司法書士の過去問
令和3年度
午前の部 問8
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問題
令和3年度 司法書士試験 午前の部 問8 (訂正依頼・報告はこちら)
物権変動に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せはどれか。
ア AがB所有の甲土地をBに無断でCに売却し、その後、AがBから甲土地を購入した場合には、Cは、Aから甲土地を購入した時点に遡って甲土地の所有権を取得する。
イ Aが甲土地上の立木の所有権を留保して甲土地をBに売却し、その後、BがCに甲土地及びその上の立木を売却した場合には、Aは、Cに対し、立木の所有権の留保につき登記や明認方法を備えない限り、立木の所有権を主張することができない。
ウ Aが、A所有の動産甲をBに売り渡し、Bの寄託によりこれを保管している場合において、BがCに動産甲を売却したときは、Cは、その引渡しを受けていなかったとしても、Aに対し、動産甲の所有権を主張することができる。
エ Aが、B所有の甲土地につき、売買契約を締結していないのに、書類を偽造してAへの所有権の移転の登記をした上で、甲土地をCに売却してその旨の登記をした場合において、その後、BがDに甲土地を売却したときは、Dは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができない。
オ Aが、倉庫に寄託中のA所有の動産甲を、約定日時までに代金を支払わないときは契約が失効する旨の解除条件付きでBに売却した場合には、Bは、売買契約が締結された時点で動産甲の所有権を当然に取得する。
ア AがB所有の甲土地をBに無断でCに売却し、その後、AがBから甲土地を購入した場合には、Cは、Aから甲土地を購入した時点に遡って甲土地の所有権を取得する。
イ Aが甲土地上の立木の所有権を留保して甲土地をBに売却し、その後、BがCに甲土地及びその上の立木を売却した場合には、Aは、Cに対し、立木の所有権の留保につき登記や明認方法を備えない限り、立木の所有権を主張することができない。
ウ Aが、A所有の動産甲をBに売り渡し、Bの寄託によりこれを保管している場合において、BがCに動産甲を売却したときは、Cは、その引渡しを受けていなかったとしても、Aに対し、動産甲の所有権を主張することができる。
エ Aが、B所有の甲土地につき、売買契約を締結していないのに、書類を偽造してAへの所有権の移転の登記をした上で、甲土地をCに売却してその旨の登記をした場合において、その後、BがDに甲土地を売却したときは、Dは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができない。
オ Aが、倉庫に寄託中のA所有の動産甲を、約定日時までに代金を支払わないときは契約が失効する旨の解除条件付きでBに売却した場合には、Bは、売買契約が締結された時点で動産甲の所有権を当然に取得する。
- アイ
- アオ
- イウ
- ウエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア × 所有権は、その移転を阻害する法律上の障害がある場合には、その障害がなくなったときに当然に移転する。
そのため、他人物の売買の場合には、特段の特定ないし意思表示がない限り、
売り主が後日目的物の所有権を取得し処分権限を有するに至ったときに、
所有権移転を阻害する法律上の障害がなくなったものとして、
買主に当然に所有権が移転することになる(最判昭40.11.19)。
よってAがBから甲土地を購入した時点で、Cが甲土地の所有権を取得します。
イ 〇 立木について立木法による登記をするか又は明認方法を施さなければ、立木所有権の留保を第三者に対抗することはできない。(最判昭和34.8.7)
よって、AはCに対し立木の所有権の留保につき、立木法による登記や明認方法を備えない限り、立木所有権を主張できません。
ウ 〇 動産の寄託を受け、一時適に保管をしているにすぎない者は民法178条の第三者に該当しない(最判昭和29.8.31)。
よって、CはBから動産甲の引渡しを受けていなかったとしても、Aに対し動産甲の所有権を主張できます。
エ × 本肢を一言でまとめると、無権利者からの転得者もまた無権利者である。ということです。
不動産について実体上所有権を取得した者は、登記記録上、所有者として表示されているにすぎない無権利者、無権利者から物権を取得した者等に対し、その所有権の取得を登記なくして対抗することができる(最判昭和34.2.12)。
よって、BからB所有の甲土地の所有権を譲り受けたDは、登記なくして無権利者Aから甲土地を売却されたCに対し、甲土地の所有権を主張することができます。
オ × 倉庫に寄託中の動産売買契約において、特約により、指定の日時までに代金を支払わないときは契約が失効するという内容の解除条件が付されている場合、契約の締結時に当然に所有権が買主に移転するものではないとされています(最判昭35・3・22)。
売買代金を支払ったときに所有権が移転します。
つまり同時履行と考えるのが常識ですよね。
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02
正解は3です。
ア…誤りです。売主が第三者所有の特定物を売り渡した後、当該特定物の所有権を取得した場合には、買主への所有権移転の時期・方法について特段の約定がない限り、なんらの意思表示がなくても、当該特定物の所有権は、売主の所有権取得と同時に、買主へと移転します(最判昭40・11・19)。
イ…正しいです。土地の所有権を移転するにあたり、土地上の立木の所有権を当事者間の合意により留保した場合、立木の所有者は、立木登記や立木への明認方法を施さない限り、土地の権利を取得した第三者に立木の所有権を対抗できません(最判昭34・8・7)。当該第三者は無権利ですが、留保も物権変動の一つとされ、また、明認方法等がない限り、第三者が所有権留保の事実を知ることができないため、第三者保護の観点から所有権の明示を必要としています。
ウ…正しいです。動産の寄託を受け、一時これを保管しているに過ぎない者は、民法178条の第三者に該当しません(最判昭29・8・31)。受託者(本問のA)は、寄託者(本問のB)から第三者(本問のC)への譲渡を否認するにつき正当の利害関係を有しないので、Cは動産の引渡しを受けていなくてもAに所有権を主張できます。
エ…誤りです。所有権がないのに所有権移転登記の名義人とされている者(本問のC)は、実体上の所有権を取得した真の所有者(本問のD)に対して、登記の欠缺を主張することができず、またその場合、真の所有者は登記名義人に所有権移転登記を請求できるとされています(最判昭34・2・12)。無効な物権変動の登記は当然に無効であり、民法177条に基づく登記名義人の保護はありません。
オ…誤りです。倉庫に寄託中の動産売買契約において、代金を約定日時までに支払わないときは契約が失効するという内容の解除条件が付されている場合、契約の締結時に当然に所有権が買主に移転するものではないとされています(最判昭35・3・22)。
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03
正解 3
ア 誤り
判例(最判昭40年11月19日)は、本肢と同様の事案において、「第三者所有物件(以下、「本件物件」といいます。)の所有権および占有移転の時期、方法につき特段の約定ないし意思表示がない限り、本件物件を無断で売却した売主が本件物件の所有権を取得すると同時に本件物件の買主が本件物件の所有権を取得する。」としています。
イ 正しい
判例(最判昭34年8月7日)は、本肢と同様の事案において、「土地の所有権を移転するにあたり、当事者間の合意によって地上立木の所有権を留保したときは、該留保を公示するに足る方法を講じない以上、これをもってその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗しえないものと解すべきである。」としています。
ウ 正しい
判例(最判昭29年8月31日)は、本肢と同様の事案において、「動産の寄託をうけ一時これを保管しているにすぎない者は、民法178条の第三者に該当しない。」としています。
エ 誤り
判例(最判昭34年2月12日)は、本肢と同様の事案において、「不動産につき実質上所有権を有せず、登記簿上所有者として表示されているにすぎない者は、実体上の所有権を取得した者に対して、登記の欠缺を主張することはできない。」としています。
本肢の場合、Cは、書類を偽造したAから甲土地を買い受けており、甲土地については無権利者となるため、Dは、Cに対し、登記なくして甲土地の所有権を主張することができます。
オ 誤り
判例(最判昭35年3月22日)は、本肢と同様の事案において、「倉庫に寄託中のハンカチーフ売買契約において、代金を約三日後の午後四時限り支払うべし、右支払のないときは契約は失効する旨の解除条件が付されているときは、特段の事情のない限り、右ハンカチーフの所有権を契約により当然買主に移転するものではないと解するのが相当である。」としています。
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