司法書士の過去問
平成27年度
(旧)平成27年度 問18
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問題
平成27年度 司法書士試験 問18 (訂正依頼・報告はこちら)
次の対話は、相殺に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
教授:AがBに対して1000万円の甲債権を有し、CがAに対して1500万円の乙債権を有し、甲債権と乙債権のいずれも弁済期が到来しています。この事例( 以下「 本件事例 」という。)において、Cは、乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺をすることはできるでしょうか。
学生:(ア) Cが甲債権について第三者による弁済をすることができる場合には、Cは、乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺をすることができます。
教授:本件事例において、Aが無資力である場合には、Cは乙債権を被保全債権として、甲債権について債権者代位権を行使することができることがありますね。この場合に、Cは、どのような方法で乙債権を回収することができるでしょうか。
学生:(イ) Cは、甲債権についてBから直接弁済を受領し、受領した金銭についてのAに対する返還債務に係る債権を受働債権とし、乙債権を自働債権とする相殺をすることができます。
教授:本件事例に戻って、Aによる相殺の主張の可否について、検討してみましょう。当初Bが乙債権を有していたところ、これをCに対して譲渡していたとします。この乙債権の譲渡の前からAがBに対して甲債権を有していたとすると、Aは、甲債権を自働債権とし乙債権を受働債権とする相殺をすることはできるのでしょうか。
学生:(ウ) Aが相殺の意思表示をするよりも前に、BからAに対して乙債権の譲渡の通知がされていた場合には、Aは相殺を主張することができません。
教授:本件事例において、AがCに対して1000万円の丙債権を有していたとします。甲債権に係る債務と丙債権に係る債務とが連帯債務の関係にある場合には、Bは乙債権と丙債権との相殺を援用することができますか。丙債権についても弁済期は到来しているものとします。
学生:(エ) Bは、Cの負担部分について乙債権と丙債権との相殺を援用することができます。
教授:では、本件事例において、AがCに対して弁済期の到来している1000万円の丙債権を有しており、かつ、乙債権はもともとBのAに対する債権として発生したもので、AB間で相殺を禁止する合意がされていたとします。その合意の存在については善意であったCがBから乙債権を譲り受け、BからAに対して乙債権の譲渡の通知がされた場合には、Cは、乙債権と丙債権とを相殺することができますか。
学生:(オ) Cは、AB間でされた相殺を禁止する合意を対抗されることはありませんから、乙債権と丙債権とを相殺することができます。
教授:AがBに対して1000万円の甲債権を有し、CがAに対して1500万円の乙債権を有し、甲債権と乙債権のいずれも弁済期が到来しています。この事例( 以下「 本件事例 」という。)において、Cは、乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺をすることはできるでしょうか。
学生:(ア) Cが甲債権について第三者による弁済をすることができる場合には、Cは、乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺をすることができます。
教授:本件事例において、Aが無資力である場合には、Cは乙債権を被保全債権として、甲債権について債権者代位権を行使することができることがありますね。この場合に、Cは、どのような方法で乙債権を回収することができるでしょうか。
学生:(イ) Cは、甲債権についてBから直接弁済を受領し、受領した金銭についてのAに対する返還債務に係る債権を受働債権とし、乙債権を自働債権とする相殺をすることができます。
教授:本件事例に戻って、Aによる相殺の主張の可否について、検討してみましょう。当初Bが乙債権を有していたところ、これをCに対して譲渡していたとします。この乙債権の譲渡の前からAがBに対して甲債権を有していたとすると、Aは、甲債権を自働債権とし乙債権を受働債権とする相殺をすることはできるのでしょうか。
学生:(ウ) Aが相殺の意思表示をするよりも前に、BからAに対して乙債権の譲渡の通知がされていた場合には、Aは相殺を主張することができません。
教授:本件事例において、AがCに対して1000万円の丙債権を有していたとします。甲債権に係る債務と丙債権に係る債務とが連帯債務の関係にある場合には、Bは乙債権と丙債権との相殺を援用することができますか。丙債権についても弁済期は到来しているものとします。
学生:(エ) Bは、Cの負担部分について乙債権と丙債権との相殺を援用することができます。
教授:では、本件事例において、AがCに対して弁済期の到来している1000万円の丙債権を有しており、かつ、乙債権はもともとBのAに対する債権として発生したもので、AB間で相殺を禁止する合意がされていたとします。その合意の存在については善意であったCがBから乙債権を譲り受け、BからAに対して乙債権の譲渡の通知がされた場合には、Cは、乙債権と丙債権とを相殺することができますか。
学生:(オ) Cは、AB間でされた相殺を禁止する合意を対抗されることはありませんから、乙債権と丙債権とを相殺することができます。
- アウ
- アエ
- イウ
- イオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
相殺は、同一当事者間の相対立する債権であることが要件であり、本問のような異なる当事者間の債権を相殺することはできません。
イ 〇
Cは債権者代位権を行使することで、AからBへの債権を直接取り立て、自己の弁済にあてることができ、その債権とCのAに対する債権を相殺することができます。
ウ ×
乙債権の譲渡より前に、相殺適状が生じていますので、Aは乙債権の譲渡の通知より前に相殺の意思表示をしなくても、相殺を主張することができます。
エ 〇
連帯債務者は、他の連帯債務者の負担部分についてのみ、他の債務者の有する相殺権を行使することができます。
オ 〇
Cは善意の第三者にあたるため、相殺権を行使することができます。
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02
誤っている選択肢はアとウなので、1が正解です。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 判例は、対等額によって債権を消滅させる相殺と弁済は別のものであることを理由に、本件類似の事例において、Cが乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺をすることはできない、としています(大審院昭和8年12月56日判決)。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 判例は、本件類似に事例において、債権者の債務者に対する返還債務に係る債権を受働債権とし、債権者の債務者に対する債権を自働債権とする債権者による相殺は認められる、としています(大審院昭和10年3月12日判決)。従って、本選択肢は正しいです。
ウ. 民法468条2項では、譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるときまでに譲渡人に対して生じた事由をもって、譲受人に対抗することができる、と規定していますが、判例て、本件類似の事案において、債務者の相殺の主張は許される、としています(大審院明治34年2月21日判決)。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 相殺すべき債権を有する債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者は、相殺を援用することができます(民法436条2項参照)。従って、本選択肢は正しいです。
オ. 相殺の合意の禁止は、善意の第三者に対抗することはできません(民法505条2項但書参照)。従って、本選択肢は正しいです。
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03
相殺が可能になる相殺適状の要件に二当時者間で債権が対立していることが必要とされています。したがって、選択肢の場合は当事者間が異なるため相殺が出来ません。
イ正
その通り。債権者代位権により甲債権を代位行使し、直接弁済を受領します。その後、返還債務と乙債権が相殺されます。
ウ誤
506条2項より相殺は、相殺適状が生じたときに遡及して効力を生じます。
エ正
連帯債務関係にある場合は事例のように相殺ができます。
オ正
相殺禁止の合意は善意の第三者に対抗することが出来ません。
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