司法書士 過去問
令和6年度
問16 (午前の部 問16)

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問題

司法書士試験 令和6年度 問16(午前の部 問16) (訂正依頼・報告はこちら)

債権者Aが債務者Bに対して有する金銭債権を保全するための詐害行為取消権の行使に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。

ア  BがCから新たに借入れを行うと同時に同額の担保を供与した場合において、当該借入れ及び担保供与によりBが他の債権者を害することとなる処分をするおそれを現に生じさせたときは、Aは、BとCとが通謀して他の債権者を害する意図をもってこれを行ったときに限り、BのCに対する当該担保供与行為について詐害行為取消請求をすることができる。
イ  Bが支払不能の時にCに対する債務を弁済したが、その後、Bが支払不能の状態から回復した場合には、Aは、BのCに対する当該弁済について詐害行為取消請求をすることができない。
ウ  BがCに対して負う1000万円の債務について、時価3000万円の甲土地をもって代物弁済をした場合において、B及びCがAを害することを知っていたときは、Aは、Bが支払不能の時に当該代物弁済をしたときに限り、債務額を超える2000万円の部分について詐害行為取消権を行使して価額の償還を請求することができる。
エ  Bが、Aを害することを知って唯一の資産である甲土地を市場価格よりも著しく低額でCに売却し、その後、DがCから甲土地を買い受けた場合には、Aは、C及びDが、甲土地をそれぞれ取得した当時、Bの行為が債権者を害することを知っていたときに限り、Dの当該買受け行為について詐害行為取消請求をすることができる。
オ  BがCにした1000万円の金銭債務に対する弁済について、Aが詐害行為取消権を行使し、Cから直接支払を受けた場合には、Aは、Bに対して有する債権と、支払を受けた金銭についてのBのAに対する返還請求権とを対当額で相殺することができる。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (1件)

01

詐害行為取消権に関する問題です。

民法では、第424条~第426条に規定されていますが、先例・判例が頻繁に出題されるため、過去問に出ているものはしっかりと覚えましょう。

 

なお、詐害行為取消請求の基本的な要件は、以下のとおりです(民法424条等)。

1 その行為により、債務者の資力がなくなるなど、債権者が害されること(詐害性

2 債務者が債権者を害することを知ってしたこと(債務者の悪意

3 受益者が債権者を害することを知っていたこと(受益者の悪意

4 財産権を目的とすること

5 債権が詐害行為以前の原因に基づいて発生していること
6 債権が強制執行により実現できること

選択肢1. アウ

以下全問、債権者Aが債務者Bに対して有する金銭債権を保全するための詐害行為取消権の行使についての問題です。

 

BがCから新たに借入れを行うと同時に同額の担保を供与した場合において、当該借入れ及び担保供与によりBが他の債権者を害することとなる処分をするおそれを現に生じさせたときは、Aは、BとCとが通謀して他の債権者を害する意図をもってこれを行ったときに限り、BのCに対する当該担保供与行為について詐害行為取消請求をすることができる。

 

本問において、債権者:A、債務者:B、受益者:Cです。

まず、「おそれを現に生じさせた」とあることから、冒頭の要件1は満たします。

そしてBとCが悪意であれば要件2・3を満たしますが、これは単に悪意であればよく、BとCが通謀している必要はありません

よって、通謀して行ったときに限るわけではないため、本肢は誤りです。

 

 

Bが支払不能の時にCに対する債務を弁済したが、その後、Bが支払不能の状態から回復した場合には、Aは、BのCに対する当該弁済について詐害行為取消請求をすることができない。

 

判例は、「詐害行為の時点で債務者が無資力であっても、その後に債務者が資力を回復した場合には、詐害行為取消権を行使することができない。」としています(大判大15.11.13)。

(回復していればわざわざ詐害行為をする必要はないからです。)

よって、本肢は正しいです。

 

 

BがCに対して負う1000万円の債務について、時価3000万円の甲土地をもって代物弁済をした場合において、B及びCがAを害することを知っていたときは、Aは、Bが支払不能の時に当該代物弁済をしたときに限り、債務額を超える2000万円の部分について詐害行為取消権を行使して価額の償還を請求することができる。

 

民法第424条の4には、以下のように規定されています。

債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるもの(=本問での代物弁済)について、第424条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第1項の規定にかかわらずその消滅した債務の額に相当する部分意外の部分(=2000万円の部分)については、詐害行為取消請求をすることができる。」

そして、第424条の3第1項では、「債務者が支払不能」かつ「債務者の受益者の通謀がある」場合のみ、詐害行為の全部(=甲土地の代物弁済そのもの)を取り消すことができると規定されています。

よって、債務者が支払不能であるか否かは第424条の4に無関係なので、本肢は誤りです。

 

 

Bが、Aを害することを知って唯一の資産である甲土地を市場価格よりも著しく低額でCに売却し、その後、DがCから甲土地を買い受けた場合には、Aは、C及びDが、甲土地をそれぞれ取得した当時、Bの行為が債権者を害することを知っていたときに限り、Dの当該買受け行為について詐害行為取消請求をすることができる。

 

転得者(=D)が悪意であるときは、転得者に対しても詐害行為取消請求をすることができます(民法424条の5)。

よって、本肢は正しいです。

 

 

BがCにした1000万円の金銭債務に対する弁済について、Aが詐害行為取消権を行使し、Cから直接支払を受けた場合には、Aは、Bに対して有する債権と、支払を受けた金銭についてのBのAに対する返還請求権とを対当額で相殺することができる。

 

詐害行為取消請求により詐害行為そのものがリセットされるので、通常のお金の流れは以下のようになります。

1 B→C:1,000万円弁済(詐害行為)

2 A→B:詐害行為取消請求

3 C→B:1,000万円返還

4 B→A:1,000万円弁済

しかし、この3・4を省略し、CからAに直接1,000万円を返還しても、同様の結果が得られます。

よって、本肢は正しいです。

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