は、当該動産の引渡義務の存在を確認する判決をすることとなる。
エ 300万円の貸金債務のうち150万円を超えて貸金債務が存在しないとの確認を求める訴訟において、裁判所が200万円を超えて貸金債務が存在しないと判決をすることは、民事訴訟法第246条に違反しない。
オ 土地の賃借人が当該土地の賃借権に基づき当該土地上のエ作物の撤去を求める訴訟において、裁判所が当該賃借人の主張しない占有権を理由として請求を認容することは、民事訴訟法第246条に違反しない。
(参考)民事訴訟法
第246条 裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。
ア 裁判所が当事者の主張しない主要事実を認定し、これに基づいて判決をすることは、民事訴訟法第246条に違反する。
イ 買主が売主に対し売買契約に基づく動産の引渡しを求める訴訟において、売主から買主が売買代金を支払うまでは当該動産の引渡しを拒絶するとの同時履行の抗弁が主張された場合に、その抗弁が認められるときは、裁判所は、当該売買代金の支払と引換えに当該動産の引渡しを命ずる判決をすることとなる。
ウ 買主が売主に対し売買契約に基づく動産の引渡しを求める訴訟において、売主から引渡しについて履行期の合意があるとの抗弁が主張された場合に、その抗弁が認められるときは、裁判所は、当該動産の引渡義務の存在を確認する判決をすることとなる。
エ 300万円の貸金債務のうち150万円を超えて貸金債務が存在しないとの確認を求める訴訟において、裁判所が200万円を超えて貸金債務が存在しないと判決をすることは、民事訴訟法第246条に違反しない。
オ 土地の賃借人が当該土地の賃借権に基づき当該土地上のエ作物の撤去を求める訴訟において、裁判所が当該賃借人の主張しない占有権を理由として請求を認容することは、民事訴訟法第246条に違反しない。
(参考)民事訴訟法
第246条 裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。
- アウ
- アオ
- イウ
- イエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア:誤
弁論主義の一内容として、裁判所は、当事者のいずれもが主張していない事実を判決の基礎としてはならないという原則があり、この事実には主要事実が含まれます。弁論主義は、民事訴訟法246条とは異なります。
したがって、裁判所が当事者の主張しない主要事実を認定し、これに基づいて判決をすることは、弁論主義に反するのであって、民事訴訟法246条に反するわけではありません。
よって、誤った記述です。
イ:正
判例は、売買契約に基づく目的物の引渡し請求訴訟において、同時履行の抗弁が主張され、この抗弁が認められる場合には、売買代金と支払と引換えに目的物の引渡しを命ずる判決をしています(大判明治44年12月11日民録17輯772頁)。
このような場合は、原告の主張する条件(無条件での給付)よりも不利な条件での給付を認めるもので、原告の請求の一部を認容するものだからです。
よって、正しい記述です。
ウ:誤
判例は、給付の訴えがなされたのに対して、請求権の存在の確認判決をすることは、処分権主義に反するとしています(大判大正8年2月6日民録25輯276頁)。
給付の訴えの認容と確認の訴えの認容とでは審判形式が異なることを重視したものと考えられます。
よって、誤った記述です。
エ:正
「貸金債務のうち150万円を超える部分が存在しない」というのが原告の申立てであり、「200万円を超えて貸金債務が存在しない」との判決は、原告の申立ての範囲内で原告に不利な判決をすること(一部認容判決)であるため、「当事者が申し立てていない事項について、判決をすること」にはあたりません。
したがって、民事訴訟法246条に違反しません。
よって、正しい記述です。
オ:誤
賃借権に基づく工作物の撤去請求と占有権に基づく工作物の撤去請求とでは、訴訟物が異なります。
したがって、土地の賃借人が当該土地の賃借権に基づき当該土地上の工作物の撤去を求める訴訟において、裁判所が当該賃借人の主張しない占有権を理由として請求を認容することは、民事訴訟法246条に違反します。
よって、誤った記述です。
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02
正解 4
ア 誤り
主要事実は、当事者が主張しないかぎり、裁判所が判決の基礎とすることはできません(弁論主義の第1テーゼ)。
よって、裁判所が当事者の主張しない主要事実を認定し、これに基づいて判決をすることは弁論主義に違反することになります。
イ 正しい
訴訟において同時履行の抗弁権を主張された場合について、判例は、「原告の反対給付の履行と引換えに被告に給付を命ずる引換給付の判決をする」(大判明44.12.11)としています。
よって、本肢では、売主による同時履行の抗弁が認められるときは、裁判所は、当該売買代金の支払と引換えに当該動産の引渡しを命ずる判決をすることになります。
ウ 誤り
裁判所は、原告が申立てる審判に拘束されるため、本肢のように、原告が申し立てた給付の訴え(売買契約に基づく動産の引渡しを求める訴訟)に対して、裁判所が、確認判決をすることはできません。
エ 正しい
本肢における審判の対象は、300万円を上限とした150万円を超えた債権の存否であるため、被告による弁済額を100万円と認めて、200万円を超えて貸金債務が存在しないと判決をしても、原告が申立てた審判事項についての判断といえるため、民事訴訟法第246条に違反しません。
オ 誤り
本肢において、原告が裁判所に申し立てた事項は、当該土地の賃借権に基づく当該土地上のエ作物の撤去です。
これに対し、裁判所が当該賃借人の主張しない占有権を理由として請求を認容することは、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることになるため、民事訴訟法第246条に違反します。
以上から正しい選択肢はイとエとなり、4が正解となります。
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03
ア:誤
裁判所が当事者の主張しない主要事実を認定し、これに基づいて判決をすることは、弁論主義の原則の一つ「裁判所は、当事者の主張しない事実を裁判の基礎とすることは許されない」とする「主張責任の原則」に反することになります。
イ:正
裁判所は、その申立ての範囲内の事項についてのみ審理・判決することができます(民訴246)。申立ての事項の範囲について、裁判所は当事者の要求以上のものを認容することは許されませんが、要求以下のものを認容することは一部認容判決として許されます。この一部認容判決の一つとして、無条件の給付請求に対して、請求の棄却判決をするのではなく、被告が同時履行の抗弁権を主張する場合に、原告の反対給付の履行と引換えに被告に給付を命じる引換給付判決があります(大判明44.12.11)。
ウ:誤
裁判所は原告が求める審判の種類、形式(給付・確認・形成判決)に拘束されます。つまり、裁判所が、原告が申し立てた給付の訴えに対して、確認判決をするなど、原告の訴えの種類と異なる種類の判決はできません。
エ:正
原告側(債務者)の求める審判の対象は150万円から300万円の債権の存否であるといえるから、たとえば、被告側(債権者)の100万円しか弁済されていないとの主張を認めて、200万円を超えて貸金債務が存在しないとの判決(一部認容判決)をすることは、民事訴訟法第246条に違反しません。
オ:誤
原告側が賃借権に基づいてエ作物の撤去を請求しているにもかかわらず、裁判所が、原告側の主張していない占有権を理由として請求を認容することは、訴訟物としての権利が異なっているので、民事訴訟法第246条に違反します。
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