司法書士 過去問
令和6年度
問1 (午前の部 問1)

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問題

司法書士試験 令和6年度 問1(午前の部 問1) (訂正依頼・報告はこちら)

表現の自由に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為について、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがある場合には、当該表現行為の事前差止めを認めても憲法第21条第1項に違反するものではない。
イ  公職の選挙に関し戸別訪問を禁止する目的は、戸別訪問という手段方法がもたらす弊害を防止し、もって選挙の自由と公正を確保するという正当なものであるが、一律に戸別訪問を禁止することは、合理的でやむを得ない限度を超えて意見表明の自由を制約するものであり、当該目的との間に合理的な関連性があるということができず、憲法第21条第1項に違反する。
ウ  報道機関が、取材の目的で、公務員に対し、国家公務員法で禁止されている秘密漏示行為をするようそそのかす行為は、その手段・方法にかかわらず正当な取材活動の範囲を逸脱するものであるから、これを処罰しても、憲法第21条の趣旨に反しない。
エ  公務員及びその家族が私的生活を営む場所であり一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない集合住宅の共用部分及び敷地に管理権者の意思に反して立ち入ることは、それが政治的意見を記載したビラの配布という表現の自由の行使のためであっても許されず、当該立入り行為を刑法上の罪に問うことは、憲法第21条第1項に違反するものではない。
オ  傍聴人が法廷においてメモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、憲法第21条第1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであり、理由なく制限することはできない。

(参考)
憲法
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
 2検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
  • アエ
  • アオ
  • イウ
  • イオ
  • ウエ

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この過去問の解説 (2件)

01

表現の自由に関する問題です。

憲法の問題はこのように判例の趣旨を問うものが多いので、必要であれば判例の原文まであたって理解するように努めましょう。

選択肢3. イウ

公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為について、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがある場合には、当該表現行為の事前差止めを認めても憲法第21条第1項に違反するものではない。

 

北方ジャーナル事件(最大判昭61.6.11)に基づく問題です。

判例は、本肢のように一定の条件を満たす場合には、出版の事前差止めを認めています。

よって、本肢は正しいです。

 

 

公職の選挙に関し戸別訪問を禁止する目的は、戸別訪問という手段方法がもたらす弊害を防止し、もって選挙の自由と公正を確保するという正当なものであるが、一律に戸別訪問を禁止することは、合理的でやむを得ない限度を超えて意見表明の自由を制約するものであり、当該目的との間に合理的な関連性があるということができず、憲法第21条第1項に違反する。

 

戸別訪問禁止合憲判決(最判昭56.6.15)に基づく問題です。

判例は、「戸別訪問を一律に禁止している公職選挙法138条1項の規定は、合理的で必要やむをえない限度を超えるものとは認められず、憲法21条に違反するものではない。」としています。

よって、本肢は誤りです。

 

 

報道機関が、取材の目的で、公務員に対し、国家公務員法で禁止されている秘密漏示行為をするようそそのかす行為は、その手段・方法にかかわらず正当な取材活動の範囲を逸脱するものであるから、これを処罰しても、憲法第21条の趣旨に反しない。

 

外務省秘密漏洩事件(最判昭53.5.31)に基づく問題です。

判例は、「報道機関が公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといつて、直ちに当該行為の違法性が推定されるものではなく、それが真に報道の目的からでたものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為である。」としています。

よって、本肢は誤りです。

 

 

公務員及びその家族が私的生活を営む場所であり一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない集合住宅の共用部分及び敷地に管理権者の意思に反して立ち入ることは、それが政治的意見を記載したビラの配布という表現の自由の行使のためであっても許されず、当該立入り行為を刑法上の罪に問うことは、憲法第21条第1項に違反するものではない

 

住居侵入被告事件(最判平21.11.30)に基づく問題です。

判例は、本肢のように、ビラの配布を目的とする場合にも刑法上の不法侵入の罪に問うことを認めています。

よって、本肢は正しいです。

 

 

傍聴人が法廷においてメモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、憲法第21条第1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであり、理由なく制限することはできない。

 

レペタ事件(最大判平1.3.8)に基づく問題です。

判例は、本肢のように、法廷で傍聴人がメモを取る行為は、一定の範囲内で認められるとしています。

よって、本肢は正しいです。

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02

表現の自由に関する問題については、判例を押さえておくようにしましょう。

選択肢3. イウ

ア 本肢は「北方ジャーナル」事件(最大判昭61.6.11)に関する判例です。

 この判例において、公共の利害に関する事項の事前差し止めが許されるかどうかにつき、本肢のとおり、表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがある場合においては事前差し止めを認めても差し支えないとしているため、本肢は正しいです。

 

イ 本肢は「戸別訪問の禁止」(最判昭56.6.15)に関する判例です。

 この中で、戸別訪問の禁止によって失われる利益は、単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない反面、禁止により得られる利益は、失われる利益に比してはるかに大きいとしています。

 そして、戸別訪問を一律に禁止することは、合理的で必要やむをえない限度を超えるものではなく、憲法21条1項に違反しないとしているため、本肢は誤りです。

 

ウ 本肢は「外務省秘密漏洩事件」(最決昭53.5.31)に関する判例です。

 報道機関の取材といえども、取材の手段・方法が取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等、法秩序全体の精神に照らし社会通念条是認することのできない態様のものである場合には、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びるとしています。

 本肢においては、手段・方法にかかわらずとしている点で誤りです。

 

エ 本肢は「公務員集合住宅へのビラ投函事件」(最判平20.4.11)に関する判例です。

 判例は、被告人の立ち入りは、刑法130条前段にある住居侵入罪にあたるものとし、当該立ち入り行為を刑法上の罪に問うことは憲法21条第1項に違反しないとしています。

 よって、本肢は正しいです。

 

オ 本肢は「法廷メモ採取事件(レペタ事件)」(最大判平元.3.8)に関する判例です。

 判例は、法廷においてメモを取ることは、憲法21条第1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであり、その制限又は禁止には、表現の自由に制約を加える場合に一般的に必要とされる厳格な基準が要求されるものではないとしています。

 よって、本肢は正しいです。


 

まとめ

表現の自由に関する判例はそれほど多くないので、判例の争点と結論を中心に学習するようにしましょう。

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