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司法書士の過去問 令和2年度 午前の部 問25

問題

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未遂に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、どれか。

ア  Aは、満員電車の車内で、目の前に立っているBのズボンの尻ポケットから現金がのぞいているのに目をつけ、それをすり取ろうとして尻ポケットに右手を差し伸べ尻ポケットの外側に触れた。この時点において、Aには窃盗罪の実行の着手が認められ、窃盗未遂罪が成立する。

イ  Aは、Bを殺害しようと考え、コンビニエンスストアに行き、致死性の毒物を混入した砂糖を梱包した小包を宅配便でB方に発送するための手続をし、店員にその小包を手渡した。この時点において、Aには殺人罪の実行の着手が認められ、殺人未遂罪が成立する。

ウ  Aは、B方に電話をかけ、Bに対し、「Bの孫がトラブルに巻き込まれており、その解決のために至急100万円が必要となるので、これからB方を訪ねる者に100万円を渡してほしい。」旨うそを言った。Bは、詐欺ではないかと疑い、警察に通報したところ、警察官から捜査協力を依頼され、そのままだまされたふりをし、B方を訪ねてくる者を待った。Bが警察官からの協力依頼を引き受けた後、Aは、Cに対し、B方に行ってBから現金を受け取ってくれば報酬を支払う旨申し向け、Cは、詐欺の被害金を受け取る役割を担う認識でB方に赴いたところ、周囲で警戒していた警察官に発見された。この場合において、Cには、詐欺未遂罪の共同正犯は成立しない。

エ  Aは、Bに対する強制性交を企て、深夜、B方に侵入し、就寝中のBに馬乗りになった上、目を覚ましたBに対し、持っていたナイフを示し、「騒いだら殺すぞ。」などと申し向けて脅迫し、その反抗を抑圧した状態で、Bの陰部に指を挿入したところ、手が血に染まったので驚愕し、強制性交を中止してB方から立ち去った。この場合において、Aには、強制性交等未遂罪の中止未遂が成立する。

オ  Aは、Bの住居に放火するため、その外壁付近に枯れ木を積み上げて着火したところ、想像以上の火勢となったため驚愕し、Bの住居の隣家であるC方の庭先に居合わせたCと目が合い、Cに対し、「放火したのであとは頼む。」旨伝えてその場から逃走した。その後、Cは、Bの住居に火が燃え移る前に火を消し止めた。この場合において、Aには、現住建造物等放火未遂罪の中止未遂は成立しない。
   1 .
アイ
   2 .
アオ
   3 .
イウ
   4 .
ウエ
   5 .
エオ
( 令和2年度 司法書士試験 午前の部 問25 )
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この過去問の解説 (3件)

5

正解:2

<解説>

ア:正しいです。

窃盗罪(刑法235条)は未遂犯も処罰されますが(刑法243条)、現金をすり取ろうとして被害者のズボンのポケットの外側に触れた以上実行の着手が認められ、窃盗未遂罪が成立します(最決昭29・5・6刑集8・5・634)。

したがって、本肢は正しいです。

イ:誤りです。

隔離犯の実行の着手については、「殺人の目的で、毒薬を混入した砂糖を郵送した事案においては、相手方がこれを受領したときに、同人又はその家族の食用し得べき状態の下に置かれたことになり、殺人の着手がある。」(大判大7・11・16刑百Ⅰ[6]65)との判例があり到達主義を採っています。

以上により、本肢の時点において、Aには殺人罪の実行の着手は認められず、殺人未遂罪は成立しないことになります。

したがって、本肢は誤りです。

ウ:誤りです。

共犯者による欺罔行為がされた後に、だまされたふり作戦が開始されたことを認識せず、共犯者と共謀して詐欺を完遂する目的で受領行為に関与した場合は、だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず、詐欺未遂罪(刑法246条①、250条)の共同正犯(刑法60条)が成立します(最決平29・12・11刑集71・10・535)。

したがって、本肢は誤りです。

エ:誤りです。

中止未遂は、自己の意思により犯罪を中止したときのことをいいます(刑法43条ただし書)。

その要件として、外部的障害の原因が存しないにもかかわらず、内部的原因により任意に実行を中止し、若しくは結果の発生を防止することを要しています(大判昭11・3・6)。

また、判例は、強制性交を企て、陰部に指を挿入したところ、手が血に染まり驚愕して中止した場合は、中止犯は成立しない(最判昭24・7・9刑集3・8・1174)としていることから、本肢の場合も強制性交等未遂罪の中止未遂は成立しません。

したがって、本肢は誤りです。

オ:正しいです。

判例は、「犯人自身が結果発生の防止に自ら当たらないときは、犯人自身が防止に当たったのと同視するに足るべき程度の努力を払うことを要し、放火犯が、放火したからよろしく頼むと叫びながら走り去った場合、中止犯は成立しない。」(大判昭12・6・25日刑集16・998)としています。

このことから、本肢の場合、Aには、現住建造物等放火未遂罪(刑法108条、112条)の中止未遂は成立しません。

したがって、本肢は正しいです。

以上により、正しいものは、肢ア・オであり、正解は2となります。

付箋メモを残すことが出来ます。
5

正解 2

ア 正しい
判例(最決昭和29年5月6日)は、被害者が金品を所持していることを知りつつ、窃取しようと手を伸ばし、ズボンのポケットの外側に触れた事案において、窃盗の実行の着手が認められるとしています。

イ 誤り
判例(大判大7年11月16日)は、毒を混入した白砂糖を郵送小包で送付し、相手方はこれを受領したが異常に気付き食べなかったという事案において、相手方がこれを受領したときに、殺人の実行の着手があるとしています。
したがって、本肢のように、毒物を混入した砂糖を梱包した小包をコンビニエンスストアの店員に手渡しただけでは殺人の実行の着手があったとはいえません。

ウ 誤り
判例(最決平成29年12月11日)は、本肢と同様の事案において、「被告人は、本件詐欺につき、共犯者による本件欺罔行為がされた後、だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに、共犯者らと共謀の上、本件詐欺を完遂する上で本件欺罔行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している。そうすると、だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず、被告人は,その加功前の本件欺罔行為の点も含めた本件詐欺につき、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。」としています。

エ 誤り
中止未遂に必要とされる任意性につき、判例は、実質的には一般人を基準に「通常障害となるか否か」を判断しているものと解されています(最判昭和24年7月9日)。
Bの陰部に指を挿入したところ、手が血に染まったことに驚愕して犯行を中止することは、一般の通例であるといえ、任意性を肯定することはできません。

オ 正しい
判例(大判昭和12年6月25日)は、中止犯は、結果発生の防止は必ずしも犯人が単独で行わなければならないものではないが、少なくとも犯人自身が防止行為をしたのと同視し得る程度の真摯な努力を行うことを必要としています。
本肢では、Aは放火して想像以上の火勢となっているにもかかわらず、Cに対し「あとは頼む。」と告げたのみであり、A自身が結果発生の防止を行ったのと同視するに足るべき程度の努力を行ったとはいえず、中止未遂は成立しません。

5
正解は2です。未遂犯に関しては、「実行の着手」があったかどうか、中止犯(中止未遂犯)に関しては、犯行を中止した動機に「悔悟の念」等があるかどうか、中止した後に「真摯な努力」に基づき犯罪結果の防止をはかったかどうか、などが争点になります(判例等)。

ア…正しいです。現金をすりとる目的で、あたり行為でなく、尻ポケットを狙い、尻ポケットの外側に触れた場合、窃盗に着手したものとみなされるという判例があります(最判昭29・5・6)。

イ…誤りです。毒入りの砂糖を郵送して殺人をはかった事件において、それが「飲食し得うべき状態」に置かれた時点で、「実行の着手」があったものということができ、殺人未遂罪の間接正犯が成立する、とした判例があります(大審院大7・11・16、毒入り砂糖郵送事件)。これに従えば、本問において、Aが、B宛に毒入りの食物を郵送した時点では、まだ殺人未遂罪は成立しないといえます。

ウ…誤りです。犯人Aが、被害者Bに「宝くじに当選したが、不正をしたためその違約金を支払う必要がある」と電話をし、不審に思ったAが警察官に相談の上、だまされたふり作戦を行い、Aから発送された現金に見せかけた空箱を受け取ったCが逮捕された事件において、CはAによる欺罔行為がされた後、共犯者らと共謀の上、本件詐欺を完遂する上で本件欺罔行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与しており、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと考えられるとした判例があります(最判平29・12・11)。本問におけるCも同様に、被害者がだまされておらず、詐欺の損害が発生していなかったとしても、Cによる現金の受け取りがなければ詐欺行為が発生しないため、詐欺未遂の共同正犯になると考えられます。

エ…誤りです。犯人Aが強姦目的で被害者Bに暴行を加え、人事不省に陥らせて姦淫しようとしたが、陰部に差し込んだ指が血に染まったので驚愕し、姦淫を思いとどまった事件において、犯罪の実行に着手した後、驚愕によって犯行を中止した場合においても、その驚愕の原因となった諸般の状況が、被告人の犯意の遂行を思い止まらしめる障碍の事情として客観性のあるものと認められるときは、障碍未遂であって中止未遂ではないとした判例があります(最判昭24・7・9)。本問でも、Aは驚愕したため犯行を中止しただけであり、自己の行為に対する反省があったわけではありませんので、中止未遂犯にはならないと考えられます。

オ…正しいです。Aが、Bの住居に放火するため、着火したところ、想像以上に火が広がったので驚愕し、たまたま居合わせたCに「放火したのであとは頼む」旨を言い置いて、Cが住居に火が移る前に消し止めた事件において、中止未遂があったとみなされるためには、少なくとも犯人自らが消火活動にあたったと同視するに足るべき努力を払ったことが必要であるとされた判例があります(大判昭12・6・25)。他人に消火を頼んだだけでは、危険(家屋の滅失)を消滅させることに直接結びつく行動をしたとは言いがたいため、中止未遂犯は認められません。

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