大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和6年度(2024年度)追・再試験
問20 (世界史B(第4問) 問2)
問題文
A 夏休みを利用して、大学生の小畑さんと伊藤さんが十字軍遠征の拠点の一つであったエグモルトを訪れた。(引用文には、省略したり、改めたりしたところがある。)
伊藤:やっと着いたね。小畑さんはゼミで十字軍について発表してから、ずっとここに来たいって言ってたんだよね。
小畑:フランス王の十字軍遠征に同行したジョワンヴィルの文書を使って発表をしたんだ。その十字軍はエジプトを攻撃したんだけど、実はその直後、エジプトでは将軍たちによるスルタン暗殺事件が起こったんだよ。
伊藤:そう言えば高校のとき、サラーフ=アッディーンによって建てられた王朝が、クーデタで倒されたって学んだね。
小畑:そうだね。ただ実際にはこの後、西アジアでは、aクーデタで誕生した新王朝とダマスクスを拠点として存続していた旧王朝勢力との間で争いが生じるんだ。この争いに、エジプト攻撃後も西アジアに滞在していたフランス王が関わっていくんだよ。ジョワンヴィルが書いた文書を持ってきたから、この資料を見てよ。
資料
王がアッコンに滞在中、ダマスクスから使者が来た。使者は、スルタンを殺害したエジプトの将軍たちの罪状を王に強く訴え、もし加勢してくれるならイェルサレムを王に譲り渡そうと言った。王は、エジプトの将軍たちが休戦の約定を守る気がないなら、ダマスクスの勢力に加勢すると返答した。
王は使者をエジプトに派遣した。エジプトの将軍たちは、自分たちと手を結ぶというなら、喜んで約定を守ろうと述べた。
その後、エジプトから使者が到来し、イェルサレムを王に引き渡すこととなった。その結果、我々はダマスクスの勢力に対抗する手助けをすることとなった。
伊藤:なるほど。十字軍遠征はキリスト教世界とイスラーム世界との対立という視点だけでは考えられないんだね。
前の文章を参考にしつつ、資料の内容について述べた文として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
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問題
大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和6年度(2024年度)追・再試験 問20(世界史B(第4問) 問2) (訂正依頼・報告はこちら)
A 夏休みを利用して、大学生の小畑さんと伊藤さんが十字軍遠征の拠点の一つであったエグモルトを訪れた。(引用文には、省略したり、改めたりしたところがある。)
伊藤:やっと着いたね。小畑さんはゼミで十字軍について発表してから、ずっとここに来たいって言ってたんだよね。
小畑:フランス王の十字軍遠征に同行したジョワンヴィルの文書を使って発表をしたんだ。その十字軍はエジプトを攻撃したんだけど、実はその直後、エジプトでは将軍たちによるスルタン暗殺事件が起こったんだよ。
伊藤:そう言えば高校のとき、サラーフ=アッディーンによって建てられた王朝が、クーデタで倒されたって学んだね。
小畑:そうだね。ただ実際にはこの後、西アジアでは、aクーデタで誕生した新王朝とダマスクスを拠点として存続していた旧王朝勢力との間で争いが生じるんだ。この争いに、エジプト攻撃後も西アジアに滞在していたフランス王が関わっていくんだよ。ジョワンヴィルが書いた文書を持ってきたから、この資料を見てよ。
資料
王がアッコンに滞在中、ダマスクスから使者が来た。使者は、スルタンを殺害したエジプトの将軍たちの罪状を王に強く訴え、もし加勢してくれるならイェルサレムを王に譲り渡そうと言った。王は、エジプトの将軍たちが休戦の約定を守る気がないなら、ダマスクスの勢力に加勢すると返答した。
王は使者をエジプトに派遣した。エジプトの将軍たちは、自分たちと手を結ぶというなら、喜んで約定を守ろうと述べた。
その後、エジプトから使者が到来し、イェルサレムを王に引き渡すこととなった。その結果、我々はダマスクスの勢力に対抗する手助けをすることとなった。
伊藤:なるほど。十字軍遠征はキリスト教世界とイスラーム世界との対立という視点だけでは考えられないんだね。
前の文章を参考にしつつ、資料の内容について述べた文として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
- 十字軍遠征を成功させた王は、ダマスクスの勢力とエジプトの将軍の両者から協力要請を受け、両者を和解に導こうとした。
- 十字軍遠征が失敗に終わった王のもとに、ダマスクスの勢力とエジプトの将軍の両者から協力要請が届いたが、王はどちらにも協力しなかった。
- 十字軍遠征を成功させた王は、イスラーム教徒の支配下にあったイェルサレムの譲渡を条件に、ダマスクスの勢力に協力することにした。
- 十字軍遠征に失敗した王は、イスラーム教徒の支配下にあったイェルサレムの譲渡を条件に、エジプトの将軍に協力することにした。
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この過去問の解説 (1件)
01
最も適当なものは、
「十字軍遠征に失敗した王は、イスラーム教徒の支配下にあったイェルサレムの譲渡を条件に、エジプトの将軍に協力することにした。」です。
資料では、エジプト遠征に敗れたフランス王(ルイ9世)がアッコンに滞在中、まずダマスクス側から加勢要請を受けます。
しかしエジプトの将軍団がより有利な条件―イェルサレムを譲り渡す―を提示したため、最終的に王はエジプト側に肩入れし、ダマスクス勢力と戦うことを約束しました。
王は遠征に敗北しており、和解を試みた記録もないので事実と異なります。
資料には、王が最終的にエジプトの将軍側を支援すると明記されているため不適当です。
遠征は成功ではなく失敗であり、協力相手はダマスクスではなくエジプトの将軍でした。
敗北してアッコンに滞在していた王が、イェルサレムを条件にエジプト側へ加勢した流れを正しく示しています。
十字軍とイスラーム勢力の関係は単純な宗教対立ではなく、イスラーム側内部の権力抗争(マムルーク新政権とダマスクスの旧アイユーブ朝勢力)に、十字軍国家や西欧王侯がしばしば巻き込まれました。
今回の資料はその一例であり、敗北後のルイ9世が、条件次第でイスラーム勢力の一方と手を結んだ事実を示しています。
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