司法書士の過去問
令和4年度
午前の部 問13
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問題
令和4年度 司法書士試験 午前の部 問13 (訂正依頼・報告はこちら)
留置権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 建物の賃借人は、賃貸人に対して有する造作買取代金債権を被担保債権として、当該建物について留置権を行使することができる。
イ 建物の賃借人は、賃貸借契約の終了後においては、当該建物について留置権を行使する場合であっても、従前のとおり当該建物に居住することはできない。
ウ 他人物売買の売主から目的物の引渡しを受けた買主は、所有者から当該目的物の返還請求を受けた場合には、売主に対して有する損害賠償請求権を被担保債権とする留置権を主張して返還を拒むことはできない。
エ 留置物の所有者である債務者から当該留置物を譲り受けた第三取得者は、留置権者が留置物の占有において善良な管理者の注意を怠ったとしても、留置権の消滅請求をすることはできない。
オ 留置権者は、留置権による競売が行われた場合には、その換価金を留置することができる。
ア 建物の賃借人は、賃貸人に対して有する造作買取代金債権を被担保債権として、当該建物について留置権を行使することができる。
イ 建物の賃借人は、賃貸借契約の終了後においては、当該建物について留置権を行使する場合であっても、従前のとおり当該建物に居住することはできない。
ウ 他人物売買の売主から目的物の引渡しを受けた買主は、所有者から当該目的物の返還請求を受けた場合には、売主に対して有する損害賠償請求権を被担保債権とする留置権を主張して返還を拒むことはできない。
エ 留置物の所有者である債務者から当該留置物を譲り受けた第三取得者は、留置権者が留置物の占有において善良な管理者の注意を怠ったとしても、留置権の消滅請求をすることはできない。
オ 留置権者は、留置権による競売が行われた場合には、その換価金を留置することができる。
- アウ
- アエ
- イエ
- イオ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
留置権については,要件や効力について細かく問われます。
機械的に暗記していると間違えやすいです。しかも,試験では留置権は頻出事項です。
事例ごとに,「留置権が成立しても相手方の利益を害しないか」を判断基準とすれば,正答にたどり着きやすいと思います。
また,他人物売買や二重譲渡における損害賠償では,留置権は認められない点も覚えておくと得点源になります。
ア・・誤りです。
造作買取請求権に基づく代金債権のため,建物を留置できるかという問題ですが,判例は認めていません(最判昭和29年1月14日)。
なぜなら,造作は,建物とは別個の客体である動産であり,代金債権はあくまで造作に関して生じた債権に過ぎないからです。
もっと,簡単にいいますと,造作買取請求権の費用は建物に比べて値段が安価なのに,建物という高価なものを留置できるとしたら不公平なので認められないということです。
したがって,本肢は誤りです。
イ・・誤りです。
留置権者は,債務者の承諾を得ていなくても,物の保存に必要な使用をすることができます(民法298条2項ただし書)。
建物の賃借人が賃借中に支出した費用の償還請求権について留置権を行使し,その償還を受けるまで当該建物に居住することは,一般に「物の保存に必要な使用」に当たります(大判昭和10年5月13日)。
したがって,本肢は,誤りです。
ウ・・正しいです。
冒頭に記載したとおり,他人物売買における損害賠償請求権を被担保債権として留置権を行使できるかという問題ですが,認められません。
なぜなら,被担保債権である損害賠償請求権の債務者と建物の明渡請求権者は,損害賠償請求権が発生した時点では,別人であり,建物を留置することによって被担保債権の弁済を間接的に強制する関係にないからです。
エ・・誤りです。
留置権者は,善管注意義務があります(民法298条1項)。
留置権者がこれに違反したときは,債務者は,留置権の消滅を請求できます(同条3項)。
したがって,「留置権の消滅請求をすることができない」という本肢は誤りです。
根拠を説明しましたが,覚えたり理解するのに時間がかかるので,冒頭にも記載したとおり,他人物売買と二重譲渡で留置権は認められないと覚えておくのが簡単で良いと思います。
オ・・正しいです。
民事執行法195条は留置権者による形式競売を認めています。
同条の趣旨は,留置権者を永続的な留置継続の負担から解放するため,目的物を競売により金銭に換えて保管することを認めるというものです。
したがって,本肢は正しいです。
以上から,ウとオが正しいと言えます。
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02
留置権に関する問題です。
アは誤りです。造作買取代金債権を被担保債権として、当該建物について留置権を行使することはできません(最判昭29.1.14)。なお、建物買取請求権を被担保債権として、当該土地について留置権を行使することはできることとの比較で覚えておきましょう。前者は価値があまりに不釣り合いですが、後者は価値が釣り合っていると考えれば納得できるでしょう。
イは誤りです。建物の賃借人は、賃貸借契約の終了後においては、当該建物について留置権を行使する場合、従前のとおり当該建物に居住することは、他に特別の事情のない限り、298条2項但書「その物の保存に必要な使用をすること」にあたるとされます(大判昭10.5.13)。
ウは正しいです。最高裁は、その理由として「他人の物の売主は、その所有権移転債務が履行不能となっても、目的物の返還を買主に請求しうる関係になく、したがつて、買主が目的物の返還を拒絶することによつて損害賠償債務の履行を間接に強制するという関係は生じないため、右損害賠償債権について目的物の留置権を成立させるために必要な物と債権との牽連関係が当事者間に存在するとはいえないから」と述べています(最判昭51.6.17)。
エは誤りです。留置物の第三取得者は、債務者でなくても298条3項に基づいて消滅を請求できるとされています(最判昭40.7.15)。
オは正しいです。留置権は優先弁済的効力はありませんが、管理負担を避けるため留置物を競売して換価することはでき(民事執行法195条)、代わりにそれを留置することはできます。
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03
留置権に関する問題です。
アは誤りです。
造作買取請求権についてはあくまでの造作についての債権なので建物について生じた債権ではありません。
ですので留置権を行使することはできません。
イは誤りです。
留置権を行使してその償還を受けるまで建物に居住することは「物の保存に必要な使用」に該当するため使用することができます。(大判昭10.5.13)
ウは正しいです。
損害賠償請求権は所有者に対するものではなく売主に対するものなので留置権を主張することはできません。
エは誤りです。
留置権者は善管注意義務を負いこれに違反した場合、所有者は留置権の消滅請求をすることができます(298条3項)
オは正しいです。
目的物を競売してその換価金を留置することは認められています。
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