大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和6年度(2024年度)追・再試験
問21 (世界史B(第4問) 問3)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和6年度(2024年度)追・再試験 問21(世界史B(第4問) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)

歴史上、戦争は政治や文化そして人々の生活などの様々な側面に影響を与えてきた。それについて述べた次の文章Aを読み、後の問いに答えよ。

A 夏休みを利用して、大学生の小畑さんと伊藤さんが十字軍遠征の拠点の一つであったエグモルトを訪れた。(引用文には、省略したり、改めたりしたところがある。)
伊藤:やっと着いたね。小畑さんはゼミで十字軍について発表してから、ずっとここに来たいって言ってたんだよね。
小畑:フランス王の十字軍遠征に同行したジョワンヴィルの文書を使って発表をしたんだ。その十字軍はエジプトを攻撃したんだけど、実はその直後、エジプトでは将軍たちによるスルタン暗殺事件が起こったんだよ。
伊藤:そう言えば高校のとき、サラーフ=アッディーンによって建てられた王朝が、クーデタで倒されたって学んだね。
小畑:そうだね。ただ実際にはこの後、西アジアでは、aクーデタで誕生した新王朝とダマスクスを拠点として存続していた旧王朝勢力との間で争いが生じるんだ。この争いに、エジプト攻撃後も西アジアに滞在していたフランス王が関わっていくんだよ。ジョワンヴィルが書いた文書を持ってきたから、この資料を見てよ。

資料
王がアッコンに滞在中、ダマスクスから使者が来た。使者は、スルタンを殺害したエジプトの将軍たちの罪状を王に強く訴え、もし加勢してくれるならイェルサレムを王に譲り渡そうと言った。王は、エジプトの将軍たちが休戦の約定を守る気がないなら、ダマスクスの勢力に加勢すると返答した。
王は使者をエジプトに派遣した。エジプトの将軍たちは、自分たちと手を結ぶというなら、喜んで約定を守ろうと述べた。
その後、エジプトから使者が到来し、イェルサレムを王に引き渡すこととなった。その結果、我々はダマスクスの勢力に対抗する手助けをすることとなった。

伊藤:なるほど。十字軍遠征はキリスト教世界とイスラーム世界との対立という視点だけでは考えられないんだね。

前の文章を参考にしつつ、資料に登場する王の事績あ・いと、この王が主導した十字軍の経路として最も適当な経路a~cとの組合せとして正しいものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。

王の事績
あ  王権を南フランスに拡大させた。
い  教皇ボニファティウス8世と対立した。

王が主導した十字軍の経路
問題文の画像
  • あ ― a
  • あ ― b
  • あ ― c
  • い ― a
  • い ― b
  • い ― c

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この過去問の解説 (1件)

01

正しい組合せは、「あ―c」です。


資料の王はフランス王ルイ9世(在位1226〜1270年)であり、彼が率いた第7回十字軍はエグモルトを出帆して地中海を横断し、エジプトのダミエッタに上陸しました(経路c)。

国内では、ルイ9世がアルビジョワ十字軍後の講和(1229年パリ条約)を継承し、王権をラングドックなど南フランスへ拡大させています。

 

【各選択肢の検討】

あ 王権を南フランスに拡大させた。
アルビジョワ派討伐後、ルイ9世はトゥールーズ伯領をはじめ南部諸都市の服従を確実にし、王領を地中海沿岸まで伸ばしました。

よって「王権の南フランスへの拡大」はルイ9世の事績と一致します。

 

い 教皇ボニファティウス8世と対立した。
ボニファティウス8世と激しく対立したのは孫のフィリップ4世(1285〜1314年)であり、ルイ9世ではありません。

したがって「い」は今回の王には当てはまりません。

 

経路a
フランス北部から陸路でコンスタンティノープルを経て聖地へ向かう経路です。

第1回十字軍やドイツ皇帝の遠征に近く、ルイ9世の行動とはずれます。

 

経路b
イタリア半島・アドリア海を経てエーゲ海沿いに向かう点線経路で、第2回十字軍のフランス王ルイ7世などがたどったルートに当たります。

資料の遠征(エジプト攻撃)が示す航程ではありません。

 

経路c
エグモルト(南仏)→西地中海を横断→キプロス経由でエジプトのダミエッタに上陸し、さらにナイル河口から内陸へ進む折れ線が描かれています。

これはルイ9世の第7回十字軍(1248〜1254年)そのものです。

選択肢1. あ ― a

誤りです。

選択肢2. あ ― b

誤りです。

選択肢3. あ ― c

正しい組み合わせです。

選択肢4. い ― a

誤りです。

選択肢5. い ― b

誤りです。

選択肢6. い ― c

誤りです。

まとめ

ルイ9世の第7回十字軍は、北フランスの港ではなく自ら築いたエグモルトから直航でエジプトを狙った点が特徴です。

遠征先でマムルーク台頭(スルタン暗殺)という政変に遭遇し、エジプト・シリア両勢力と交渉する複雑な外交を余儀なくされました。

国内では、アルビジョワ戦後処理を通じて王領を南部へ広げ、フランス王権の一体化を進めています。

このように、十字軍の指導と国内統治が密接に結び付いていたことを押さえておきましょう。

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