問題
ア 質権者は、質権の目的となっている金銭債権について、自己の債権額に対応する部分に限り、取り立てることができる。
イ 質権の設定者は、質権の目的となっている債権を取り立てることはできない。
ウ 第三債務者に対する質権の設定の通知又は第三債務者の承諾が確定日付のある証書によってされなければ、質権者は、債権を目的とする質権の設定を当該第三債務者に対抗することができない。
エ 同一の債権について複数の質権を設定することはできない。
オ 質権は、現に発生していない債権を目的とすることができる。
権利質に関する問題です。
質権は、財産権をその目的とすることができる(362条1項)と規定されており、これを権利質といいます。
選択肢4. ウエ
アは正しいです。質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができます(366条1項)。債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができます(同条2項)。
イは正しいです。最高裁は「債権が質権の目的とされた場合において,質権設定者は,質権者に対し,当該債権の担保価値を維持すべき義務を負い,債権の放棄,免除,相殺,更改等当該 債権を消滅,変更させる一切の行為その他当該債権の担保価値を害するような行為を行うことは,同義務に違反するものとして許されないと解すべきである。」と述べています(最判平18.12.21)。
ウは誤りです。「債権を目的とする質権の設定・・・は、第467条の規定に従い、第三債務者にその質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。」(364条)と規定されています。つまり、第三債務者に対しては、確定日付のある証書でなくとも対抗することができます。
エは誤りです。質権については、「その性質に反しない限り、前三節(総則、動産質及び不動産質)の規定を準用する」(362条2項)とされており、「同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。」(355条)も準用されます。つまり、同一の債権について複数の質権を設定することもできます。
オは正しいです。債権を目的とする質権の対抗要件を定める364条は「債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含む。)は、・・・」と定めており、現に発生していない債権を含むことが分かります。
権利質についての問題です。
質権も不動産質権,動産質権など項目が多く,覚えることが多いので,要件や効果などを各自の使用されているテキストで整理しておくといいでしょう。
選択肢1. アイ
ア・・正しいです。
「質権者は,自己の債権額に対応する部分に限り,これを取り立てることができる(民法366条2項)」。
なお,質権については,弁済期前でも第三債務者に供託させることができます(同条3項後段)が,直接取り立てるのは不可という点も合わせて覚えておくとよいでしょう。
イ・・正しいです。
質権設定者は,質物の目的債権につき適切に維持する義務を負います(最判平成18年12月21日)。
例えば,質権設定者は,金銭債権を放棄,免除,相殺したり,第三債務者から弁済を受けることができず,これらの行為をしても質権者に対抗できません。
したがって,債権の取り立てができないとする本肢は正しいです。
選択肢2. アウ
ア・・正しいです。
「質権者は,自己の債権額に対応する部分に限り,これを取り立てることができる(民法366条2項)」。
なお,質権については,弁済期前でも第三債務者に供託させることができます(同条3項後段)が,直接取り立てるのは不可という点も合わせて覚えておくとよいでしょう。
ウ・・誤りです。
債権質権の対抗要件は,債権譲渡に関する民法467条が準用されます(民法364条)。
第三債務者に対する通知又は第三債務者の承諾がなければ,第三債務者その他の第三者に対抗できません。
しかし,第三債務者に対しては,確定日付のある証書による必要がありません。
したがって,本肢は誤りです。
選択肢3. イオ
イ・・正しいです。
質権設定者は,質物の目的債権につき適切に維持する義務を負います(最判平成18年12月21日)。
例えば,質権設定者は,金銭債権を放棄,免除,相殺したり,第三債務者から弁済を受けることができず,これらの行為をしても質権者に対抗できません。
したがって,債権の取り立てができないとする本肢は正しいです。
オ・・正しいです。
民法364条かっこ書きで「現に発生していない債権を目的とするものを含む。」と規定しています。
選択肢4. ウエ
ウ・・誤りです。
債権質権の対抗要件は,債権譲渡に関する民法467条が準用されます(民法364条)。
第三債務者に対する通知又は第三債務者の承諾がなければ,第三債務者その他の第三者に対抗できません。
しかし,第三債務者に対しては,確定日付のある証書による必要がありません。
したがって,本肢は誤りです。
エ・・誤りです。
民法362条2項,355条によれば,同一の動産について複数の質権が成立することを前提にしておりますので,本肢は誤りです。
選択肢5. エオ
エ・・誤りです。
民法362条2項,355条によれば,同一の動産について複数の質権が成立することを前提にしておりますので,本肢は誤りです。
オ・・正しいです。
民法364条かっこ書きで「現に発生していない債権を目的とするものを含む。」と規定しています。
以上から,ウとエが誤りと言えます。