司法書士の過去問
令和4年度
午前の部 問12
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問題
令和4年度 司法書士試験 午前の部 問12 (訂正依頼・報告はこちら)
法定地上権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 法定地上権の成立要件が充足されていても法定地上権の成立は認めないという趣旨の特約を抵当権設定の当事者間において締結したとしても、法定地上権は成立する。
イ 法定地上権が成立する土地の範囲は、法定地上権の対象となる建物が接地する部分に限られる。
ウ 法定地上権の存続期間は、当事者間の協議によって定めることはできない。
エ 地上建物に仮差押えがされ、その後、当該仮差押えが本執行に移行してされた強制競売手続における売却により買受人がその所有権を取得した場合において、土地及び地上建物が当該仮差押えの時点で同一の所有者に属していたものの、その後に土地が第三者に譲渡された結果、当該強制競売手続における差押えの時点では土地及び地上建物が同一の所有者に属していなかったときは、法定地上権は成立しない。
オ 土地を目的とする第一順位の甲抵当権と第二順位の乙抵当権が設定され、甲抵当権設定時には土地及び地上建物が同一の所有者に属していなかったが、乙抵当権設定時にはこれらが同一の所有者に属していた。この場合において、甲抵当権が消滅し、そ の後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至ったときは、法定地上権が成立する。
ア 法定地上権の成立要件が充足されていても法定地上権の成立は認めないという趣旨の特約を抵当権設定の当事者間において締結したとしても、法定地上権は成立する。
イ 法定地上権が成立する土地の範囲は、法定地上権の対象となる建物が接地する部分に限られる。
ウ 法定地上権の存続期間は、当事者間の協議によって定めることはできない。
エ 地上建物に仮差押えがされ、その後、当該仮差押えが本執行に移行してされた強制競売手続における売却により買受人がその所有権を取得した場合において、土地及び地上建物が当該仮差押えの時点で同一の所有者に属していたものの、その後に土地が第三者に譲渡された結果、当該強制競売手続における差押えの時点では土地及び地上建物が同一の所有者に属していなかったときは、法定地上権は成立しない。
オ 土地を目的とする第一順位の甲抵当権と第二順位の乙抵当権が設定され、甲抵当権設定時には土地及び地上建物が同一の所有者に属していなかったが、乙抵当権設定時にはこれらが同一の所有者に属していた。この場合において、甲抵当権が消滅し、そ の後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至ったときは、法定地上権が成立する。
- アウ
- アオ
- イウ
- イエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
法定地上権に関する問題です。
アは正しいです。細かい知識です。法定地上権については、「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。」(388条)との規定を私人間の合意で破ることはできません。あくまで「法定」ということです。
イは誤りです。細かい知識です。法定地上権は、建物等の利用に必要かつ十分な程度の広さに及ぶ(大判大9.5.5)とされています。
ウは誤りです。細かい知識です。「地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。」(388条)と定められていますが、存続期間については当事者間の協議で定めることができます。
エは誤りです。本肢の場合、法定地上権が成立します(最判平28.12.1)。
オは正しいです。これは基本です(最判19.7.6)。一番抵当権者は保護する必要がありますが、二番抵当権者は保護する必要がありません。
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02
法定地上権の成立要件(①抵当権設定時に土地上に建物が存在する,②抵当権設定時に土地と建物が同一の所有者に属する,③土地・建物の一方又は双方に抵当権が設定されている,④抵当権の実行により,土地と建物が異なる所有者に属するに至ったこと)は必ず頭に入れておきましょう。
完全にこれらの要件を暗記するのではなく,問題を解くときに,これらの要件が当てはまるかどうかを考えて正解に達すればいいと思います。ただ,少なくとも①と②は常に頭に入っている必要があります。
さらに,土地が共有の場合,建物が共有の場合,土地と建物が共有の場合,法定地上権は成立するかなどの論点も頻出事項ですので,覚えておきましょう(基本的には,建物が共有のときしか法定地上権は成立せず,土地が共有及び土地と建物が共有のパターンは法定地上権は成立しません。あくまでもこれは原則で,例外となるパターンはテキスト等で確認しましょう)。
ア・・正しいです。
法定地上権についての民法388条は強行規定です(大判明治41年5月11日)。
抵当権者と設定者との間で,法定地上権の成立要件を満たすにもかかわらず,成立させない旨の特約を結ぶことはできず,また,法定地上権の成立要件を満たさないにもかかわらず,法定地上権を成立させる旨の特約を結ぶこともできません(前述の明治41年5月11日,大判大正7年12月6日)。
ですから,本肢は,正しいです。
ウ・・誤りです。
法定地上権の存続期間は,原則として当事者の協議によって定めます。ただし,当事者が30年よりも短い期間を定めた場合,又は当事者間の協議が調わないときは,30年となります(借地借家法3条本文)。
ですから,本肢の「法定地上権の存続期間は、当事者間の協議によって定めることはできない。」は誤りです。
ア・・正しいです。
法定地上権についての民法388条は強行規定です(大判明治41年5月11日)。
抵当権者と設定者との間で,法定地上権の成立要件を満たすにもかかわらず,成立させない旨の特約を結ぶことはできず,また,法定地上権の成立要件を満たさないにもかかわらず,法定地上権を成立させる旨の特約を結ぶこともできません(前述の明治41年5月11日,大判大正7年12月6日)。
ですから,本肢は,正しいです。
オ・・正しいです。
1番抵当権の設定時には,土地と建物の所有者が別個で,2番抵当権の設定時に土地と建物の所有者が同一人に属することになったが,その後に1番抵当権が消滅し,2番抵当権を実行して所有者が土地と建物で異なることになったら,法定地上権が成立するかという問題です。
判例(最判平成19年7月6日)は,1番抵当権が設定契約の解除や被担保債権の弁済により消滅した後に2番抵当権が実行された場合には,法定地上権が成立するとしています。
なぜなら,1番抵当権が消滅している以上,1番抵当権者の利益を考える必要がないからです。
このような判例がいくつかあると思いますが,基本的には1番抵当権実行時に土地と建物が同一人に属していなければ成立しないが,「解除」や「弁済」などの事情で1番抵当権が完全に消滅した場合には例外的に認めると覚えておけば試験対策上は問題ないと思います。
本肢も1番抵当権である甲抵当権が消滅し,2番抵当権である乙抵当権の実行時には土地と建物の所有者が同一人に属しているので,この例外的なケースにあたり,法定地上権の成立が認められます。
したがって,本肢は,正しいです。
イ・・誤りです。
法定地上権が成立する範囲は,建物の利用に必要な範囲であり,敷地部分に限られるわけではありません(大判大正9年5月5日)。
ですから,本肢は,誤りです。
ウ・・誤りです。
法定地上権の存続期間は,原則として当事者の協議によって定めます。ただし,当事者が30年よりも短い期間を定めた場合,又は当事者間の協議が調わないときは,30年となります(借地借家法3条本文)。
ですから,本肢の「法定地上権の存続期間は、当事者間の協議によって定めることはできない。」は誤りです。
イ・・誤りです。
法定地上権が成立する範囲は,建物の利用に必要な範囲であり,敷地部分に限られるわけではありません(大判大正9年5月5日)。
ですから,本肢は,誤りです。
エ・・誤りです。
文章が長く,複雑なので,混乱しそうですが,「土地及び地上建物が当該仮差押えの時点で同一の所有者に属していた」という部分がポイントです。
民事執行法81条前段で「土地及びその上にある建物が債務者の所有に属する場合において,その土地又は建物の差押えがあり,その売却により所有者を異にするに至ったときは,その建物について,地上権が設定されたものとみなす。」と規定されています。
つまり,土地又は建物の差押えの時点で,同一人の所有に属していれば,その後に所有者が変わっても法定地上権が成立するということです。
したがって,本肢も仮差押えの時点で,土地と建物の所有者が同一人に属していたので,差押えの時点で土地が第三者に譲渡されても法定地上権が成立しますので,正しい肢といえます。
この肢にあげられている事例は,テキストに載っていないこともあると思います。
さらに,前述の民事執行法の条文についても知らない方が多いと思います。
そのような場合は,いったん保留にしておいて,他の選択肢で判断すればよいですし,この事例については,通常の1番2番抵当権の設定という行為が仮差押えという強制手続に変わっただけと考えればいいと思います。
エ・・誤りです。
文章が長く,複雑なので,混乱しそうですが,「土地及び地上建物が当該仮差押えの時点で同一の所有者に属していた」という部分がポイントです。
民事執行法81条前段で「土地及びその上にある建物が債務者の所有に属する場合において,その土地又は建物の差押えがあり,その売却により所有者を異にするに至ったときは,その建物について,地上権が設定されたものとみなす。」と規定されています。
つまり,土地又は建物の差押えの時点で,同一人の所有に属していれば,その後に所有者が変わっても法定地上権が成立するということです。
したがって,本肢も仮差押えの時点で,土地と建物の所有者が同一人に属していたので,差押えの時点で土地が第三者に譲渡されても法定地上権が成立しますので,正しい肢といえます。
この肢にあげられている事例は,テキストに載っていないこともあると思います。
さらに,前述の民事執行法の条文についても知らない方が多いと思います。
そのような場合は,いったん保留にしておいて,他の選択肢で判断すればよいですし,この事例については,通常の1番2番抵当権の設定という行為が仮差押えという強制手続に変わっただけと考えればいいと思います。
オ・・正しいです。
1番抵当権の設定時には,土地と建物の所有者が別個で,2番抵当権の設定時に土地と建物の所有者が同一人に属することになったが,その後に1番抵当権が消滅し,2番抵当権を実行して所有者が土地と建物で異なることになったら,法定地上権が成立するかという問題です。
判例(最判平成19年7月6日)は,1番抵当権が設定契約の解除や被担保債権の弁済により消滅した後に2番抵当権が実行された場合には,法定地上権が成立するとしています。
なぜなら,1番抵当権が消滅している以上,1番抵当権者の利益を考える必要がないからです。
このような判例がいくつかあると思いますが,基本的には1番抵当権実行時に土地と建物が同一人に属していなければ成立しないが,「解除」や「弁済」などの事情で1番抵当権が完全に消滅した場合には例外的に認めると覚えておけば試験対策上は問題ないと思います。
本肢も1番抵当権である甲抵当権が消滅し,2番抵当権である乙抵当権の実行時には土地と建物の所有者が同一人に属しているので,この例外的なケースにあたり,法定地上権の成立が認められます。
したがって,本肢は,正しいです。
以上から,アとオが正しいと言えます。
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03
法定地上権に関する問題です。
アは正しいです。
法定地上権は法律上当然に成立するため特約をしていても成立します。
イは誤りです。
法定地上権が成立する範囲は建物の利用に必要な範囲となっており、敷地部分に限られるわけではありません。(大判大9.5.5)
ウは誤りです。
原則は当事者の協議で決まります。
例外として当事者の請求によって裁判所が決めることができます。
エは誤りです。
建物のみを競売されて建物のみを買い受けた場合、土地利用権がなければ建物を使用できないため法律上当然に地上権を成立させる必要があります。
オは正しいです。
1番抵当権が消滅しているので2番抵当権設定時に土地と建物が同一人に帰属しているのなら法定地上権が成立します。
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