司法書士の過去問
令和3年度
午前の部 問29
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問題
令和3年度 司法書士試験 午前の部 問29 (訂正依頼・報告はこちら)
新株予約権に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 株式会社が自己の新株予約権を取得した場合には、当該新株予約権は、当該株式会社がこれを取得した時に、消滅する。
- 募集新株予約権の割当てを受けた申込者は、払込期日に当該募集新株予約権の新株予約権者となる。
- 譲渡制限新株予約権の新株予約権者が、その有する譲渡制限新株予約権を他人に譲り渡すことについて、その株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限新株予約権を取得することについて承認するか否かの決定をすることを請求する場合において、当該株式会社が当該承認をしない旨の決定をするときであっても、当該新株予約権者は、当該株式会社に対し、当該株式会社又は指定買取人が当該譲渡制限新株予約権を買い取ることを請求することはできない。
- 募集新株予約権の発行が法令若しくは定款に違反する場合又は著しく不公正な方法により行われる場合において、株主及び新株予約権者が不利益を受けるおそれがあるときは、株主及び新株予約権者は、株式会社に対し、当該募集新株予約権の発行の差止めを求める訴えを提起することができる。
- 新株予約権者が、株式会社の承諾を得て、募集新株予約権と引換えに払い込む金銭の払込みに代えて、払込金額に相当する金銭以外の財産を給付した場合には、当該株式会社は、当該財産の給付があった後、遅滞なく、当該財産の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。
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この過去問の解説 (3件)
01
1 × 株式会社が自己新株予約券を取得した時に当然に消滅すると勘違いされている方が多いですが、消滅しません。
なぜなら株式会社の資産として自己株式や自己新株予約権を所有することができるからです。
もし、取得と同時に消滅してしまうと自己株式や自己新株予約権という概念が無くなります。
ちなみに、株式会社が自己新株予約権の消却の手続きを執ることによって消滅します。
2 × 結論から申し上げますと、割当日に新株予約権者になります。
まだ、行使段階ではないので払込は必要ないのです。
3 〇 結論から申し上げますと、株式とは異なり、譲渡制限付新株予約権に買い取り請求という概念はありません。
なぜなら、新株予約権は投下資本の回収の要請は強くなく(無償の新株予約権が多い)、新株予約権の行使後に株式を譲渡することができるからです。
4 × 結論から申し上げますと、募集新株予約権の発行の差し止めを請求できる者は株主です。
イメージとしては株主が主役で、新株予約権者は脇役にすぎません。
①募集新株予約権の発行が法令又は定款に違反する場合、②募集新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合、において株主が不利益を受ける恐れがあるときは、株主は、株式会社に対し当該募集新株予約権の発行をやめることを請求することができます。(会社247)
5 × 新株予約権は行使段階が非常に重要です。
なぜなら、行使の段階で始めて資本金に計上されますから。
逆に新株予約権を発行する段階は軽視されています。
つまり、新株予約権は2段階に分かれていることを覚えておいてください。
新株予約権割当→新株予約権行使
株式会社は、金銭以外の財産を新株予約権の行使に際してする出資の目的とする旨の定めがある新株予約権が行使された場合、当該財産の給付があった後、遅滞なく、当該財産の価格を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申し立てをしなければなりません。(会社284)
逆に募集新株予約権を発行する場合において、新株予約権者が金銭以外の財産を給付した時には、裁判所に対し、検査役の選任の申し立てをすることを要しません。
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02
正解 3
1 誤り
株式会社は、自己新株予約権を取得した場合、当該新株予約権を消却することができるのであって(会社法276条1項)、取得した時に消滅するわけではありません。
2 誤り
株式会社から募集新株予約権の割当てを受けた者は、割当日に募集新株予約権の新株予約権者となります(会社法245条1項1号)。
3 正しい
株式会社が譲渡制限新株予約権の譲渡を承認しない旨の決定をする場合、新株予約権者は、株主が譲渡制限株式の譲渡承認を請求する場合と異なり、当該株式会社又は買取指定人が当該譲渡制限新株予約権を買い取るよう請求することはできません(会社法138条1号ハ、同140条参照)。
4 誤り
募集新株予約権の発行の差止めを求める訴え(会社法247条)を提起することができるのは、当該募集新株予約権の発行によって不利益を受けるおそれのある株主です。
株主だけでなく既存の新株予約権者も不利益を受ける場合はあり得ますが、新株予約権者のままでは、募集新株予約権の発行の差止めを請求することはできません。
5 誤り
新株予約権者が、株式会社の承諾を得て、募集新株予約権と引換えに払い込む金銭の払込みに代えて、払込金額に相当する金銭以外の財産を給付した場合であっても、当該会社は、当該財産の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをする必要はありません(会社法284条1項参照)。
なお、新株予約権の行使にあたり現物出資がされる場合には、検査役の選任を申し立てなければなりません。
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03
正解は3です。
1.…誤りです。株式会社は、自己新株予約権を取得した場合、任意の時点で取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会決議)により、当該新株予約権を「消却」することができます(276条1項)。ただし、自己新株予約権であるか否かに関わらず、新株予約権の行使期間の満了等により新株予約権を行使できなくなったときは、当該新株予約権は消滅します(287条)。
2.…誤りです。募集新株予約権の割当てを受けた申込者は、募集事項において決定された割当日に新株予約権者となります(245条1項1号、238条1項4号)。
3.…正しいです。譲渡制限付新株予約権の新株予約権者が、譲渡承認請求をし、会社がこれを不承認とした場合においても、(譲渡制限株式の場合と異なり)当該会社に対し当該会社または指定買取人が新株予約権を買い取るよう請求することはできません(262条、266条、H23過去問参照)。当該新株予約権者は、新株予約権の譲渡が不承認とされた後も、新株予約権の行使後に株式として譲渡承認請求を行うことができ、不承認の場合はこれを会社が買取るため(136条、140条)、新株予約権の買取請求を認める意義に乏しいからです。
4.…誤りです。募集新株予約権の発行が法令もしくは定款に違反する場合、または著しく不公正な方法により行われる場合において、「株主」が不利益を受けるおそれがあるときは、「株主」は株式会社に対し、募集新株予約権の発行をやめることを請求することができます(247条1号、2号)。
5.…誤りです。新株予約権者が、募集新株予約権と引換に払い込む金銭の払込みに代えて、払込金額に相当する金銭以外の財産を給付した場合でも、(募集株式の場合と異なり)検査役の調査は不要です(246条2項参照)。新株予約権は、その発行時には株式に対する債権でしかないためです。実際に株式を取得するのは新株予約権の行使時であり、このときに金銭以外の財産を出資する場合は、検査役の調査が行われます(284条1項)。
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