司法書士の過去問
令和2年度
午前の部 問2

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問題

令和2年度 司法書士試験 午前の部 問2 (訂正依頼・報告はこちら)

法定の手続の保障等に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、どれか。

ア  「何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつの行為をしてはならない。」とし、その違反者に対して刑罰を科す条例について、「淫行」の意義を青少年に対する性行為一般をいうものと解釈することは、通常の判断能力を有する一般人の理解に適うものであり、処罰の範囲が不当に広過ぎるとも不明確であるともいえないから、この条例は憲法第31条に違反しない。

イ  被告人以外の第三者の所有物の没収は、被告人に対する付加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、当該第三者についても告知、弁解、防御の機会を与えることが必要であり、その機会なくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで財産権を侵害する制裁を科することにほかならないから、憲法第31条に違反する。

ウ  刑事裁判において、証人尋問に要する費用、すなわち証人の旅費、日当等は、全て国家がこれを支給すべきものであり、刑の言渡しを受けた被告人に訴訟費用としてその全部又は一部を負担させることは、憲法第37条第2項に違反する。

エ 個々の刑事事件について、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、裁判の遅延から被告人を救済する方法を具体的に定める法律が存在しなくても、憲法第37条第1項に基づいて、その審理を打ち切ることが認められる。

オ  憲法第31条の定める法定手続の保障は、刑事手続に関するものであるから、行政手続は、同条による保障の枠外にある。
  • アエ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は4です。

ア…誤りです。18歳未満の青少年に「淫行」を禁じた福岡県の条例が、結婚を目的とした真摯な合意に基づくような性行為であっても一律に規制すること、「淫行」の定義が不明確であること、などから、憲法31条に違反しないかについて、判例は、「当該条例中に、違反者が青少年である場合には刑罰を科さない規定があることから、条例中の「淫行」の定義は、広く青少年に対する性行為一般をいうものではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当であり、このように限定的に解釈するときは、解釈の範囲が不当に広すぎるとも不明確であるともいえないから、当該条例の各規定が憲法31条違反であるとはいえない」としました(福岡県青少年保護育成条例事件、最判昭60・10・23)。よって広義に解釈した状態で合憲であるとされたわけではないので、誤りです。なお、補足意見として、類似の文章からなる条例が各都道府県に存在するものの、その要件や行為の定義が不均衡かつ不統一であり、望ましくない状態であるという意見、および、一般人に本条におけるような解釈を求めることは解釈の限界を超えており、条例における罪の定義が不明確なため無罪とすべきとの反対意見があります。

イ…正しいです。被告人が犯罪に使用し、第三者の所有である船舶(目的物)があり、被告人に対する主刑とは別に、付加刑として当該目的物を国が没収したこと、およびその没収を定めた当時の関税法が、憲法31条違反ではないかについて、判例は、「本件第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、憲法29条の財産権を侵害する制裁を科するに外ならない」としました(最大判昭37・10・19)。

ウ…誤りです。刑事事件で有罪判決を受けた被告人に、証人の尋問に要した旅費等の費用を請求することは、憲法37条2項違反ではないかについて、判例は、「憲法37条の『公費で自己のために…証人を求める権利を有する』という文言の意味は、刑事被告人は裁判所に対して証人の喚問をするには、何ら財産上の出捐を必要としない。証人尋問に要する費用、すなわち、証人の旅費、日当等は、全て国家がこれを支給するのであって、訴訟進行の過程において、被告人にこれを支辨せしむることはしない。被告人の無資産などの事情のために、充分に証人の喚問を請求する自由が妨げられてはならないとする趣旨であり、被告人において有罪の言い渡しを受けた場合にも、なおかつ、被告人に費用の負担を強いてはならないという規定ではない」としています(最判昭23・12・27)。

エ…正しいです。住居侵入・放火等による刑事事件の審理が15年以上にわたる中断のために著しく遅延したことが、迅速な裁判を保障する憲法37条1項違反ではないかについて、判例は、「憲法37条1項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定である」としています(高田事件、最判昭47・12・20)。また、同判例では、規定に反する事態が起きた際には、判決で免訴の言渡しをするのが相当であるとされています。

オ…誤りです。憲法31条には「刑罰」の文言があるので、基本的には刑事手続について定められていますが、行政手続にも適用されるというのが通説です。31条の適用についての判例では、「憲法31条の定める手続は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を比較考量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではない」としています(成田新法事件、最大判平4・7・1)。よって刑事事件についてと同等ではないものの、行政事件について一律に弁明の機会等が否定されているわけではないので、誤りです。

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02

ア × 本肢は「淫行」の意義を青少年に対する性行為一般をいうものと解釈しているので誤っています。

つまり、淫行の意義を広義に解釈しているところが誤っています。

淫行とは広く青少年に対する性行為一般をいうものではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当であり、このように限定的に解釈するときは、解釈の範囲が不当に広すぎるとも不明確であるともいえないから、当該条例の各規定が憲法31条違反であるとはいえない」としました。(福岡県青少年保護育成条例事件、最判昭60・10・23)。

イ 〇 本肢をまとめると、とばっちりが第三者に及ぶかどうか、当該第三者に言い訳をする機会を与えましょう。ということです。

被告人の不可刑として第三者の所有物を没収することの合憲性が争われた事案について、判例は、第三者の所有物の没収は、被告人に対する付加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者にも及ぶものであるから、当該第三者にも、告知、弁解、防御の機会を与えることが必要であって、その機会なくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続きによらないで、財産権を侵害する制裁を科することにほかならないため、憲法31条及び同29条に違反するとした。(証は37.11.28第三者所有物没収事件)

ウ × 判例は憲法37条2項の「公費で」とは、証人尋問に要する費用、すなわち証人の旅費、日当等は、すべて国家がこれを支給することであって、これは、被告人が、訴訟の当事者たる地位にある限度において、防御が十分できるようにする趣旨であるが、有罪の判決を受けた場合にも、なおかつ被告人に対し証人の費用、日当等を含めて訴訟費用を負担させてはならないという趣旨ではない。(昭和23.12.27)

要するに、国家は支払いを避けたいので負けたほうの被告に払わせてもいいですよ。という判決です。

エ 〇 判例は憲法37条1項の保障する迅速な裁判を受ける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、同条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実にその保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、その審理を打ち切るという非常救済手段をとるべきことをも認めている趣旨の規定であるとした。(昭和47.12.20)

要するに審理が長くなりすぎたら免訴の言い渡しをするかもしれませんよ。ということです。

オ × 判例は、憲法31条は、直接には刑事手続きに関する規定であるが、行政手続きが刑事手続きでないとの理由のみでその全てが当然に憲法31条の保障の枠外にあると判断することはそうとうでないとした(平成4.7.1)

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03

正解 4

ア 誤り
判例(最判昭和60年10月23日)は、本肢と同様の事案において、「本条例の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。」としています。

イ 正しい
判例(最判昭和37年11月28日)は、本肢と同様の事案において、「被告人に対する附加刑としての没收の言渡により、当該第三者の所有物を没收する場合において、その没收に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であって、憲法の容認しないところであるといわなければならない。」として、憲法31条1項に違反すると判示しています。

ウ 誤り
判例(最判昭和23年12月27日)は、本肢と同様の事案において、「憲法37条2項の、公費で自己のために証人を求める權利を有するという意義は、刑事被告人は裁判所に対して証人の喚問を請求するには、何等財産上の出捐を必要としない。証人訊問に要する費用、すなわち、証人の旅費、日当等は、すべて国家がこれを支給するのであって、訴訟進行の過程において、被告人にこれを支弁せしむることはしない。被告人の無資産などの事情のために、充分に証人の喚問を請求するの自由が妨げられてはならないという趣旨であって、もっぱら刑事被告人をして、訴訟上の防御権を遺憾なく行使せしめんとする法意にもとずくものである。しかしながら、それは、要するに、被告人をして、訴訟の当事者たる地位にある限度において、その防御権を充分に行使せしめんとするのであって、その被告人が、判決において有罪の言渡を受けた場合にも、なおかつ、その被告人に訴訟費用の負担を命じてはならないという趣旨の規定ではない。」としています。

エ 正しい
判例(最判昭和47年12月20日)は、本肢と同様の事案において、「憲法37条1項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定である。」としたうえで、「刑事事件が裁判所に係属している間に、迅速な裁判の保障条項に反する事態が生じた場合においては、判決で免訴の言渡をするのが相当である。」としています。

オ 誤り
判例(最判平成4年7月1日)は、本肢と同様の事案において、「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。」としています。

参考になった数10