司法書士の過去問
令和4年度
午前の部 問1
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問題
令和4年度 司法書士試験 午前の部 問1 (訂正依頼・報告はこちら)
人格権又は人格的利益に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 名誉を違法に侵害された者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。
イ 人の氏名、肖像等が商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合において、当該顧客吸引力を排他的に利用する権利は、人格権に由来する権利の一内容を構成する。
ウ ある著作者の著作物が公立図書館において閲覧に供されている場合には、当該著作者が当該著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益は、法的保護に値する人格的利益とはいえない。
エ 前科は人の名誉に直接にかかわる事項であり、前科のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する。
オ 人格権や法的保護に値する人格的利益は、その性質上、自然人にのみ認められ、法人には認められない。
ア 名誉を違法に侵害された者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。
イ 人の氏名、肖像等が商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合において、当該顧客吸引力を排他的に利用する権利は、人格権に由来する権利の一内容を構成する。
ウ ある著作者の著作物が公立図書館において閲覧に供されている場合には、当該著作者が当該著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益は、法的保護に値する人格的利益とはいえない。
エ 前科は人の名誉に直接にかかわる事項であり、前科のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する。
オ 人格権や法的保護に値する人格的利益は、その性質上、自然人にのみ認められ、法人には認められない。
- アウ
- アエ
- イエ
- イオ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
基本判例からの出題です。
アは正しいです。北方ジャーナル事件(最判昭61.6.11)。
イは正しいです。ピンクレディ事件(最判平24.2.2)。そのようなパブリシティ権は人格権に由来する権利であることが認められました。
ウは誤りです。本肢の利益は、「法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当」であるとされます(公立図書館職員図書廃棄事件:最判平17.7.14)。
エは正しいです。前科照会事件(最判昭56.4.14)で、最高裁は本肢と同旨のことを述べた上で、「市区町村長が漫然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず、前科のすべてを報告することは」違法であると判断しました。
オは誤りです。法人にも「性質上可能なかぎり」人権享有主体性があります(八幡製鉄政治献金事件:最判昭45.6.24)。そして、人格権や法的保護に値する人格的利益は性質上法人にも認めることができます。
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02
いわゆる人格権についての問題です。憲法の判例では
①基本的に合憲がほとんどで,違憲が少ないこと
②違憲の場合にはどのような理由で違憲となったかということ
の2点を押さえておけば正解に達することができます。
ア・・正しいです。
「石に泳ぐ魚」事件(最判平成14年9月24日,作家の柳美里が被告となった事件)です。
判旨は,「原告の名誉,プライバシー及び名誉感情が侵害され,原告に重大で回復困難な損害を被らせるおそれがあるとして,同小説の出版の差止めを認めた原審の判断には,違法がない」というものです。
本肢は,「侵害行為の差止めを求めることができる。」というものですので,正しいです。
ウ・・誤りです。
最判平成17年7月14日(船橋市西図書館図書廃棄事件)です。
判旨は,「公立図書館の職員である公務員が,閲覧に供されている図書の廃棄について,著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをすることは,当該図書の著作者の人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となる。」というものです。
したがって,「当該著作者が当該著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益は、法的保護に値する人格的利益とはいえない。」という部分が誤りです。
ア・・正しいです。
「石に泳ぐ魚」事件(最判平成14年9月24日,作家の柳美里が被告となった事件)です。
判旨は,「原告の名誉,プライバシー及び名誉感情が侵害され,原告に重大で回復困難な損害を被らせるおそれがあるとして,同小説の出版の差止めを認めた原審の判断には,違法がない」というものです。
本肢は,「侵害行為の差止めを求めることができる。」というものですので,正しいです。
エ・・正しいです。
前科照会事件(最判昭和56年4月14日,京都府弁護士会が京都市中京区長に対し,原告の前科等についての照会を行なって,区長が回答した事件)です。
判旨は,「前科等は,人の名誉,信用に直接かかわる事項であり,前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有している。そして,市区町村長が漫然と弁護士会の照会に応じ,犯罪の種類・軽重を問わず,前科等のすべてを報告することは,公権力の違法な行使に当たる。」というものです。
本肢は,前科がみだりに公開されない法律上保護するに値する利益という内容ですので,正しいです。
イ・・正しいです。
いわゆるピンク・レディー事件(最判平成24年2月2日,ピンク・レディーとは,昭和50年代に一世を風靡した女性2人組の歌手を指します)です。
本件は,出版社がダイエット法を紹介する記事で,ピンク・レディーの振り付けの写真を無断利用したことにより,前記女性2人組が原告,出版社を被告として損害賠償を求めた事件です。
判旨は,「人の氏名,肖像等を無断で使用する行為は,(1)氏名,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,(2)商品等の差別化を図る目的で氏名,肖像等を商品等に付し,(3)氏名,肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら氏名,肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,当該顧客吸引力を排他的に利用する権利(いわゆるパブリシティ権)を侵害するものとして,不法行為法上違法となる」というもので,初めて最高裁において,パブリシティ権を認めました。
本肢は,「人の氏名、肖像等が商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合において、当該顧客吸引力を排他的に利用する権利は、人格権に由来する権利の一内容を構成する。」というものであり,判旨のとおりですから,正しいです。
エ・・正しいです。
前科照会事件(最判昭和56年4月14日,京都府弁護士会が京都市中京区長に対し,原告の前科等についての照会を行なって,区長が回答した事件)です。
判旨は,「前科等は,人の名誉,信用に直接かかわる事項であり,前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有している。そして,市区町村長が漫然と弁護士会の照会に応じ,犯罪の種類・軽重を問わず,前科等のすべてを報告することは,公権力の違法な行使に当たる。」というものです。
本肢は,前科がみだりに公開されない法律上保護するに値する利益という内容ですので,正しいです。
イ・・正しいです。
いわゆるピンク・レディー事件(最判平成24年2月2日,ピンク・レディーとは,昭和50年代に一世を風靡した女性2人組の歌手を指します)です。
本件は,出版社がダイエット法を紹介する記事で,ピンク・レディーの振り付けの写真を無断利用したことにより,前記女性2人組が原告,出版社を被告として損害賠償を求めた事件です。
判旨は,「人の氏名,肖像等を無断で使用する行為は,(1)氏名,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,(2)商品等の差別化を図る目的で氏名,肖像等を商品等に付し,(3)氏名,肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら氏名,肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,当該顧客吸引力を排他的に利用する権利(いわゆるパブリシティ権)を侵害するものとして,不法行為法上違法となる」というもので,初めて最高裁において,パブリシティ権を認めました。
本肢は,「人の氏名、肖像等が商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合において、当該顧客吸引力を排他的に利用する権利は、人格権に由来する権利の一内容を構成する。」というものであり,判旨のとおりですから,正しいです。
オ・・誤りです。
判旨は,「法人の名誉権が侵害され、無形の損害が生じた場合でも、右損害の金銭評価が可能であるかぎり、民法第710条の適用がある。」(最判昭和39年1月28日民集第18巻1号136頁:謝罪広告並びに慰謝料請求事件)としていて,法人にも名誉権を認めています。
名誉権は,自然人同様に認められる人格的利益です。
したがって,「人格権や法的保護に値する人格的利益は、その性質上、自然人にのみ認められ、法人には認められない。」とする本肢は,誤りとなります。
ウ・・誤りです。
最判平成17年7月14日(船橋市西図書館図書廃棄事件)です。
判旨は,「公立図書館の職員である公務員が,閲覧に供されている図書の廃棄について,著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをすることは,当該図書の著作者の人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となる。」というものです。
したがって,「当該著作者が当該著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益は、法的保護に値する人格的利益とはいえない。」という部分が誤りです。
オ・・誤りです。
判旨は,「法人の名誉権が侵害され、無形の損害が生じた場合でも、右損害の金銭評価が可能であるかぎり、民法第710条の適用がある。」(最判昭和39年1月28日民集第18巻1号136頁:謝罪広告並びに慰謝料請求事件)としていて,法人にも名誉権を認めています。
名誉権は,自然人同様に認められる人格的利益です。
したがって,「人格権や法的保護に値する人格的利益は、その性質上、自然人にのみ認められ、法人には認められない。」とする本肢は,誤りとなります。
以上から,ウとオが誤りとなります。
なお,選択肢の中に,知らない判例があったとしても,自分が原告なら裁判所が認めてくれるだけの法律上保護する利益があるかという基準で判断すれば,正解にたどり着ける可能性が非常に高くなりますので,知らない判例があっても不安になる必要はありません。
本問であれば,オが誤りというのは,判例を知らなくても誤りと判断できますし,残る選択肢はイとウになります。イとウを比較して,イは正解らしい雰囲気がありますが,ウは,著作者の人格的利益を認めていないので,誤りではないかと判断します。
そうすると,ウとオが誤りだろうと推測して答えにたどり着けばいいのです。
知らない判例があっても,冷静に選択肢を読んで判断しましょう。
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03
人格権についての判例問題です。
アは正しいです。
名誉は人格的自律として人間の根幹にかかわるものなので保障されます。(13条)(最大判昭61.6.11 北方ジャーナル事件)
イは正しいです。
パブリシティ権は人格権に由来する権利として認められています。(最判平24.2.2 ピンクレディ事件)
ウは誤りです。
当該著作者が当該著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益は、法的保護に値する人格的利益とはいえます。(船橋市西図書館図書廃棄事件 最判平17.7.14 )
エは正しいです。
前科等は人の名誉・信用にかかわる事項であり、前科等のある者もみだりにこれを公開されないという法律上の保護に値する利益を有します。(最判昭56.4.14
前科照会事件)
オは誤りです。
法人は社会における重要な構成要素なので、法人にも性質上可能な限りは人格権は認められます。(最判昭45.6.24 八幡製鉄政治献金事件)
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