司法書士の過去問
令和2年度
午前の部 問3
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問題
令和2年度 司法書士試験 午前の部 問3 (訂正依頼・報告はこちら)
司法権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、どれか。
ア 政党が党員に対してした除名処分は、当該政党の自治的措置に委ねられるものであるから、その有効性について裁判所が審理判断することは許されない。
イ 大学における単位の授与(認定)行為は、当該大学の自主的、自律的な判断に委ねられるものであるが、それが一般市民法秩序と直接の関係を有することを肯認するに足りる特段の事情がある場合には、裁判所の司法審査の対象となる。
ウ 特定の者が宗教法人である宗教団体の宗教活動上の地位にあるか否かを判断するにつき、当該宗教団体の教義ないし信仰の内容に立ち入って審理、判断することが必要不可欠である場合には、宗教上の教義ないし信仰の内容に関わる事項についても裁判所の審判権が及ぶ。
エ 国会議員は、立法に関しては、国民全体に対する政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した法的義務を負うものではないから、国会議員の立法行為が違法の評価を受けるか否かについて裁判所が審理判断することは許されない。
オ 国会議員の資格に関する争訟については、憲法上、その議員が属する議院が裁判をする旨の規定があることから、裁判所の審判権は及ばない。
ア 政党が党員に対してした除名処分は、当該政党の自治的措置に委ねられるものであるから、その有効性について裁判所が審理判断することは許されない。
イ 大学における単位の授与(認定)行為は、当該大学の自主的、自律的な判断に委ねられるものであるが、それが一般市民法秩序と直接の関係を有することを肯認するに足りる特段の事情がある場合には、裁判所の司法審査の対象となる。
ウ 特定の者が宗教法人である宗教団体の宗教活動上の地位にあるか否かを判断するにつき、当該宗教団体の教義ないし信仰の内容に立ち入って審理、判断することが必要不可欠である場合には、宗教上の教義ないし信仰の内容に関わる事項についても裁判所の審判権が及ぶ。
エ 国会議員は、立法に関しては、国民全体に対する政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した法的義務を負うものではないから、国会議員の立法行為が違法の評価を受けるか否かについて裁判所が審理判断することは許されない。
オ 国会議員の資格に関する争訟については、憲法上、その議員が属する議院が裁判をする旨の規定があることから、裁判所の審判権は及ばない。
- アウ
- アエ
- イウ
- イオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア…誤りです。平成4年当時の参議院選挙において、日本新党の議員が除名されたことに伴い、名簿上からも名前を削除されたため、繰り上げ当選を果たせなかったことについて、判例は、「政党等の結社としての自主性に鑑みると、政党等が組織内の自律的運営として党員等に対してした除名その他の処分の当否については、原則として政党等による自律的な解決にゆだねられている」としています(日本新党事件、最判平7・5・25)。
イ…正しいです。国立大学の学生らに対し、大学側はあらかじめ当該学生らに不行跡の科で授業担当停止措置をとっており、単位認定が認められなかった件で、大学側の行為が違法でないかについて、判例は「➀国公立大学であるかに関わらず、特殊な部分社会である大学における法律上の係争のすべてが司法審査の対象となるわけではない②単位認定行為は、他にそれが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足る特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきものであって、裁判所の司法審査の対象にはならない」としています(富山大学単位不認定事件、最判昭52・3・15)。特定の単位認定が一般市民法上一種の資格要件とされる場合があることは否定されておらず、一般市民法秩序と直接関係ある場合にのみ認められるという考えです。
ウ…誤りです。判例は、「具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており、その効力の有無が紛争の本質的争点をなすとともに、それが宗教の教義、信仰の内容に深く関わっているため、その教義信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものである場合には、当該訴訟は法律上の争訟にあたらない」としています(最判平元・9・8)。
エ…誤りです。判例は、国会議員は憲法に対する多様な見解を立法に反映させるべき立場にあり、あるべき立法行為を措定して具体的立法行為の適否を法的に評価するということは、原則的には許されないとしており、「国家賠償法1条1項の適用上違法となるかどうかは、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべき」とした上で、「国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に矛盾しているにもかかわらずあえて当該立法を行うというような例外的な場合でない限り、国家賠償法の適用上、違法の評価を受けるものではない」としています(最判昭60・11・21)。したがって、憲法に一義的に違反する場合には立法行為も裁判所において違法と判断されうることになりますので、誤りです。
オ…正しいです。両議院は各々その議員の資格に関する争訟を裁判します(憲法55条)。三権分立の観点から、議員の自律権を各議院に確保させるもので、司法権の限界とされています。なお、ここでいう資格は➀議員が被選挙権を有すること、②兼職が禁じられている職務についていないこと、を指すのであって、議員の選挙に関する手続上の違法や、議院内の秩序を乱す議員への懲罰等とは区別されます。
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02
ア 誤り
判例(最判平成7年5月25日)は、本肢と同様の事案において、「政党等の結社としての自主性にかんがみると、政党等が組織内の自律的運営として党員等に対してした除名その他の処分の当否については、原則として政党等による自律的な解決にゆだねられているものと解される。」てしており、例外的に司法権が及ぶことがあることを認めています。
イ 正しい
判例(最判昭和52年3月15日)は、本肢と同様の事案において、「単位授与(認定)行為は、他にそれが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきものであつて,裁判所の司法審査の対象にはならないものと解するのが相当である。」としています。
判例の立場によれば、単位授与行為が一般市民法秩序と直接の関係を有することを肯認するに足りる特段の事情がある場合には、司法審査の対象になることになります。
ウ 誤り
判例(平成元年9月8日)は、本肢と同様の事案において、「当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており、その効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなすとともに、それが宗教上の教義、信仰の内容に深くかかわっているため、右教義、信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものである場合には、右訴訟は、その実質において法令の適用による終局的解決に適しないものとして、裁判所法3条にいう「法律上の争訟」に当たらないというべきである。」としています。
エ 誤り
判例(最判昭和60年11月21日)は、本肢と同様の事案において、「国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであつて、国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものといわなければならない。」としており、国会議員の立法行為が違法の評価を受けるか否かについて、裁判所が例外的に審理判断する場合があることを認めています。
オ 正しい
国会議員の資格に関する争訟は、各議院が行うこととされています(憲法55条)。
国会議員の資格に関する争訟は、各議院の自律権にかかわる事項であるため、司法権が介入することはできません。
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03
ア × 本肢を要約すると、政党の党員に対する除名処分に司法審査は原則及ばないが、例外的に及ぶ場合がありますよ。(ただし極めて例外的な場合だけ。)ということです。
政党がその政党の党員に対してした処分が一般市民秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審査権は及ばないとし、さらに、当該処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、当該処分のの当否は、当該政党の自律的に定められた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り、当該規範に照らし、規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続きにしたがってされたか否かによって決すべきであり、審理もその点に限られるとして、裁判所が審理判断する場合を認めている。(昭和63.12.20)
イ 〇 本肢を要約すると、大学における単位授与行為は原則として司法審査の対象とはならないが特段の事情がある場合には司法審査の対象となり得ます。
判例は一般市民社会の中にあってこれとは別個に自律的な法規範を有する特殊な部分社会における法律上の係争は、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、自主的、自律的な解決に委ねるのが適当であり裁判所の司法審査の対象とならないとした上で大学はその設置目的を達成するために必要な事項を学則等により規定し実施する自律的、包括的な機能を有し、一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成しているから、大学はその設置目的を達成するために必要な事項を学則等により規定し実施する自律的、包括的な機能を有し、一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成しているから、大学単位授与行為は、他にそれが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として、裁判所の司法審査の対象とはならないとした。(昭和52.315)
ウ × 判例は、宗教団体における特定の者の宗教活動上の地位の存否を審理、判断するにつき、当該宗教団体の教義ないし信仰の内容に立ち入って、審理、判断することが必要不可欠である場合でも裁判所は、審理、判断することができない。(平成5.9.7)
エ × 原則として国会議員の立法行為が違法の評価を受けるか否かについて裁判所が審理判断することは許されないが、例外的な場合があります。(昭和60.11.21)
その例外的な場合とは、国会議員の行った立法行為が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定しがたいような場合です。
したがって、国会議員の立法行為が違法の評価を受けるか否かについて裁判所が審理判断することは許されないとする点で、本肢は誤っています。
オ 〇 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する(憲法55)
よって国会議員の資格争訟の裁判は立法権に属し、裁判所の審判権は及びません。
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