司法書士の過去問
令和3年度
午前の部 問34

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問題

令和3年度 司法書士試験 午前の部 問34 (訂正依頼・報告はこちら)

会社の公告に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア  会社は、公告方法を電子公告とする場合には、定款で、電子公告を公告方法とする旨の定めのほか、電子公告に用いるウェブサイトのアドレスも定めなければならない。
イ  臨時株主総会における議決権の行使に関する基準日を定めた株式会社が電子公告により当該基準日に関する事項の公告をした場合において、電子公告調査を求めることを怠ったときは、当該公告は、その効力を生じない。
ウ  株式会社が資本金の額の減少をする場合には、当該株式会社は、その定款で電子公告を公告方法とする旨を定めているときであっても、官報による公告をしなければならない。
エ  定款で公告方法を時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法とする旨を定める会社は、事故その他やむを得ない事由によってこの方法による公告をすることができない場合の公告方法として、官報に掲載する方法又は電子公告のいずれかを定めることができる。
オ  会社は、公告方法として、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法を定款で定める場合に、「A新聞又はB新聞」と定めることはできない。
  • アイ
  • アウ
  • イエ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解 4

ア 誤り

会社が公告方法を電子公告とする場合には、定款で電子公告を公告方法とする旨を定めれば足り(会社法939条3項)、電子公告に用いるウェブサイトのアドレスまでも定める必要はありません。

ウェブサイトのアドレスは、当該サイトを管理運営する者の事情で変更することがあり、その都度会社に定款変更の手続を求めることは、会社にとって負担になるからです。

イ 誤り

この法律又は他の法律の規定による公告を電子公告によりしようとする会社は、公告期間中、当該公告の内容である情報が不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置かれているかどうかについて、法務省令で定めるところにより、法務大臣の登録を受けた者に対し、調査を行うことを求めなければなりません(会社法941条)。

もっとも、ここでいう電子公告調査は、電子公告が適法に行われたことを証明するための客観的な証拠を残すための制度であり、公告行為自体の要素ではありません。

そのため、会社が電子公告調査を受けずに公告を行ったとしても、そのことが公告を無効たらしめるわけではないと解されています。

ウ 正しい

株式会社が資本金の額の減少をする場合、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができます(会社法449条1項)。

この場合、当該株式会社は、公告方法に関する定款の定めにかかわらず、官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければなりません(同条2項)。

エ 誤り

会社が電子公告を公告方法とする旨を定款で定める場合においては、事故その他やむを得ない事由によってこの方法による公告をすることができない場合の公告方法として、官報に掲載する方法又は時事に関する事項を記載する日刊新聞紙に掲載する方法のいずれかを定めることができます(会社法939条3項)。

しかし、官報に掲載する方法又は時事に関する事項を記載する日刊新聞紙に掲載する方法を公告方法とする旨を定めている会社について、このような予備的な公告方法を定めることができる旨の規定はありません。

オ 正しい

時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法を公告方法として定款で定める場合には、併せて紙名を定めることが必要です。

この場合、複数の紙名を定めることは可能ですが、本肢のように択一的な記載をすることはできません。

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02

正解は4です。

ア…誤りです。電子公告に用いるウェブサイトのアドレスを定款に定める必要はありません。ただし、ウェブサイトのアドレスは登記事項になっていますので(会社法911条3項28号イ、会社法施行規則220条1項2号)、定款に定めない場合は代表取締役または取締役会で当該アドレスを決定しておく必要があります。

イ…誤りです。公告の中断(940条3項)以外で、電子公告が公告として無効になることはありません。合併や資本金の額の減少など、官報による公告を行った上で、電子公告により債権者への各別の催告を省略した場合(会社法799条3項、449条3項など)には、登記の際に、電子公告調査結果書(会社法946条4項)が必要になりますが、基準日に関する事項では結果書も必要とされませんので(会社法124条3項参照)、電子公告調査がなくても登記上も無効になることはないといえます。ただし、電子公告調査を怠った場合、取締役等は100万円以下の過料に処せられます(977条1号)。

ウ…正しいです。株式会社が資本金の額を減少しようとする場合、(当該株式会社が定款に定めた公告方法にかかわらず)当該資本金の額の減少の内容等を官報に公告する必要があります(会社法449条2項)。なお上記イの通り、定款で公告方法に関する定めを、電子公告(または、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法)としている場合には、定款に記載された方法で追加の公告を行うことで、債権者への各別の催告を省略できます(449条3項)。

エ…誤りです。公告方法として、「電子公告」を公告方法とする旨を定款に定めている場合は、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法として、「官報に掲載する方法」または「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」を定款で定めることができます(939条3項)。

オ…正しいです。公告を掲載する日刊新聞紙に関しても、一種または数種の新聞を特定し又は特定できるように定めなければならないため、「A新聞またはB新聞に掲載してする」のように不確定な定めをすることはできません(大5・12・19民1952号回答)。したがって、「A新聞およびB新聞」「A新聞が休刊または廃刊のときはB新聞」のような定め方は可能です。

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03

ア × 会社が公告方法を電子公告とする場合には、定款で電子公告を公告方法とする旨を定めれば足ります。(会社939Ⅲ)

よって電子公告に用いるウェブサイトのアドレスまでも定める必要はありません。

なぜなら、ウェブサイトのアドレスは登記簿に掲載されていますし、ウェブサイトを管理運営する者の事情で変更することがあるからです。

イ × 公告方法を電子公告とする会社は、公告期間中、当該広告の内容である情報が不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置かれているかどうかについて、調査機関に対し調査を求めなければなりません。(会社941)

そして、調査を求めなかった場合には100万円以下の過料に処されます。(会社976)

よって、電子公告調査を求めることを怠ったとしても、過料の制裁があるのみで、効力が生じないわけではありません。

ウ 〇 株式会社が資本金の額の減少をする場合、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができます。(会社449Ⅰ)

株式会社が当該公告を、官報のほか、会社の公告方法の定款の定めに従い、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法又は電子公告による公告方法によりするときは、個別の催告は必要ありません。

なぜなら、二重に公告をしたのですからわざわざ個別に催告する必要はないだろうということです。

従って、公告方法の軸である官報公告は必ずしなければなりません。

エ × 会社が電子公告を公告方法とする旨を定款で定める場合においては、事故その他やむを得ない事由によってこの方法による公告をすることができない場合の公告方法として、官報に掲載する方法又は時事に関する事項を記載する日刊新聞紙に掲載する方法のいずれかを定めることができます。(会社939Ⅲ)

なぜなら、ウェブサイトに掲載することは不確実だからです。(コンピューターウィルス等により)

よって、主軸の公告方法を電子公告としている会社は予備的公告方法を定めることができるのです。

しかし、官報に掲載する方法又は時事に関する事項を記載する日刊新聞紙に掲載する方法を公告方法とする旨を定めている会社について、このような予備的公告方法を定めることができる旨の規定はありません。(日本の政府や大企業はしっかりしているので掲載が確実視されているからです。)

オ 〇 公告方法は、具体的に定められていなければなりません。

なぜなら、株主や利害関係人がどの媒体に公告されているのかをはっきりと判断することができないからです。

よって「A紙又はB紙」のような選択的な定め方をすることはできません。

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