賃貸不動産経営管理士の過去問
令和5年度(2023年)
問6

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この過去問の解説 (2件)

01

どこに何を報告する必要があるのかを確認しておきましょう。

選択肢1. 浄化槽の法定点検には、定期検査と設置後等の水質検査があるが、その検査結果は、どちらも都道府県知事に報告しなければならないこととされている。

【正】

定期検査と設置後等の水質検査の検査結果は、どちらも都道府県知事に報告する必要があります。

選択肢2. 自家用電気工作物の設置者は、保安規程を定め、使用の開始の前に経済産業大臣に届け出なければならない。

【正】

自家用電気工作物の設置者は、保安規程を定め、使用開始前に経済産業大臣に届け出る必要があります。

選択肢3. 簡易専用水道の設置者は、毎年1回以上、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の指定する機関に依頼して検査し、その検査結果を厚生労働大臣に報告しなければならない。

【誤】

簡易専用水道の設置者は、毎年1回以上、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の指定する機関に依頼して検査し、その検査結果の報告を市町村に対して行う必要があります

選択肢4. 消防用設備等の点検には機器点検と総合点検があるが、その検査結果はどちらも所轄の消防署長等に報告しなければならない。

【正】

消防用設備等の点検には機器点検と総合点検がありますが、その検査結果はどちらも所轄の消防署長等に報告する必要があります。

 

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02

この問題は、「建物管理に関連する法定点検」についての知識を問うものです。

 

賃貸住宅管理業務において、建物や設備の安全性と適法性を確保することは非常に重要です。そのため、浄化槽、電気設備、給水設備、消防設備など、各種設備の法定点検や検査の実施と、その結果の報告義務について整理しておく必要があります。

 

特に注意すべき点は以下の通りです:
・点検や検査の種類と頻度
・実施主体(誰が点検・検査、報告を行うか)
・結果の報告先(どの機関に報告するか)

 

参考文献)
浄化槽法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=358AC1000000043
環境省関係浄化槽法施行規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=359M50000100017
電気事業法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339AC0000000170
水道法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332AC0000000177
水道法施行令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332CO0000000336
水道法施行細則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332M50000100045
消防法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC1000000186
消防法施行令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336CO0000000037
消防法施行規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336M50000008006

選択肢1. 浄化槽の法定点検には、定期検査と設置後等の水質検査があるが、その検査結果は、どちらも都道府県知事に報告しなければならないこととされている。

【適切です】

この選択肢は、「浄化槽の法定点検の報告先は都道府県知事である」ことがポイントです。

 

浄化槽は、下水道未整備地域で生活排水を処理する設備です。微生物の働きを利用して汚水を浄化し、きれいな水にして放流します。浄化槽法では、浄化槽管理者(通常は建物の所有者や管理会社)は、法定検査(問題文は法定点検と称していますが、正しくは法定検査が浄化槽法の条文に沿った表現です)の水質検査を、使用開始から3~8ヶ月の間(浄化槽法施行規則第4条第1項)に、指定検査機関に依頼して最初の検査(浄化槽法第7条第1項)を行います。その後は年1回、同じく指定検査機関による受検が義務付けられています(浄化槽法第11条第1項)。点検結果は、指定検査機関が都道府県知事に報告しなければなりません(浄化槽法第7条第2項、浄化槽法第11条第2項)

 

従って、この選択肢は適切な記述と言えます。

 

注釈:なお、水質検査の他に、年1回以上(環境省令で定める場合は定められた回数)の保守点検と浄化槽の清掃を実施しなければなりません(浄化槽法第10条関係)。これらの義務は、適切な維持管理により生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図るために必要なものです。

選択肢2. 自家用電気工作物の設置者は、保安規程を定め、使用の開始の前に経済産業大臣に届け出なければならない。

【適切です】

この選択肢は、「自家用電気工作物の設置者は、保安規程を定め、使用開始前に、経済産業大臣に届け出なければならない」ことががポイントです。

 

自家用電気工作物とは、自家用電気事業者以外の者が設置する電気工作物を指します。これらの電気工作物の設置者は、電気設備の保安を確保し、事故を防止するために、電気事業法に基づいて保安規程(電気工作物の設置場所、構造、設備、使用方法、管理方法、保守方法、事故発生時の措置)を定め、使用開始前に経済産業大臣に届け出る必要があります(電気事業法第42条第1項)。

 

従って、この選択肢は適切な記述と言えます。

選択肢3. 簡易専用水道の設置者は、毎年1回以上、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の指定する機関に依頼して検査し、その検査結果を厚生労働大臣に報告しなければならない。

【不適切です】

この選択肢は、「簡易専用水道の設置者には、検査の報告義務はない」ことががポイントです。

 

簡易専用水道は、水道事業者から供給される水のみを水源とし、受水槽の有効容量が10m3を超える施設です。仕組みは、水道本管から引き込んだ水を受水槽に貯め、ポンプで建物内に給水します。
簡易専用水道の設置者は、水道法に規定する管理基準(水道法施行規則第55条)に従って点検、清掃等の管理しなければなりません(水道法第34条の2第1項)。さらに、毎年1回以上定期に(水道法施行規則第56条)、地方公共団体の機関又は国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた検査機関(以下、「登録水質検査機関」と称します)による検査を受検しなければなりません(水道法第34条の2)。なお、水道法では簡易専用水道の設置者の水質検査結果の報告義務はありませんが、多くの市町村は、登録水質検査機関か簡易専用水道の設置者に簡易専用水道受検報告書の提出と、水質検査結果の保管の義務を課しています。

 

従って、この選択肢は不適切な記述と言えます。

選択肢4. 消防用設備等の点検には機器点検と総合点検があるが、その検査結果はどちらも所轄の消防署長等に報告しなければならない。

【適切です】

この選択肢は、「消防用設備等の定期点検の結果は、維持台帳に記録し、定期的に消防長又は消防署長に報告しなければならない」ことががポイントです。

 

消防用設備等の定期点検は、6ヶ月に1回実施しなければならない機器点検と 1年に1回実施しなければならい総合点検があります。防火対象物の関係者は、消防用設備等又は特殊消防用設備等について、定期点検し、その結果を維持台帳に記録((第31条の6第3項)するとともに、特定防火対象物の場合は1年に1回(第31条の6第3項第1号)、それ以外は3年に1回(第31条の6第3項第2号)ごとに消防長又は消防署長に報告しなければなりません(消防法第17条の3の3)。


なお、次の防火対象物の消防用設備等は、消防設備士又は消防設備点検資格者に点検させなければなりません。
・延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物
・延べ面積1,000㎡以上の非特定防火対象物で、消防長又は消防署長が指定するもの
・特定一階段等防火対象物
・全域放出方式の二酸化炭素消火設備が設置されている防火対象物

 

従って、この選択肢は適切な記述と言えます。

まとめ

賃貸住宅管理業者が建物の安全確保や衛生管理を維持するために重要な業務です。建物の各設備ごとに定められた法令に従って、適切な時期に点検や検査を行い、その結果を関係機関に報告することが重要です。


この問題を通じて、理解しておくべきことは、建物の設備の検査等に関係する法令は複数あることです。賃貸住宅は、貸家からタワーマンションまで多様な建物を取り扱います。ですから、賃貸住宅管理業者は、賃貸住宅管理業法のみならず、広い法的知見が必要になるということです。

 

今回の問題のポイントは、次の通りです。
・浄化槽の定期検査と水質検査の結果は都道府県知事に報告が必要です。
・自家用電気工作物の保安規程は使用開始前に経済産業大臣に届け出る必要があります。
・簡易専用水道の検査結果は、5年間の保管は必要ですが報告する義務はありません。
・消防用設備等の機器点検と総合点検の結果は所轄の消防署長等に報告が必要です。

 

今回の問題は、設備の点検と報告に関するものでしたが、実務では、適切な業者への再委託を行うことになりますが、適切に業者が業務を遂行しているかを監督する義務がありますので、点検や報告のみならず、設備の操作や保守管理といった知見も必要になります。これにより、賃貸住宅の安全性と居住性を維持し、法令遵守を確実に行いつつ、効果的な建物管理が可能になります。

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