司法書士の過去問
令和3年度
午前の部 問18

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問題

令和3年度 司法書士試験 午前の部 問18 (訂正依頼・報告はこちら)

売買に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せはどれか。

ア  売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものとみなされる。
イ  売主が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求するために、履行の追完の催告をすることを要しない。
ウ  売主が売買の目的物の引渡しを遅滞しているときは、買主に対して現実に目的物の引渡しがされていなくとも、売買の目的物から生じた果実は買主に帰属する。
エ  売主が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合であっても、売主の責めに帰すべき事由がないときは、買主は、その不適合を理由として、当該売買契約の解除をすることができない。
オ  売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合であっても、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなかったときは、売主がその引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときを除き、買主は、その不適合を理由として、損害賠償の請求をすることができない。
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  • アオ
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  • イオ
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この過去問の解説 (3件)

01

ア × 本肢は「推定される」or「みなされる」の区別問題です。

売買の目的物の引き渡しについて期限があるときは、代金の支払いについても同一の期限を付したものと推定される(民法573)。

なぜなら、売り主と買主にとって均衡となるからです。

つまり、双務契約である売買は通常同時履行の抗弁権を有するから、売買の目的物引渡債務についてのみ期限の定めがある場合にも、買主の代金支払い債務について同一の期限の定めがあるものと推定するのです。

イ 〇 本肢のキーワードは「明確」です。

原則として、売主から買主への目的物不適合を原因とした代金の減額請求には、履行の追完の催告が必要です。

しかし、例外的に売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示した場合、買主は履行の追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができます(民法563Ⅱ②)。

併せて同条Ⅱを全て熟読しておきましょう。

なお、目的物の契約不適合が買主の責めに帰するべき事由によるものであるときは、買主は、代金の減額の請求をすることはできません。

ウ × まだ引渡しされていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属します。

そして、売主が売買の目的物の引き渡しを遅滞しているときであっても、目的物から生じる果実は、売主に帰属します。

なぜなら、両当事者の法律関係を簡潔にし、公平を図ろうとしたものだからです。

よって本肢は、買主に帰属するという点が誤っています。

エ × 原則として、売主は無過失責任を負っています。

引き渡された目的物が種類、品質または数量に関し契約の内容に適合しない場合の解除については、債務不履行の一般規定に委ねられており、売主の帰責事由は問われません。

よって本肢は、売り主の責めに帰すべき事由がないときは、買主はその不適合を理由として、当該売買契約の解除をすることができないとする点が誤っています。

オ 〇 本肢を一言でまとめると、買主は目的物について瑕疵を知った場合は早く売り主に知らせないと何にも請求できなくなりますよ。ということです。

売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、

買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、

売り主が引渡しのときにその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときを除き、

買主はその不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができません(民法566)。

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02

正解 4

ア 誤り

売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定されます(民法573条)。

代金の支払についても同一の期限を付したものとみなされるとしている点で本肢は誤りです。

イ 正しい

売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したときは、買主は、履行の追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができます(民法563条2項2号)。

ウ 誤り

判例(大連判大13年9月24日)は、本肢と類似の事案において、「売主は、目的物の引渡しを遅滞している場合でも、引渡しまでこれを使用し果実を取得し得る。」としています。

エ 誤り

契約不適合の規定は、541条及び542条の規定による解除権の行使を妨げないとされています(民法564条)。

そして、解除は、契約の拘束力から債務不履行をされた債権者を解放するための制度であるから、売主の帰責性は要件とされていません。

オ 正しい

売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、損害賠償の請求をすることができません(民法566条)。

もっとも、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、損害賠償を請求することが可能です(同条但書き)。

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03

正解は4です。

ア…誤りです。売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払時期についても、同一の時期を付したものと「推定され」ます(573条)。

イ…正しいです。売主から買主への目的物不適合を原因とした代金の減額請求には、原則として履行の追完の催告が必要です。しかし、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示した場合、買主は履行の追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができます(563条2項2号)。

ウ…誤りです。売買の目的物から生じた果実は、その目的物の引渡し前は、売主に帰属します(575条1項)。引渡しに遅滞があっても、果実が買主に帰属することはありません(大判大13・9・24)。またその代わり、引渡しの遅滞が生じている間、買主は代金の利息を支払う必要がありません(575条2項)。

エ…誤りです。売買契約の目的物が不適合なものであり、その不適合を原因として、債務不履行または履行不能が認められる場合、または契約の目的を達せられないと認められる場合、もしくは売主が履行の追完を拒絶したとみられる場合には、買主側から契約の解除ができます(564条、541条、542条)。ただし、売主の責めに帰すべき事由がないときは、損害賠償の請求ができません(564条、415条1項ただし書)。

オ…正しいです。売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができませんが、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りではありません(566条)。

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