選択肢5. ウオ
ア・・誤りです。
造作買取請求権に基づく代金債権のため,建物を留置できるかという問題ですが,判例は認めていません(最判昭和29年1月14日)。
なぜなら,造作は,建物とは別個の客体である動産であり,代金債権はあくまで造作に関して生じた債権に過ぎないからです。
もっと,簡単にいいますと,造作買取請求権の費用は建物に比べて値段が安価なのに,建物という高価なものを留置できるとしたら不公平なので認められないということです。
したがって,本肢は誤りです。
イ・・誤りです。
留置権者は,債務者の承諾を得ていなくても,物の保存に必要な使用をすることができます(民法298条2項ただし書)。
建物の賃借人が賃借中に支出した費用の償還請求権について留置権を行使し,その償還を受けるまで当該建物に居住することは,一般に「物の保存に必要な使用」に当たります(大判昭和10年5月13日)。
したがって,本肢は,誤りです。
ウ・・正しいです。
冒頭に記載したとおり,他人物売買における損害賠償請求権を被担保債権として留置権を行使できるかという問題ですが,認められません。
なぜなら,被担保債権である損害賠償請求権の債務者と建物の明渡請求権者は,損害賠償請求権が発生した時点では,別人であり,建物を留置することによって被担保債権の弁済を間接的に強制する関係にないからです。
エ・・誤りです。
留置権者は,善管注意義務があります(民法298条1項)。
留置権者がこれに違反したときは,債務者は,留置権の消滅を請求できます(同条3項)。
したがって,「留置権の消滅請求をすることができない」という本肢は誤りです。
根拠を説明しましたが,覚えたり理解するのに時間がかかるので,冒頭にも記載したとおり,他人物売買と二重譲渡で留置権は認められないと覚えておくのが簡単で良いと思います。
オ・・正しいです。
民事執行法195条は留置権者による形式競売を認めています。
同条の趣旨は,留置権者を永続的な留置継続の負担から解放するため,目的物を競売により金銭に換えて保管することを認めるというものです。
したがって,本肢は正しいです。