保育士の過去問
令和5年(2023年)前期
保育原理 問19
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問題
保育士試験 令和5年(2023年)前期 保育原理 問19 (訂正依頼・報告はこちら)
次のうち、日本における保育の歴史についての記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 貧しい家庭の子どもたちのための幼稚園が明治期につくられ始めた。その一つ、二葉幼稚園は赤沢鍾美が慈善により開設したものである。
B 日本において最も早く設立された公立の幼稚園は、東京女子師範学校附属幼稚園であった。そこでは設立当初から、子どもの自由で自主的な活動が保育の中心であった。
C 幼児教育への期待が高まり全国に幼稚園が普及し始めた1926(大正15)年、「幼稚園基本法」が制定された。これによって、幼稚園ははじめて制度的な地位を確立した。
D 1948(昭和23)年に文部省から刊行された「保育要領」は、幼稚園のみならず保育所及び家庭における幼児期の教育や世話の仕方などを詳細に解説したものである。
A 貧しい家庭の子どもたちのための幼稚園が明治期につくられ始めた。その一つ、二葉幼稚園は赤沢鍾美が慈善により開設したものである。
B 日本において最も早く設立された公立の幼稚園は、東京女子師範学校附属幼稚園であった。そこでは設立当初から、子どもの自由で自主的な活動が保育の中心であった。
C 幼児教育への期待が高まり全国に幼稚園が普及し始めた1926(大正15)年、「幼稚園基本法」が制定された。これによって、幼稚園ははじめて制度的な地位を確立した。
D 1948(昭和23)年に文部省から刊行された「保育要領」は、幼稚園のみならず保育所及び家庭における幼児期の教育や世話の仕方などを詳細に解説したものである。
- A:○ B:○ C:○ D:×
- A:○ B:× C:× D:○
- A:○ B:× C:× D:×
- A:× B:○ C:○ D:×
- A:× B:× C:× D:○
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この過去問の解説 (2件)
01
日本における保育の歴史についての問題です。
選択肢を一つ一つみていきましょう。
A.「二葉幼稚園」を開設したのは、野口幽香(のぐちゆか)です。キリスト教の精神に基づいて、裕福な家庭・貧しい家庭に関係なく、すべての子どもたちが平等に教育を受けられるようにという慈善からでした。
赤沢鍾美(あかざわ あつとみ)は、貧しい子ども向けに新潟市礎町に小中学校課程を教える私塾「新潟静修学校」を開きました。 戦中戦後も幼児を預かり、後に名称が「赤沢保育園」となりました。日本初の私立の保育園です。 (ウィキペディア参照)
よって、Aは不適切です。
B. 東京女子師範学校附属幼稚園は、日本初の官立幼稚園で明治9年(1876年)に設立されました。校長は、中村正直でした。中村は、ドイツの教育者で世界初の幼稚園創設者であるフレーベルを尊重していました。創造性の養育を教育の本質とし、「遊び」を主体とした幼児教育になりました。
自由で自主的な活動が保育の中心であるのは、モンテッソーリ教育法です。
日本において最も早く設立された公立の幼稚園は、京都市の「幼穉遊嬉場(ようちゆうぎじょう)」です。
「全国に先駆けて小学校の設置を進めていた京都市は, 明治8年(1875) に 柳池小学校内に「幼穉遊嬉場」を開設した。これは ドイツの幼稚園を模範としたものといわれ, 学制に基づく“幼稚小学”ではない。しかし,この幼稚園は時代に合わなかったせいか あまり受け入れられず,わずか1年半で廃止された。 その後, 昭和4年(1929) になって再開され , 平成8年(1996) に 日彰幼稚園・生祥幼稚園 など 6つの幼稚園と統合され, 現在は「中京もえぎ幼稚園」となっている。
(発祥の地コレクション 「日本最初の 幼穉遊嬉場」より引用)」
よって、Bは不適切です。
C.1926(大正15)年に制定されたのは、「幼稚園令」です。
これによって、幼稚園は初めて制度的な地位を確立しました。
「幼稚園令」は、14条からなり、「幼児を保育し、その心身を健全に発達させ、善良な性情を涵養し、家庭教育を補うこと」を目的としています。(第1条)
設置者
市町村、市町村学校組合、町村学校組合、私人であり、設置・廃止の認可は地方長官が行う。また、小学校に幼稚園を附設することができる。
入園資格
3歳から尋常小学校就学の開始期(6歳未満)に達するまでの幼児。(3歳未満の幼児を入園させることもできる)
職員
園長・保姆(保姆は原則保姆免許を持つ女性。免許状は府県が経費を負担し、小学校教員検定委員会が実施する検定に合格した者に地方長官が授与する。)
保育入園料
徴収する場合は、公立幼稚園では管理者が、私立幼稚園では設立者が地方長官の認可を経て、金額を決める。
学校教育法(昭和22年法律第26号)の公布・施行に伴い、1947年(昭和22年)3月31日限りで廃止されました。
(ウィキペディア参照)
幼稚園の法律基準には、1899年「幼稚園保育及設備規定」、1922年制定の「幼稚園令」、1947年「学校教育法」や「幼稚園設置基準」、「幼稚園教育要領」(文部科学大臣が別に公示)があります。「幼稚園基本法」はありません。
「学校教育法」や「幼稚園教育要領」は「教育基本法」に基づいています。
「教育基本法」では、幼児期の教育について次のように定めています。
第十一条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。
ちなみに、保育園と幼稚園には次のような違い(一部を表示)があります。
・保育園は、所管:厚生労働省、根拠法令:児童福祉法、対象年齢:0歳児から就学前
・幼稚園は、所管:文部科学省、根拠法令:学校教育法、対象年齢:満3歳から就学前
よって、Cは不適切です。
D.1948年(昭和23年)に文部省から刊行された「保育要領」の目次をみてみると、
一 まえがき 二 幼児期の発達特質 三 幼児の生活指導 四 幼児の生活環境 五 幼児の一日の生活 六 幼児の保育内容 七 家庭と幼稚園
となっています。この保育要領は,幼稚園・保育所・家庭における手引き書として刊行されました。
保育内容は12項目あり、「1見学,2リズム,3休息,4自由遊び,5音楽, 6お話,7絵画,8製作,9自然観察,10ごっこ遊び・劇遊び・人形芝居,11健康保育,12年中行事」です。
幼児期の教育や世話の仕方を詳しく解説しています。
よって、Dは適切です。
これより、正解は「A ✕ B ✕ C ✕ D 〇」です。
A、B、C、Dのすべてが誤りです。
Aが誤りです。
A、Dが誤りです。
B、C、Dが誤りです。
正解の選択肢です。
日本における保育の歴史において、頻出の幼稚園・保育所などの設立年、名前、設立者、場所、主な法律・指針・要領の制定(刊行・公布等)の年・名前・内容を確認しておきましょう。
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02
日本における幼稚園制度創設から保育要領制定までの経緯に関する問題です。
************************
A:誤りです。
(誤)赤沢鍾美 → (正)野口幽香
人物に関する問題は、キーワードをおさえておくことが一番大切です。
赤沢 鍾美
・新潟静修学校を創設
・赤沢保育園:日本初の私立保育園
野口 幽香
・二葉幼稚園:1900(明治33)年創設
・森島 峰:野口とともに双葉幼稚園を創設
B:誤りです。
1876年(明治9)年創設の東京女子師範学校附属幼稚園(現・お茶の水女子大学附属幼稚園)は、日本初の官立幼稚園です。公立ではありません。※ 日本初の公立幼稚園は幼穉遊嬉場(京都市)で、日本初の私立幼稚園は双葉幼稚園です。
また、東京女子師範学校附属幼稚園では当初、フレーベル主義に基づいた恩物中心の「遊び」を主体とした幼児教育を導入しました。なお、設問文中の「自由で自主的な活動」は、フレーベル主義ではなく、モンテッソーリ教育の特徴です。
C:誤りです。
(誤)幼稚園基本法 → (正)幼稚園令
※「幼稚園基本法」なるものはありません。
幼稚園制度創設 ~ 新学校制度による幼稚園誕生の経緯
1876(明治9)年 初の官立幼稚園である東京女子師範学校附属幼稚園を創設
1879(明治12)年 「教育令」制定
1926(大正15)年 「幼稚園令」制定。幼稚園が初めて制度的な地位を確立。
1947(昭和22)年 「(旧)教育基本法」制定および同法に基づく「学校教育法」制定。学校教育法に基づく幼稚園が発足。
1948(昭和23)年 「保育要領」刊行(文部省)
D:正しい内容です。
「保育要領」は、幼稚園・保育所・家庭における手引き書(幼児教育書)として刊行され、1956(昭和31)年制定の文部省「幼稚園教育要領」のもとになりました。
以上より、正解は「A:✕ B:✕ C:✕ D:〇」です。
誤りです。
誤りです。
誤りです。
誤りです。
正解です。
この機会に、東京女子師範学校附属幼稚園に関わった重要人物を確認しておきましょう。
・関信三:創設者で、初代園長
・倉橋惣三:児童心理学者で、園長。「誘導保育」を重視。『幼稚園保育法眞諦』
・松野クララ:最初の主席保母
・東基吉:助教授。フレーベルの恩物を批判。『幼稚園保育法』
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