司法書士の過去問
令和4年度
午前の部 問2
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問題
令和4年度 司法書士試験 午前の部 問2 (訂正依頼・報告はこちら)
憲法第14条第1項に規定する法の下の平等に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 障害福祉年金の受給者は児童扶養手当の受給資格を欠く旨の規定は、これにより障害福祉年金受給者とそうでない者との間に児童扶養手当の受給に関し合理的理由のない不当な差別が生じることから、違憲である。
イ 日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した子について、父母の婚姻及び父の認知によって嫡出子の身分を取得した子には法務大臣への届出によって日本国籍の取得を認める一方で、日本国民である父から認知されただけの嫡出でない子についてはこれを認めないという区別は、我が国との密接な結び付きを有する者に限り日本国籍を付与するという立法目的との間において合理的関連性を欠き、違憲である。
ウ ある議員定数配分の下で施行された国会議員の選挙において投票価値の平等につき違憲状態が生じていたとしても、その選挙が実施されるまでにその定数配分の見直しが行われなかったことが国会の裁量権の限界を超えないと、憲法に違反しないと認められる場合がある。
エ 嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする規定は、民法が採用する法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図ったものであり、立法府に与えられた合理的な裁量の限界を超えるものではなく、憲法に違反しない。
オ 尊属に対する殺人罪のみその法定刑を加重して死刑又は無期懲役とする規定は、尊属に対する尊重報恩という道義を保護するという立法目的が不合理であり、違憲である。
(参考)憲法
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2・3 (略)
ア 障害福祉年金の受給者は児童扶養手当の受給資格を欠く旨の規定は、これにより障害福祉年金受給者とそうでない者との間に児童扶養手当の受給に関し合理的理由のない不当な差別が生じることから、違憲である。
イ 日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した子について、父母の婚姻及び父の認知によって嫡出子の身分を取得した子には法務大臣への届出によって日本国籍の取得を認める一方で、日本国民である父から認知されただけの嫡出でない子についてはこれを認めないという区別は、我が国との密接な結び付きを有する者に限り日本国籍を付与するという立法目的との間において合理的関連性を欠き、違憲である。
ウ ある議員定数配分の下で施行された国会議員の選挙において投票価値の平等につき違憲状態が生じていたとしても、その選挙が実施されるまでにその定数配分の見直しが行われなかったことが国会の裁量権の限界を超えないと、憲法に違反しないと認められる場合がある。
エ 嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする規定は、民法が採用する法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図ったものであり、立法府に与えられた合理的な裁量の限界を超えるものではなく、憲法に違反しない。
オ 尊属に対する殺人罪のみその法定刑を加重して死刑又は無期懲役とする規定は、尊属に対する尊重報恩という道義を保護するという立法目的が不合理であり、違憲である。
(参考)憲法
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2・3 (略)
- アイ
- アエ
- イウ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
主に法の下の平等に関する基本判例からの出題です。
アは誤りです。判例は、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」について「具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用となるような場合を除き、裁判所の審理判断の対象にはならない」と述べた上で、本肢のような「差別」が「生ずることになるとしても」、「なんら合理的理由のない不当なものであるとはいえない」と判断しました(堀木訴訟:最判昭57.7.7)
イは正しいです。国籍法違憲判決(最大判平20.6.4)。なお、類似の事例で、「出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたもの」に対して、一定期間内に「日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う」と規定している(国籍法12条、戸籍法104条)ことについては、「立法目的との関連において不合理なものとはいえず、立法府の合理的な裁量判断の範囲を超えるものということはできない」と判断されています(最判平27.3.10)。
ウは正しいです。最高裁は、「選挙当時・・・投票価値の不均衡は、投票価値の平等の重要性に照らしてもはや看過し得ない程度に達しており・・・違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていた」と指摘しつつも、「選挙制度の仕組み自体の見直しについては、参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が求められるなど・・・検討に相応の時間を要することは認めざるを得ない」などとして「本件選挙までの間に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず・・・憲法に違反するに至っていたということはできない」と判断しています(最判平24.10.17)。
エは誤りです。最高裁は、「遅くとも・・・平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていた」と判断しています(最大決平25.9.4)。
オは誤りです。最高裁は、立法目的については、「刑法上の保護に値する」と認め、「刑の加重要件とする規定を設けても・・・ただちに合理的な根拠を欠くものと断ずることはできない」としつつ、「尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限っている点において・・・普通殺・・・の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするもの認められ、憲法14条1項に違反し無効である」と判断している(尊属殺重罰規定違憲判決:最判昭48.4.4)。
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02
憲法14条の法の下の平等についての判例の知識の有無についての問題です。
この問題についても基本的には,判例は合憲であることが多く,違憲の場合には,理由を判断する(目的が違憲なのか,手段が違憲なのかなど)ことで正答にたどり着けます。
ア・・誤りです。
いわゆる堀木訴訟(最判昭和57年7月7日)です。
判旨は「併給調整条項の適用により,障害福祉年金を受けることができる地位にある者とそのような地位にない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別が生ずることになるとしても,身体障害者・・・・の存在などに照らして総合的に判断すると,当該差別が不当なものであるとはいない。」というものです。
本肢は,「合理的理由のない不当な差別が生じることから、違憲」としているので,誤りです。
なお,本肢は,有名な判例なので,覚えておきましょう。
イ・・正しいです。
退去強制令書発付処分取消等請求事件(最判平成20年6月4日)です。
判旨は,「(筆者注:改正前の)国籍法3条1項が,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子について,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した(準正のあった)場合に限り届出による日本国籍の取得を認めていることによって,認知されたにとどまる子と準正のあった子との間に日本国籍の取得に関する区別を生じさせていることは,遅くとも上告人が国籍取得届を提出した平成15年当時において,憲法14条1項に違反していたものである。」というものです。
つまり,父の認知により嫡出子となった子については,日本国籍の取得を認めるのに対し,父の認知があっただけの子については,日本国籍の取得を認めない改正前の国籍法3条1項は違憲であると判旨は言っています。
確かに,父の認知により嫡出子となるかどうかについては,偶然の事情により左右されますし,合理的な理由もないので,違憲という判断になりやすいでしょう。
したがって,本肢は,正しいです。
なお,この選択肢を読んで驚いた方もいらっしゃるかもしれませんが,ウが正しく,オが誤りと判断できれば,イとウが正しいと判断できますので,落ち着いて選択肢を読むことが大事です。
ア・・誤りです。
いわゆる堀木訴訟(最判昭和57年7月7日)です。
判旨は「併給調整条項の適用により,障害福祉年金を受けることができる地位にある者とそのような地位にない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別が生ずることになるとしても,身体障害者・・・・の存在などに照らして総合的に判断すると,当該差別が不当なものであるとはいない。」というものです。
本肢は,「合理的理由のない不当な差別が生じることから、違憲」としているので,誤りです。
なお,本肢は,有名な判例なので,覚えておきましょう。
エ・・誤りです。
非嫡出子相続分差別規定違憲決定(最大決平成25年9月4日)です。
平成13年の判例が本決定により変更される前なら選択肢のとおり合憲となるので正解ですが,平成25年の本決定が出たことにより違憲となったので誤りとなりました。
判旨は,「旧民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していた。」というものです。
理由としては,「父母が婚姻関係になかったというのは,子にとっては自ら選択できない事柄だし,嫡出子と非嫡出子の法定相続分を区別する合理的根拠は失われていた」というものがあげられます。
したがって,「憲法に違反しない。」という本肢は,誤りとなります。
イ・・正しいです。
退去強制令書発付処分取消等請求事件(最判平成20年6月4日)です。
判旨は,「(筆者注:改正前の)国籍法3条1項が,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子について,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した(準正のあった)場合に限り届出による日本国籍の取得を認めていることによって,認知されたにとどまる子と準正のあった子との間に日本国籍の取得に関する区別を生じさせていることは,遅くとも上告人が国籍取得届を提出した平成15年当時において,憲法14条1項に違反していたものである。」というものです。
つまり,父の認知により嫡出子となった子については,日本国籍の取得を認めるのに対し,父の認知があっただけの子については,日本国籍の取得を認めない改正前の国籍法3条1項は違憲であると判旨は言っています。
確かに,父の認知により嫡出子となるかどうかについては,偶然の事情により左右されますし,合理的な理由もないので,違憲という判断になりやすいでしょう。
したがって,本肢は,正しいです。
なお,この選択肢を読んで驚いた方もいらっしゃるかもしれませんが,ウが正しく,オが誤りと判断できれば,イとウが正しいと判断できますので,落ち着いて選択肢を読むことが大事です。
ウ・・正しいです。
いわゆる合理的期間論について言及した議員定数不均衡に関する事件です(最大判昭和51年4月14日)。
本件では,「投票価値の平等に違反しても,直ちに議員定数の配分が違憲となるわけではなく,較差が拡大しているのに国会が合理的期間内に是正しない場合に違憲となる」という趣旨のことについて述べられています。
それで,本肢は,「違反しない場合がある」という断定的ではない表現をしているわけです。
したがって,本肢は正しいです。
ウ・・正しいです。
いわゆる合理的期間論について言及した議員定数不均衡に関する事件です(最大判昭和51年4月14日)。
本件では,「投票価値の平等に違反しても,直ちに議員定数の配分が違憲となるわけではなく,較差が拡大しているのに国会が合理的期間内に是正しない場合に違憲となる」という趣旨のことについて述べられています。
それで,本肢は,「違反しない場合がある」という断定的ではない表現をしているわけです。
したがって,本肢は正しいです。
オ・・誤りです。
有名な尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭和48年4月4日)です。
平成7年(1995年)に刑法改正が実施され,尊属殺についての刑法の条文(200条)が削除されました。
この判決では,「目的はOKだが,手段として死刑か無期懲役という判決しかないのは,違憲」という趣旨のことを述べています。
本肢は,「立法目的が不合理」としているので,この部分が誤りです。
この判例は,過去にも出題されていますので,覚えておきましょう。
エ・・誤りです。
非嫡出子相続分差別規定違憲決定(最大決平成25年9月4日)です。
平成13年の判例が本決定により変更される前なら選択肢のとおり合憲となるので正解ですが,平成25年の本決定が出たことにより違憲となったので誤りとなりました。
判旨は,「旧民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していた。」というものです。
理由としては,「父母が婚姻関係になかったというのは,子にとっては自ら選択できない事柄だし,嫡出子と非嫡出子の法定相続分を区別する合理的根拠は失われていた」というものがあげられます。
したがって,「憲法に違反しない。」という本肢は,誤りとなります。
オ・・誤りです。
有名な尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭和48年4月4日)です。
平成7年(1995年)に刑法改正が実施され,尊属殺についての刑法の条文(200条)が削除されました。
この判決では,「目的はOKだが,手段として死刑か無期懲役という判決しかないのは,違憲」という趣旨のことを述べています。
本肢は,「立法目的が不合理」としているので,この部分が誤りです。
この判例は,過去にも出題されていますので,覚えておきましょう。
以上から,正しい選択肢は,イとウになります。
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03
法の下の平等に関する判例問題です。
アは誤りです。
社会保障給付のための全般的給付の全般的公平を図るため公的年金相互間における供給調整を行うかどうかについては立法府の裁量の範囲に属する事柄であり合憲です。(最判昭57.7.7 堀木訴訟)
イは正しいです。
日本人父と外国人母から出生後の認知を受けた非嫡出子のみ、父母の婚姻が行われない限り日本国籍取得を認めないとする国籍法3条の規定は立法目的との間に合理的関係性がないので憲法14条1項に違反します。(最大判平20.6.4 国籍法3条違憲判決)
ウは正しいです。
違憲状態が生じていたとしてもその選挙が実施されるまでにその定数配分の見直しが行われなかったことが国会の裁量権の限界を超えないいと、憲法に違反しないと認められる場合があります。
エは誤りです。
遅くとも平静13年7月当時においては立法府の裁量権を考慮しても嫡出子と嫡出でない子の法定相続分区別する合理的な根拠は失われていたので、遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたものというべきです。
(最大判平25.9.4 非嫡出子相続分規定違憲訴訟)
オは誤りです。
尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役のみに限っている点において立法目的のための必要な限度をはるかに超え憲法14条1項に違反して無効になります。(最判昭48.4.4 尊属殺重罰規定違憲判決)
判決では、目的については刑法上の保護に値すると認めていますが、手段として死刑または無期懲役しかないという点に関しては違憲ということを述べています。
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