司法書士 過去問
令和6年度
問22 (午前の部 問22)

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問題

司法書士試験 令和6年度 問22(午前の部 問22) (訂正依頼・報告はこちら)

遺言に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。

ア  証人となることができない者が同席して作成された公正証書遺言は、民法所定の証人が立ち会っている場合であっても、無効である。
イ  自筆証書によって遺言をする場合にしなければならない押印は、指印によることはできない。
ウ  遺言者が自筆証書遺言に添付した片面にのみ記載のある財産目録の毎葉に署名し、押印していれば、当該目録について自書することを要しない。
エ  成年被後見人は、事理を弁識する能力を一時回復した時に、医師二人の立会いがあれば、自筆証書によって遺言をすることができる。
オ  自筆証書遺言に記載された日付が真実の作成日付と相違する場合には、それが誤記であること及び真実の作成日付が証書の記載から容易に判明するときであっても、当該遺言は、無効である。
  • アイ
  • アオ
  • イウ
  • ウエ
  • エオ

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この過去問の解説 (2件)

01

遺言の形式は法定されており、その有効性を確保するために厳格な要件が課されていますが、判例では実質的な趣旨を重視して柔軟に解釈される場面もあります。各選択肢には、遺言の方式、証人の資格、添付書類の取扱い、被後見人の遺言能力など、実務上重要な論点が含まれています。

選択肢4. ウエ


公正証書遺言には、民法969条により、証人2人以上の立会いが必要です。
仮に証人以外に「証人となれない者」(例えば未成年者や推定相続人など)が同席していたとしても、民法所定の証人が正しく立ち会っていれば有効とされます。判例でも、証人要件を満たしている者が2名以上立ち会っている限り、他に立会人がいても無効にはならないと解されています。
本記述は、無効と断定しており、誤りです。


自筆証書遺言では、全文の自書と署名押印が必要とされます(民法968条)。
押印について、実務上は認印や指印も有効とされていますが、判例上、指印による押印も有効と認められることがあります。本人の意思が明確に確認できるものであれば、方式違反とはされません。
本記述は、「指印は不可」と断定しており、誤りです。

2019年の法改正により、自筆証書遺言に財産目録を添付する場合には、その目録について自書する必要はないとされました(民法968条2項)。
ただし、その場合でも目録の各ページに署名押印が必要です。
本記述では、片面にのみ記載のある目録について「毎葉に署名押印していれば自書不要」としており、正しいです。


成年被後見人は、原則として遺言能力がないとされますが、一時的に事理弁識能力を回復した場合には、医師2人の立会いの下で遺言をすることができます(民法973条)。
この要件を満たしていれば、自筆証書遺言も可能です。
本記述は正しいです。


自筆証書遺言の日付の記載は必須要件であり、真実と異なる場合や記載が不確かな場合には、遺言全体が無効とされることがあります。
ただし、判例では、記載された日付が明らかに誤記であり、真実の日付が他の記載から容易に判別できるときは、遺言を有効と認める余地があるとしています。
本記述では「誤記でも無効」と断定しており、誤りです。

まとめ

遺言の方式に関する問題では、条文の要件だけでなく、判例の柔軟な解釈も踏まえて判断する必要があります。特に、自筆証書遺言の添付書類や押印の扱い、一時的に判断能力を回復した者による遺言の有効性など、形式面にとどまらず実質的な意思表示の有無が重視される点が重要となります。形式不備による無効とされるケースと、有効とされる例外の違いを正確に整理しておきましょう。

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02

遺言は非常に重要な分野であり、実務においても扱うことが多いです。条文数も多いことから正確な理解が求められます。

 

各選択肢については以下の通りです。

選択肢1. アイ

ア: 「証人2人以上の立会い」という要件を満たしている場合には、仮に遺言の証人となることができない者が同席していた場合においても有効です。ただし同席することで遺言の内容が左右されるような特別の事情がある場合には無効となります。

 

イ: 押印は、実印のほか認印や指印も許容されます。ただし、花押は押印の要件を満たしません。

選択肢2. アオ

オ: 遺言書には具体的な又は特定できる日付を記載する必要があり、日付に誤りがある場合には原則として無効となります。

ただし誤記であること及び真実の日付が記載から判明する場合には、有効と解することができます。

 

遺言は人の最後の意思表示となります。そのためなるべく遺言者の真意を探求することが求められ、要件を仮に充足していなかったとしても直ちに無効と解するのではなく、有効となる余地があるか検討してみてください。このような推理ができるようになると、知らない選択肢が出てきてもある程度予測立てて回答を導くことができます。

選択肢3. イウ

ウ: 自筆証書遺言は遺言者が自筆で作成することが原則ですが、財産目録を自筆する必要はありません。

また「自筆」に関して、代筆やワープロなどは要件を満たしませんので認められません。

選択肢4. ウエ

エ: 成年被後見人であっても、事理を弁識する能力を一時回復し、医師2人以上の立会いあれば有効に遺言をすることができます。

選択肢5. エオ

解説は他選択肢に記載しておりますので、そちらを参照してください。

まとめ

本問は遺言の方式に関する民法の出題でしたが、不動産登記法の択一や記述問題と絡めて出題されることもあります。正確な知識を持っていないと命取りになる可能性がありますので、しっかりと復習してください。

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