司法書士 過去問
令和6年度
問18 (午前の部 問18)

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問題

司法書士試験 令和6年度 問18(午前の部 問18) (訂正依頼・報告はこちら)

贈与に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。

ア  他人物を目的とする贈与は、贈与者がその物の所有権を取得した時からその効力を生ずる。
イ  受贈者は、書面によらない贈与であれば、履行の終わった部分についても解除することができる。
ウ  AがBに対して一定の財産を定期的に贈与する旨を約した場合において、Aが死亡したときは、当該贈与は、その効力を失う。
エ  15歳に達した者が死因贈与をするには、その法定代理人の同意を得ることを要しない。
オ  Aが、BがCに10年間にわたり毎年200万円を支払うという負担付きで、Bに対して4000万円に相当すると考えた甲建物を贈与した場合において、甲建物に不具合が存在していたために3000万円の価値しかないことが判明したときであっても、Bは、Aに対し、Cに支払うべき金銭の減額を請求することはできない。
  • アウ
  • アエ
  • イエ
  • イオ
  • ウオ

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題は、贈与に関する記述を判例の趣旨に照らし合わせて検討し、正しい記述の組合せの選択肢を選びます。

選択肢5. ウオ


他人物(他人の所有物)を目的とする贈与に関する記述です。
売買契約と異なり、贈与は原則として無償であるため、贈与者が贈与時点でその物の所有者でない場合でも、贈与契約自体は有効とされます。ただし、本記述のように「所有権を取得した時から効力が生ずる」とするのは誤りです。
実際には、贈与契約の効力自体は当初から生じます。所有権が移転できるかどうかは別問題です。


書面によらない贈与(口約束など)は、民法550条により履行前であれば各当事者が自由に解除できます。
しかし、一度履行された部分については、もう贈与が完了しているので、解除することはできません。
本記述は「履行の終わった部分についても解除できる」としており、誤りです。


定期贈与に関する記述です。
これは、たとえば毎年いくらかを贈与するといった継続的な贈与契約を意味します。判例上、このような定期贈与契約は、贈与者が死亡した場合には未履行分について効力を失うと解されています。理由としては、贈与は贈与者の意思に強く依存する契約であるため、死亡によりその意思が消滅するからです。
本記述は正しいです。


死因贈与は、贈与者の死亡を条件として効力が発生する契約です。
一見すると遺言に似ていますが、これは契約行為であり、遺言のように15歳で単独にできる行為ではありません。民法では、契約をするには原則として意思能力に加えて行為能力(成年や未成年者の制限)が必要です。15歳の未成年者が死因贈与をするには、法定代理人の同意が必要になります。
本記述は誤りです。


負担付き贈与に関する記述です。
これは、贈与でありながら、受贈者が何らかの義務(ここでは第三者への定期支払)を負う形式です。このような場合、贈与物に欠陥があったからといって、受贈者が一方的に負担の軽減を求めることはできません(売買契約とは異なるため、担保責任の規定も限定的にしか適用されません)。判例上、贈与者に悪意がないかぎり、贈与物に欠陥があっても、原則として負担の軽減は認められません。
本記述は正しいです。

まとめ

贈与契約の性質や、負担付き贈与、定期贈与、死因贈与といった特別な形態をしっかり理解しておきましょう。

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02

贈与については、民法第549条~第554条に規定されています。

基本的な問題が多いので、確実に得点できるようにしましょう。

選択肢5. ウオ

他人物を目的とする贈与は、贈与者がその物の所有権を取得した時からその効力を生ずる。

 

贈与について規定した民法第549条には、「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」とあります。

この条文を見る限り、ある財産としか規定されておらず、贈与者の所有物である必要はありません。

よって、本肢は誤りです。

 

 

受贈者は、書面によらない贈与であれば、履行の終わった部分についても解除することができる。

 

書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができますが、履行の終わった部分についてはこの限りではありません(民法550条)。

よって、本肢は誤りです。

 

 

AがBに対して一定の財産を定期的に贈与する旨を約した場合において、Aが死亡したときは、当該贈与は、その効力を失う。

 

定期の給付を目的とする贈与(定期贈与)は、贈与者又は受贈者の死亡によって、効力を失います(民法552条)。

よって、本肢は正しいです。

 

 

15歳に達した者が死因贈与をするには、その法定代理人の同意を得ることを要しない。

 

15歳に達した者は有効に遺言を作成することはできますが、未成年者が遺言をする場合、遺贈は単独で有効にできるものの、死因贈与は単独ではできません

よって、本肢は誤りです。

 

 

Aが、BがCに10年間にわたり毎年200万円を支払うという負担付きで、Bに対して4000万円に相当すると考えた甲建物を贈与した場合において、甲建物に不具合が存在していたために3000万円の価値しかないことが判明したときであっても、Bは、Aに対し、Cに支払うべき金銭の減額を請求することはできない。

 

負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負います(民法551条2項)。

今回、Bが負担する額は2000万円なので、甲建物の価値が3000万円であっても、Aは担保責任を負いません(2000万円<3000万円)。

よって、本肢は正しいです。

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