大学入学共通テスト(国語) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問23 (第3問(古文) 問3)

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問題

大学入学共通テスト(国語)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問23(第3問(古文) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、『蜻蛉(かげろう)日記』の一節である。療養先の山寺で母が死去し、作者はひどく嘆き悲しんだ。以下は、その後の場面から始まる。これを読んで、後の問いに答えよ。なお、設問の都合で本文の段落に[1]〜[6]の番号を付してある。

[ 1 ]かくて、とかうものすることなど(注1)、いたつく(注2)人多くて、みなしはてつ。いまはいとあはれなる山寺に集ひて、つれづれとあり。夜、目もあはぬままに、嘆き明かしつつ、山づらを見れば、霧はげに麓(ふもと)をこめたり。京もげに誰(た)がもとへかは出(い)でむとすらむ、いで、なほここながら死なむと思へど、生くる人(注3)ぞいとつらきや。
[ 2 ]かくて十余日になりぬ。僧ども念仏のひまに物語するを聞けば、「この亡くなりぬる人の、あらはに見ゆるところなむある。さて、近く寄れば、消え失せぬなり。遠うては見ゆなり」「いづれの国とかや」「みみらくの島となむいふなる」など、口々語るを聞くに、いと知らまほしう、悲しうおぼえて、かくぞいはるる。
ありとだによそにても見む名にし負はばわれに聞かせよみみらくの島
といふを、兄人(せうと)なる人聞きて、それも泣く泣く、
いづことか音にのみ聞くみみらくの島がくれにし人をたづねむ
[ 3 ]かくてあるほどに、立ちながらものして(注4)、日々にとふめれど、ただいまは何心もなきに、穢(けが)らひの心もとなきこと、おぼつかなきことなど、むつかしきまで書きつづけてあれど、ものおぼえざりしほどのことなればにや、おぼえず。
[ 4 ]里にも急がねど、心にしまかせねば、今日、みな出で立つ日になりぬ。来し時は、膝に臥(ふ)し給(たま)へりし人を、いかでか安らかにと思ひつつ、わが身は汗になりつつ、さりともと思ふ心そひて、頼もしかりき。此度(こたみ)は、いと安らかにて、あさましきまでくつろかに乗られたるにも、道すがらいみじう悲し。
[ 5 ]降りて見るにも、さらにものおぼえず悲し。もろともに出で居つつ、つくろはせし草なども、わづらひしよりはじめて、うち捨てたりければ、生ひこりていろいろに咲き乱れたり。わざとのこと(注5)なども、みなおのがとりどりすれば、我はただつれづれとながめをのみして、「ひとむらすすき虫の音(ね)の」とのみぞいはるる。
手ふれねど花はさかりになりにけりとどめおきける露にかかりて
などぞおぼゆる。
[ 6 ]これかれぞ殿上などもせねば、穢らひもひとつにしなしためれば(注6)、おのがじしひき局(つぼね)(注7)などしつつあめる中に、我のみぞ紛るることなくて、夜は念仏の声聞きはじむるより、やがて泣きのみ明かさる。四十九日(しじふくにち)のこと(注8)、誰(たれ)も欠くことなくて、家にてぞする。わが知る人(注9)、おほかたのことを行ひためれば、人々多くさしあひたり。わが心ざしをば、仏をぞ描(か)かせたる。その日過ぎぬれば、みなおのがじし行きあかれぬ。ましてわが心地は心細うなりまさりて、いとどやるかたなく、人(注10)はかう心細げなるを思ひて、ありしよりはしげう通ふ。

(注1)とかうものすることなど ―― 葬式やその後始末など。
(注2)いたつく ―― 世話をする。
(注3)生くる人 ―― 作者を死なせないようにしている人。
(注4)立ちながらものして ―― 作者の夫である藤原兼家が、立ったまま面会しようとしたということ。立ったままであれば、死の穢(けが)れに触れないと考えられていた。
(注5)わざとのこと ―― 特別に行う供養。
(注6)これかれぞ殿上などもせねば、穢らひもひとつにしなしためれば ―― 殿上人もいないので、皆が同じ場所に籠もって喪に服したことを指す。殿上で働く人には、服喪に関わる謹慎期間をめぐってさまざまな制約があった。
(注7)ひき局 ―― 屏風(びょうぶ)などで仕切りをして一時的に作る個人スペース。
(注8)四十九日のこと ―― 人の死後四十九日目に行う、死者を供養するための大きな法事。
(注9)わが知る人 ―― 作者の夫、兼家。
(注10)人 ―― 兼家。

2段落、3段落の内容に関する説明として適当なものを、次の選択肢のうちから二つ選べ。
  • 僧たちが念仏の合間に雑談しているのを聞いて、その不真面目な態度に作者は悲しくなった。
  • 作者は「みみらくの島」のことを聞いても半信半疑で、知っているなら詳しく教えてほしいと兄に頼んだ。
  • 「みみらくの島」のことを聞いた作者の兄は、その島の場所がわかるなら母を訪ねて行きたいと詠んだ。
  • 作者は、今は心の余裕もなく死の穢れのこともあるため、兼家にいつ会えるかはっきりしないと伝えた。
  • 兼家は、母を亡くした作者に対して、はじめは気遣っていたが、だんだんといい加減な態度になっていった。
  • 作者は、母を亡くして呆然(ぼうぜん)とする余り、兼家から手紙を受け取っても、かえってわずらわしく思った。

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