障害のある子どもの保育に関して、「保育所保育指針」第1章「総則」3 保育の計画及び評価(2)「指導計画の作成」と適否を照らし合わせる問題です。
原文と解説をみた後、選択肢を一つ一つ検討していきましょう。
(原文)
キ 障害のある子どもの保育については、一人一人の子どもの発達過程や障害の状態を把握し、適切な環境の下で、障害のある子どもが他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう、指導計画の中に位置付けること。また、子どもの状況に応じた保育を実施する観点から、家庭や関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成するなど適切な対応を図ること。
(解説)
【保育所における障害のある子どもの理解と保育の展開】
保育所は、全ての子どもが、日々の生活や遊びを通して共に育ち合う場である。そのため、一人一人の子どもが安心して生活できる保育環境となるよう、障害や様々な発達上の課題など、状況に応じて適切に配慮する必要がある。こうした環境の下、子どもたちが共に過ごす経験は、 将来的に障害の有無等によって分け隔てられることなく、相互に人格と 個性を尊重し合いながら共生する社会の基盤になると考えられる。これらのことを踏まえて、障害など特別な配慮を必要とする子どもの保育を指導計画に位置付けることが求められる。
一人一人の障害や発達上の課題は様々であり、その状態も多様であることから、保育士等は、子どもが発達してきた過程や心身の状態を把握するとともに、保育所の生活の中で考えられる育ちや困難の状態を理解することが大切である。そして、子どもとの関わりにおいては、個に応じた関わりと集団の中の一員としての関わりの両面を大事にしながら、職員相互の連携の下、組織的かつ計画的に保育を展開するよう留意する。
【個別の指導計画】
保育所では、障害のある子どもを含め、一人一人の実態を的確に把握し、安定した生活を送る中で、全ての子どもが自己を十分に発揮できるよう見通しをもって保育することが必要である。そこで、必要に応じて 個別の指導計画を作成し、クラス等の指導計画と関連付けておくことが大切である。 特別な配慮を必要とする子どもの個別の指導計画を作成する際には、 日常の様子を踏まえて、その子どもにとって課題となっていることが生じやすい場面や状況、その理由などを適切に分析する。その上で、場面 に適した行動などの具体的な目標を、その子どもの特性や能力に応じて、 1週間から2週間程度を目安に少しずつ達成していけるよう細やかに設定し、そのための援助の内容を計画に盛り込む。障害や発達上の課題のある子どもが、他の子どもと共に成功する体験を重ね、子ども同士が落ち着いた雰囲気の中で育ち合えるようにするための工夫が必要である。
【家庭との連携】
障害や発達上の課題のある子どもの理解と援助は、子どもの保護者や 家庭との連携が何よりも大切である。その際、子どもの困難な状況だけでなく、得意なこと等も含めて、保育所と家庭での生活の状況を伝え合うことに留意する。子どもについての理解を深め合うことや、保護者の抱えてきた悩みや不安などを理解し支えることで、子どもの育ちを共に 喜び合うことが大切である。こうした連携を通して保護者が保育所を信頼し、子どもについての共通理解の下に協力し合う関係を形成する。
また、障害や発達上の課題のある子どもや保護者が、地域で安心して生活ができるようにすることが大切である。そのため、他の子どもの保護者に対しても、子どもが互いに育ち合う姿を通して、障害等についての理解が深まるようにするとともに、地域で共に生きる意識をもつことができるように配慮する。その際、子どもとその保護者や家族に関する プライバシーの保護には十分留意することが必要である。
【地域や関係機関との連携】
障害のある子どもの保育に当たっては、専門的な知識や経験を有する地域の児童発達支援センター・児童発達支援事業所(以下「児童発達支援センター等」という。)・児童発達支援を行う医療機関などの関係機関と連携し、互いの専門性を生かしながら、子どもの発達に資するよう取り組んでいくことが必要である。そのため、保育所と児童発達支援セ ンター等の関係機関とが定期的に、又は必要に応じて話し合う機会をもち、子どもへの理解を深め、保育の取組の方向性について確認し合うことが大切である。具体的には、児童発達支援センター等の理念や保育内容について理解を深め、支援の計画の内容を保育所における指導計画にも反映させることや、保育所等訪問支援や巡回支援専門員などの活用を通じ、保育を見直すこと等が考えられる。
また、就学する際には、保護者や関係する児童発達支援センター等の 関係機関が、子どもの発達について、それまでの経過やその後の見通しについて協議を行う。障害の特性だけではなく、その子どもが抱える生活のしづらさや人との関わりの難しさなどに応じた、環境面での工夫や援助の配慮など支援のあり方を振り返り、明確化する。これらを踏まえて、就学に向けた支援の資料を作成するなど、保育所や児童発達支援センター等の関係機関で行われてきた支援が就学以降も継続していくよう留意する。
では、一つ一つ選択肢をみていきましょう。
A 子どもの保護者や家庭との連携を通して保護者が保育所を信頼し、子どもについての共通理解の下に協力し合う関係を形成するのです。
よってAは適切です。
B.障害や発達上の課題のある子どもや保護者が、地域で安心して生活ができるようにすることが大切である。そのため、他の子どもの保護者に対しても、子どもが互いに育ち合う姿を通して、障害等についての理解が深まるようにするとともに、地域で共に生きる意識をもつことができるように配慮する。その際、子どもとその保護者や家族に関する プライバシーの保護には十分留意することが必要である。
一切提供しないのではなく配慮が必要なのです。
よってBは不適切です。
C. 互いの専門性を生かしながら、子どもの発達に資するよう取り組んでいくことが必要です。
よってCは適切です。
D.就学に向けた支援の資料を作成するなど、保育所や児童発達支援センター等の関係機関で行われてきた支援が就学以降も継続していくよう留意します。
よってDは適切です。
これより、正解は「A 〇 B ✕ C 〇 D 〇」です。