大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和6年度(2024年度)本試験
問5 (世界史B(第1問) 問5)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和6年度(2024年度)本試験 問5(世界史B(第1問) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

世界史上、様々な地域や時代に見られた体制と制度について述べた次の文章を読み、後の問いに答えよ。

次の資料1・2は、イングランドの国王エドワード(証聖王)の死後に、イングランドあるいはノルマンディーで見られた政治的動きに関して、それぞれの地域で書かれた記録である。(引用文には、省略したり、改めたりしたところがある。)

資料1
イングランド人の誉れ、平和をもたらす王エドワードは、23年間と6か月の統治の後、ロンドンで死去した。その翌日、エドワードが葬られると、副王であるハロルド(注1)が、イングランド中の最有力の貴族たちによって国王に選ばれた。彼は、エドワード王が死の前に、王国の継承者として指名していた人物であった。そして葬儀と同じ日に、ハロルドは、ヨーク大司教によって、国王にふさわしく正式に聖別(注2)された。王国の統治を開始するとすぐに、ハロルドは、不正な法を廃止して正しい法の制定に取り掛かった。また教会の保護者となり、敬虔で慎(つつ)ましく、悪しき者を憎み、陸と海で祖国の防衛に努めた。
(注1)ハロルド ― イングランド国王ハロルド2世のこと。
(注2)聖別 ― 国王の即位に際して、聖職者が執り行う塗油の儀式のこと。

資料2
b ノルマンディー公は、道理にかなったやり方で遠征の準備を進めたいと望んだ。彼は聖職者をローマ教皇のもとに送り、ハロルドがどのように彼に仕えたか、そして自ら行った宣誓を破り、嘘をついたかを説明させた。というのもハロルドは彼の娘を娶(めと)らず、またエドワードが彼に与えた王国を譲らなかった、ハロルドもそのことを認めて宣誓していたにもかかわらず、である。それゆえ聖なる教会の見解に従って、この偽証者を罰する許可を与え給(たま)え。もしノルマンディー公がイングランドを征服することを神がお望みなら、彼は聖ペテロからイングランドを受け取り、その結果、神以外のいかなる者に仕えることもないであろうと。それで教皇はノルマンディー公に征服の許可を与え、旗を送った。

資料1・2からは、イングランドとノルマンディーとの間で、ハロルド2世の王位継承に対する認識の違いがあったことが分かる。このことが、ノルマンディー公による1066年のイングランド征服の一因となった。これは後世まで語り継がれる歴史的大事件として、人々の記憶に深く刻まれることになる。しかしこの事件が起こるよりも前からすでに、王国の政治は、ブリテン島の海の向こうの諸勢力と連動しつつ展開していた。そもそも彼よりも半世紀前にイングランドの王位を奪取した、デンマーク出身の人物がいた。また、イングランドを統一したウェセックス王家は、積極的に北西ヨーロッパの家門と婚姻関係を作り上げていた。例えば10世紀の王エセルスタンの異母妹は( イ )の最初の妻であったが、( イ )は後にローマ教皇から戴冠され、これが神聖ローマ帝国の起源とされる。さらに証聖王とノルマンディー公は、証聖王の母を通じて血縁に当たり、証聖王自身も若い頃にノルマンディーに亡命した過去を持つ。これらの事実が示すのは、c イングランド王国の歴史を、ヨーロッパ史という広い文脈のなかで理解する必要があるということである。

下線部bの人物の名あ・いと、資料1・2から読み取れる内容について述べた文X~Zとの組合せとして正しいものを、後のうちから一つ選べ。

下線部bの人物の名
あ  ウィリアム
い  クヌート(カヌート)

資料1・2から読み取れる内容
X  資料1によれば、ハロルド2世は、証聖王によって後継者に指名されることなく、また王国の有力者によって選出されることもないままに、国王の座についた。
Y  資料2によれば、証聖王がノルマンディー公に王位を譲る約束をしていたにもかかわらず、ハロルドが宣誓を破って即位したことから、ハロルドの王位継承は許されない。
Z  資料1はノルマンディー側の認識を示し、資料2はイングランド側の認識を記述したものである。
  • あ ― X
  • あ ― Y
  • あ ― Z
  • い ― X
  • い ― Y
  • い ― Z

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この過去問の解説 (1件)

01

正しい組合せは 「あ―Y」 です。


資料2は、ノルマンディー公ウィリアムがハロルドの即位を「宣誓違反」とみなし、教皇に遠征の許可を求めた経緯を示しています。

このため、ハロルドの継承を認めないという内容Yが当てはまります。

 

 

【各文の検証】

X
資料1では、

・ハロルドがエドワード証聖王に後継者として指名され、

・イングランドの有力貴族から選出されて即位した

と明記されています。

よって「指名も選出もない」というXは誤りです。

 

Y
資料2には、

・ハロルドがウィリアムへの忠誠宣誓を破った

・教皇がウィリアムに征服の許可と旗を与えた
と書かれ、ハロルドの王位継承を否定する趣旨が示されています。

Yは正しいです。

 

Z
資料1はイングランド側の年代記、資料2はノルマンディー側の記録です。

説明を入れ替えているためZは誤りです。

選択肢1. あ ― X

誤りです。

選択肢2. あ ― Y

正しい組み合わせです。

選択肢3. あ ― Z

誤りです。

選択肢4. い ― X

誤りです。

選択肢5. い ― Y

誤りです。

選択肢6. い ― Z

誤りです。

まとめ

ウィリアムは「宣誓違反」を口実に教皇の承認を得て遠征しました。

ハロルドは国内の手続きに従って即位しており、両者の主張が対立したことが1066年の征服戦争の伏線です。

このように、同じ出来事でも立場の違いで史料の記述が大きく異なる点に注意が必要です。

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