司法書士 過去問
令和6年度
問23 (午前の部 問23)

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問題

司法書士試験 令和6年度 問23(午前の部 問23) (訂正依頼・報告はこちら)

特別の寄与に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。

ア  Aには、配偶者B及び子Cがおり、BがAに対して無償で療養看護をしていたところ、Aが死亡し、B及びCがAを相続した。この場合において、Bが療養看護をしたことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Bは、Cに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。
イ  Aには、子B及びCがおり、Cの配偶者DがAに対して無償で療養看護をしていたところ、Aが死亡し、B及びCがAを相続した。この場合において、Dが療養看護をしたことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Dは、B及びCに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。
ウ  Aには、子Bがおり、Aの弟であるCが定期的にA名義の預金口座に現金を振込送金し、生活費の援助をしていたところ、Aが死亡し、BがAを相続した。この場合において、CがAの生活費を援助したことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Cは、Bに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。
エ  特別寄与者と相続人との間で特別寄与料の支払について協議が調わない場合には、特別寄与者は、法定の期間内に、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。
オ  特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
  • アイ
  • アウ
  • イエ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (2件)

01

特別寄与に関する問題で重要なポイントは、⑴誰が⑵どのような要件の下で請求できるかというところです。

 

⑴誰が

被相続人の介護などをした相続人以外の親族相続人に対して金銭を請求することができます。

 

⑵請求できる要件

①被相続人に対して療養看護などの労務を提供していること

②①によって被相続人の財産の維持・増加に貢献していること

③役務が無償であること

 

上記を確認しましたら、解説を参照してみてください。

 

選択肢1. アイ

ア: 労務を提供している者が配偶者(=相続人)であることから特別の寄与は認められません。配偶者であれば相続によって財産を引き継ぐことから出来るからです。

 

イ: 相続人以外の親族とは、6親等内の血族配偶者及び3親等内の姻族です。労務を提供している者は子の配偶者であることから「親族」の要件を満たします。 したがって特別寄与料の支払いを請求することが出来ます。

選択肢2. アウ

ウ: Cはあくまで現金を振込むことで経済的な支援をしているに過ぎず、療養看護などの労務を提供しているとは言えません。したがって特別寄与料の支払いを請求することは出来ません。

選択肢3. イエ

エ: 特別寄与料の支払いについて協議が整わないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。

ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6ヶ月又は相続が開始してから1年を経過したときは、協議に代わる処分を請求することが出来ない点に注意が必要です。

 

親族法や相続法の分野ではこのような規定が多く設けられていますので、知っていなくても判断できると良いでしょう。

 

選択肢4. ウオ

オ: 条文通りの出題です。(民法1050条4項)

最も保護されるべきは相続人であることから、特別の寄与をしたとしても、受領できる金額には制限があります。

選択肢5. エオ

解説は他選択肢に記載しておりますので、そちらを参照してください。

まとめ

特別寄与料の制度は近年始まったものになりますので、学習していない方も多いと思います。あまり重要な分野ではないので、まずは上記解説をしっかり理解しましょう。

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02

特別の寄与については、民法第1050条に規定されています。

この条文さえおさえれば確答できる可能性が高いので、確実におさえましょう。

選択肢2. アウ

Aには、配偶者B及び子Cがおり、BがAに対して無償で療養看護をしていたところ、Aが死亡し、B及びCがAを相続した。この場合において、Bが療養看護をしたことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Bは、Cに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。

 

特別寄与料の請求ができるのは、被相続人の親族相続人、相続の放棄をした者、欠格・廃除者を除くに限られます(民法1050条1項)。

BはAの相続人なので、特別寄与料の請求はできません。

よって、本肢は誤りです。

 

 

Aには、子B及びCがおり、Cの配偶者DがAに対して無償で療養看護をしていたところ、Aが死亡し、B及びCがAを相続した。この場合において、Dが療養看護をしたことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Dは、B及びCに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。

 

特別寄与料の請求は、被相続人に対して無償療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合に認められます

DはAの親族(相続人ではない)であり、Aに対して、「無償」で、「療養看護」をしています。

よって、DはAの特別寄与者に当たると考えられるので、本肢は正しいです。

 

 

Aには、子Bがおり、Aの弟であるCが定期的にA名義の預金口座に現金を振込送金し、生活費の援助をしていたところ、Aが死亡し、BがAを相続した。この場合において、CがAの生活費を援助したことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Cは、Bに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。

 

前述のとおり、特別寄与料の請求は、被相続人に対して「無償」で、「療養看護等の労務提供」をした場合に認められる権利です。

Cが行った生活費の援助は「療養看護等の労務提供」とはいえず、Cは特別の寄与をしたとは認められないでしょう。

よって、本肢は誤りです。

 

 

特別寄与者と相続人との間で特別寄与料の支払について協議が調わない場合には、特別寄与者は、法定の期間内に、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。

 

特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます(民法1050条2項)。

ただしこの請求は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、又は相続開始の時から1年以内にしなければなりません(同項)。

よって、本肢は正しいです。

 

 

特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

 

特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません(民法1050条4項)。

よって、本肢は正しいです。

まとめ

このように、特別の寄与については民法第1050条の知識のみですべて答えられる場合が多いです。

出題されたときには確実に答えられるようにしましょう。

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