本問は、「保育所保育指針」第1章「総則」、第2章「保育の内容」、第4章「子育て支援」に照らし合わせ、運動会の運営が適切に行われたかを判断するものです。
◎ まず、今回の事例のポイントを見てみましょう。
・子どもは1歳児である。
・事前に運動会の運営方針と保護者に対する要望事項は伝えてある。
・保護者とともに行う種目を取り入れるとともに、運動会開催に向け、お迎えの時間にはダンスで使う音楽をかけている。 = 保護者も一緒に楽しめるように配慮している。
・ほとんどの子どもは普段どおりの様子だったが、中には泣き出してしまう子どももいた。
◎ ところで、運動会とはどのような目的で行われるのでしょうか?
厚生労働省の「保育所保育指針解説」第4章「子育て支援」の「保育所を利用している保護者に対する子育て支援」には、「運動会は家庭と保育所が互いに理解し合い、その関係を深め、子どもへの愛情や成長を喜ぶ気持ちを伝え合う機会」という旨が書かれています。
それでは、設問の内容を一つずつ見ていきましょう。
A:不適切です。
次の二つの点において不適切と言えます。
1) 「せっかく保護者が見に来ているので、子どもが一人ずつセリフを言う機会を設ける」というのは、事前に保護者に伝えてある「特別に何かを発表するために練習するのではなく、普段の遊びの姿を見せていく」という方針と矛盾しています。たとえ保護者に喜んでもらう為であったとしても、方針に矛盾があっては保護者からの信頼が得られなくなることも考えられます。
2) 子どもは1歳児です。「保育所保育指針」の「1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容」によると、「言葉」領域の内容について「保育士等の応答的な関わりや話しかけにより、自ら言葉を使おうとする」とあります。「子どもが一人ずつセリフを言う機会を設ける」というのは、応答的な関わりによる自発的な発話を促すものとは言えません。
B:適切です。
「保育所保育指針」の「1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容」では、配慮事項として「子どもの自発的な活動を尊重する」とあります。そのためにも、子どもに負担をかけないことは大切です。また、保護者に普段の遊びの姿を見てもらうためにも、子どもが負担を感じていない状態で当日を迎えることは大切と言えます。
C:適切です。
「普段の遊びの姿を見せるという保育方針を共有した上で運動会に参加してもらう」ことで、普段の保育の様子を保護者に知ってもらう機会となり、家庭と保育所が互いに理解し合い、その関係を深めることに繋がったと言えます。
D:適切です。
「保育所保育指針」「総則」に、「一人一人の発達過程に応じて保育すること。その際、子どもの個人差に十分配慮すること」、「一人一人の保護者の状況やその意向を理解、受容し、それぞれの親子関係や家庭生活等に配慮しながら、様々な機会をとらえ、適切に援助すること」とあります。
泣き出してしまった子どもの保護者は、ほとんどの子どもが普段通りの様子を見せている中で我が子が泣いている状況を見て、不安に思ったかもしれません。その思いを受け止め、個人差に十分配慮した上で発達過程を保護者と共有していくことは、保育所と保護者が互いに理解し合い、関係を深めていく上で大切です。
よって、正解は「A:✕ B:〇 C:〇 D:〇」です。