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司法書士の過去問 令和2年度 午前の部 問26

問題

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詐欺罪に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、どれか。

ア  Aは、病気を治癒する効果のない儀式であるのにその効果があるように装って、Bに対し、その旨うそを言い、儀式料の名目で金員の交付を求めた。その際、Aは、その方法として、Bにおいて、Aから商品を購入したように仮装して信販会社Cとの間で立替払契約を締結し、当該契約に基づき商品購入代金としてCからAに金員を交付させる方法を勧め、Bは、その方法に従って、Aに金員を支払った。この場合において、AのBに対する詐欺罪が成立する。

イ  Aは1万円を持ち、代金を支払うつもりで飲食店に入り、店主Bに対し、700円の定食を注文してその提供を受けたが、食べ終わった後になって代金を支払うのが惜しくなり、Bの隙を見て、何も言わずに店外に出て、代金を支払わないまま逃走した。この場合において、AのBに対する詐欺罪が成立する。

ウ  Aは、Bから、「知り合いのCから自由に使ってくれと言われて預かっているクレジットカードだ。10万円以内の買い物なら使用してよい。」と言われ、規約上名義人のみが利用できるC名義のクレジットカードを受け取ったが、実際には、当該クレジットカードは、BがCから窃取したものであった。Aは、Bが窃取したクレジットカードであることに気付かず、Cの口座から確実に代金の決済がされるものと考え、Cに成りすまして当該クレジットカードを支払手段として家電量販店店員Dに示し、代金8万円のスマートフォン1台を購入してその交付を受けた。この場合において、AのDに対する詐欺罪は成立しない。

エ  Aは、第三者に売り渡すつもりで甲銀行の預金通帳を入手しようと考え、甲銀行乙支店に赴き、行員Bに対し、その意図を秘して自己名義の預金口座の開設並びに口座開設に伴う自己名義の預金通帳の交付を申し込み、BからA名義の預金通帳の交付を受けた。甲銀行では、預金口座開設等の申込時、契約者に対して、規定により通帳名義人以外の第三者に預金通帳を譲渡、質入れ又は利用させるなどすることを禁止していた。この場合において、AのBに対する詐欺罪が成立する。

オ  Aは、甲銀行乙支店に開設した自己名義の預金口座の残高が全くないことを知りながら、入出金履歴を通帳に記帳した際、当該預金口座の残高が100万円になっていたことから、入出金状況を調べてみると、全く身に覚えのないBから100万円が振り込まれており、Bが誤って振り込んだものであることに気付いた。Aは、この100万円を自分のものにしてしまおうと考え、甲銀行乙支店に赴き、その意図を秘して、行員Cに対し、当該預金口座からの100万円の払戻しを請求し、Cから100万円の交付を受けた。この場合において、AのCに対する詐欺罪は成立しない。
   1 .
アウ
   2 .
アエ
   3 .
イウ
   4 .
イオ
   5 .
エオ
( 令和2年度 司法書士試験 午前の部 問26 )
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この過去問の解説 (3件)

7

正解:2

<解説>

ア:正しいです。

AとBが商品売買を仮装してCに立替金を交付させた行為が、Cに対する詐欺罪を構成するかどうかにかかわらず、AのBに対する行為は、詐欺罪を構成します(最決平15・12・9刑集57・11・1088)。

したがって、本肢は正しいです。

イ:誤りです。

AのBに対する詐欺罪(刑法246条)が成立するには、欺罔行為をなし、Bに債務免除の意思表示をさせることが必要であるから、単に逃走して事実上支払いをしなかっただけでは足りません(最決昭30・7・7刑集9・9・1856)。

したがって、本肢は誤りです。

ウ:誤りです。

判例は、「規約上、名義人のみが使用できることとされ、加盟店にも利用者が本人であることの確認義務が定められているクレジットカードについて、他人名義のカードの所持者が名義人に成り済まし、正当な利用権限がある旨従業員を誤信させて商品を購入する行為は、(加盟店に対する)詐欺罪を構成する。行為者が、カードの名義人からカード使用を許されており同人において決済もなされると誤信していたとしても同様である。」(最決平16・2・9刑集58・2・89)としています。

これにより、本肢の場合、AのDに対する詐欺罪が成立します。

したがって、本肢は誤りです。

エ:正しいです。

判例は、「預金契約に関する権利、通帳等の第三者への譲渡等を禁止する預金約款の下では、預金口座の開設、預金通帳及びキャッシュカードの交付を銀行員に申し込むことは、これを自分自身で利用する意思を表しているといえるから、預金通帳及びキャッシュカードを第三者に譲渡する意図を秘して右申込みを行う行為は人を欺く行為に当たり、これにより通帳等の交付を受ける行為は詐欺罪を構成する。」(最決平19・7・17刑集61・5・521)としています。

したがって、この場合において、AのBに対する詐欺罪が成立します。

よって、本肢は正しいです。

オ:誤りです。

判例は、「銀行と預金取引を行っている者には、自己の口座誤振込みがあったことを知った場合にこれを銀行に告知すべき信義則上の義務があるから、誤振り込みがあったことを秘して預金の払戻しを請求することは、詐欺罪の欺罔行為に当たる。」(最決平15・3・12刑集57・3・322)としています。

これより、AのCに対する詐欺罪は成立します。

したがって、本肢は誤りです。

以上により、正しいものは肢ア・エであり、正解は2となります。

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5
正解は2です。詐欺罪が成立するためには、人を欺いて財物を交付させること、または人を欺いて財産上の不法の利益を得ることが必要です。構成要件としては、➀相手方を錯誤に陥らせるような欺罔行為、②相手方の錯誤、③相手方の錯誤の結果、財産の処分行為があること、➃相手方からの財産の移転、が必要です。

ア…正しいです。AがBから儀式料名目で金員を詐取し、その際BがAから商品を購入したように仮装し、信販業者Cとの間で立替払い契約を締結し、当該契約に基づき商品購入代金としてCからAに金員を交付させ儀式料を支払った場合には、AおよびBの行為がCに対する詐欺罪を構成するかどうかにかかわらず、AのBに対する詐欺罪が成立します(最判平15・12・9)。

イ…誤りです。店主Bは代金が支払われる前提で飲食物を提供していますので、相手方の錯誤と錯誤に基づく財産上の利益の移転は認められます。しかし、Aは当初代金を払うつもりであり、また代金を支払うように見せかけたなどの欺罔行為がないため、詐欺罪は成立しません。なお、他人の占有を奪ったわけでもないので、窃盗罪も成立しません。

ウ…誤りです。規約上、カードの名義人のみが利用できるとされている他人名義のクレジットカードを、名義人本人になりすまして、当該カードの使用権限があるかのように装い、その旨従業員を誤信させてガソリンの交付を受けた被告人の行為は詐欺罪に値し、仮に被告人が名義人からクレジットカードの使用を許されており、かつ、自己の使用に係るクレジットカードの利用代金が名義人において決済されるものと誤信していたとしても詐欺罪の成立には影響しません(最判平16・2・9)。本問でもAはクレジットカードの使用について、権限を授与されたと思っていますが、カードの名義人がCであることは認識しており、名義人Cになりすましたことで詐欺罪が成立するといえます。

エ…正しいです。Aが預金通帳を第三者に譲渡する目的で、甲銀行の銀行員Bに対し、自己名義の預金口座の開設ならびに口座開設に伴う自己名義の預金通帳の交付を受けた場合において、甲銀行では通帳の第三者への譲渡を禁ずる総合口座取引規定があったこと、銀行員BはAが通帳を譲渡する目的であったら口座開設および通帳の交付をしなかったこと、などの事実の下においては、Aが自分で口座開設を申し込むこと自体、自分での利用を前提としていると考えることができ、第三者への通帳の譲渡の意図を隠して口座開設を申し込んだことは、詐欺における人を欺く行為に当たるとされます(最判平19・7・17)。

オ…誤りです。Bによる誤った振込があったことを知った受取人Aが、その情報を秘して銀行員Cから払戻しを受けた際には、詐欺罪が成立します(最判平15・3・12)。誤った振込でも、受取人は銀行に対し振込額に相当する普通預金債権を得るとされていますが、その一方、誤った振込依頼とみられる振込に対しては、振込依頼人および受取人から指摘を受けた場合、振込前の状態に戻すことができる措置があるので、当該指摘をしなかった受取人は、信義則上の義務に反し、銀行に対して欺罔行為をはたらいたといえるためです。

4

正解 2

ア 正しい
判例(最決平成15年12月9日)は、本肢と同様の事案において、「甲が乙から儀式料名下に金員を詐取するに当たり、甲の意を受けた乙において、甲から商品を購入したように仮装して信販業者丙との間で立替払契約を締結し、同契約に基づき商品購入代金として丙から甲に金員を交付させる方法により儀式料を支払った場合には、甲及び乙の丙に対する行為が詐欺罪を構成するかどうかにかかわらず、甲の乙に対する行為は詐欺罪を構成する。」としています。

イ 誤り
隙を見て逃げ出すだけでは、何らの欺罔行為も行っておらず、詐欺罪は成立しません。
本肢は利益窃盗であり、不可罰となります。

ウ 誤り
判例(最決平成16年2月9日)は、クレジットカードの規約上、会員である名義人のみがカードを利用でき、加盟店に対しカードの利用者が会員本人であることの確認義務が課されている場合には、カードの名義人になりすましカードを利用して商品を購入する行為は、仮に、利用代金が名義人において決済されるものと誤信していたとしても、詐欺罪にあたるとしています。

エ 正しい
判例(最決平成19年7月17日)は、銀行の規定により、通帳等を名義人以外の第三者に譲渡等することを禁止し、また、Aに応対した行員は、第三者への譲渡目的で預金口座の開設や預金通帳等の交付を申し込んでいることがわかれば、これに応じることはなかったという事実関係の下において詐欺罪の成立を認めています。

オ 誤り
判例(最決平成15年3月12日)は、自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、銀行に当該振込みの過誤の有無に関して振込依頼人に対する照会を行う等の措置を講じさせるため、誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があるとし、本肢のような場合には、詐欺罪が成立するとしています。

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