司法書士 過去問
令和6年度
問21 (午前の部 問21)

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問題

司法書士試験 令和6年度 問21(午前の部 問21) (訂正依頼・報告はこちら)

扶養に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。

ア  扶養権利者を扶養した扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合における各自の分担額について、扶養義務者の間で協議が調わなかったときは、家庭裁判所が当該分担額を審判で定める。
イ  扶養権利者と扶養義務者との間で扶養の程度又は方法について協議が調った後に、事情の変更があったときは、家庭裁判所は、その協議の変更又は取消しをすることができる。
ウ  家庭裁判所は、特別の事情がある場合には、扶養を受けるべき者の父母の兄弟姉妹の子に扶養の義務を負わせることができる。
エ  ある扶養権利者に対して扶養義務者が数人ある場合において、扶養義務者の間で扶養をすべき者の順序について協議が調ったときは、当該扶養権利者は、その協議により定められた順序に従って扶養の請求をしなければならない。
オ  扶養権利者は、扶養義務者との間で扶養料の具体的な額について協議をする前に扶養を受ける権利を放棄することができる。
  • アイ
  • アエ
  • イウ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (2件)

01

扶養の問題で重要なポイントは、「扶養義務を誰が負うか」「扶養の順序」「扶養請求権を処分できるか」です。これらを全て理解していれば、少なくとも解答を導くのに窮することはないでしょう。

 

⑴扶養義務を誰が負うか

①直系血族・兄弟姉妹

②3親等内の親族(特別の事情がある場合に限る)

 

⑵扶養の順序(扶養義務者が数人いる場合)

原則:当事者間の協議による

例外:家庭裁判所の審判による(協議が不調の場合、協議ができない場合)

 

⑶扶養請求権を処分できるか

原則:できない

例外:債権として具体化していれば可能

 

各選択肢については以下の通りです。

 

選択肢1. アイ

ア: 当事者間で扶養の負担額について協議が整わない場合には、家庭裁判所の協議を以て決定されます。知らなかった場合にも、上記⑵例外を思い出して、推理できると良いです。

 

イ: 第880条そのままです。知っておいて欲しい条文ではありますが、事情の変更があった場合に協議の変更ができない訳がないという判断が出来れば十分です。

選択肢2. アエ

エ: このような規定は存在しないので誤りです。

 

選択肢3. イウ

ウ: ポイントは親等の数え方を理解しているかどうかです。親等とは、対象者との血縁上の距離を示すものです。

1親等は、親・子が該当します。2親等は、祖父母・孫・兄弟姉妹が該当します。3親等は、曽祖父母・曾孫・叔父叔母・甥姪が該当します。

「父母の兄弟姉妹の子」は4親等に該当するため、特別の事情があったとしても扶養義務を負わせることは出来ません。

選択肢4. ウオ

オ: 上記⑶例外の通り、債権が具体化する前に扶養を受ける権利を放棄することは出来ません。

選択肢5. エオ

解説は他選択肢に記載しておりますので、そちらを参照してください。

まとめ

扶養は条文数が少なく、出題も少ない分野です。ただ基本的な知識さえ頭に入れてしまえば点を取れるので、特に冒頭の解説をしっかり覚えておきましょう。

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02

扶養については、民法第877条~第881条に規定されています。

あまり出題されませんが、条文の内容を問う問題は解けるようにしておきたいです。

選択肢1. アイ

扶養権利者を扶養した扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合における各自の分担額について、扶養義務者の間で協議が調わなかったときは、家庭裁判所が当該分担額を審判で定める。

 

判例は、「扶養権利者を扶養してきた扶養義務者が、他の扶養義務者に対し、自己の負担した過去の扶養料を求償する場合、各自の分担額は、協議が調わない限り、家庭裁判所が審判で定めるべきである。」としています(最判昭42.2.17)。

よって、本肢は正しいです。

 

 

扶養権利者と扶養義務者との間で扶養の程度又は方法について協議が調った後に、事情の変更があったときは、家庭裁判所は、その協議の変更又は取消しをすることができる。

 

扶養の程度又は方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができます(民法第880条)。

よって、本肢は正しいです。

 

 

家庭裁判所は、特別の事情がある場合には、扶養を受けるべき者の父母の兄弟姉妹の子に扶養の義務を負わせることができる。

 

家庭裁判所は、特別の事情があるときは、直系血族及び兄弟姉妹以外の三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができます(民法第877条第1項、第2項)。

父母の兄弟姉妹の子は4親等に当たるので、本肢は誤りです。

 

 

ある扶養権利者に対して扶養義務者が数人ある場合において、扶養義務者の間で扶養をすべき者の順序について協議が調ったときは、当該扶養権利者は、その協議により定められた順序に従って扶養の請求をしなければならない。

 

このような規定はありませんので、本肢は誤りです。

※ 他の条文や判例をみる限り、扶養に関しては実情を重視する傾向にあるため、順序に拘束される考え方はあまり馴染みません。

 

 

扶養権利者は、扶養義務者との間で扶養料の具体的な額について協議をする前に扶養を受ける権利を放棄することができる。

 

扶養を受ける権利は、処分することができません(民法第881条)。

よって、本肢は誤りです。

※ ただし、弁済期が到来したものについては放棄することができます

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