司法書士の過去問
平成27年度
(旧)平成27年度 問24
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問題
平成27年度 司法書士試験 問24 (訂正依頼・報告はこちら)
刑法における故意に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aは、Bを脅迫しようと考え、パソコン上で「 お前を殺してやる 」との内容の電子メルを作成し、これを送信したが、その際、送信先を間違えてCに送信してしまい、Cがこれを読んで畏怖した。この場合、Aには、Cに対する脅迫罪が成立する。
イ Aは、鹿の狩猟のために山中に入ったところ、山菜採りのために山中に入っていたB( 人間 )を鹿であると誤信してライフル銃を発射しその弾がBの脚に当たって重傷を負わせた。この場合、Aには、傷害罪が成立する。
ウ Aは、勤務する会社で担当した会計処理の誤りを取り繕うため、取引先であるB名義の領収証を偽造したが、その際、領収証は私文書偽造罪における「 文書 」には当たらないと思っていた。この場合、Aには、私文書偽造罪は成立しない。
エ Aは、酒場で口論となったBの顔面を拳で殴り、その結果、Bが転倒して床で頭を強く打ち、脳挫傷により死亡したが、Aは、Bを殴った際、Bが死亡するとは認識も予見もしていなかった。この場合、Aには、傷害致死罪が成立する。
オ Aは、殺意をもって、Bの頭を鉄パイプで数回殴り、Bが気絶したのを見て、既に死亡したものと誤信し犯行を隠すためにBを橋の上から川に投げ入れたところ、Bは転落した際に頭を打って死亡した。この場合、Aには、殺人罪は成立しない。
ア Aは、Bを脅迫しようと考え、パソコン上で「 お前を殺してやる 」との内容の電子メルを作成し、これを送信したが、その際、送信先を間違えてCに送信してしまい、Cがこれを読んで畏怖した。この場合、Aには、Cに対する脅迫罪が成立する。
イ Aは、鹿の狩猟のために山中に入ったところ、山菜採りのために山中に入っていたB( 人間 )を鹿であると誤信してライフル銃を発射しその弾がBの脚に当たって重傷を負わせた。この場合、Aには、傷害罪が成立する。
ウ Aは、勤務する会社で担当した会計処理の誤りを取り繕うため、取引先であるB名義の領収証を偽造したが、その際、領収証は私文書偽造罪における「 文書 」には当たらないと思っていた。この場合、Aには、私文書偽造罪は成立しない。
エ Aは、酒場で口論となったBの顔面を拳で殴り、その結果、Bが転倒して床で頭を強く打ち、脳挫傷により死亡したが、Aは、Bを殴った際、Bが死亡するとは認識も予見もしていなかった。この場合、Aには、傷害致死罪が成立する。
オ Aは、殺意をもって、Bの頭を鉄パイプで数回殴り、Bが気絶したのを見て、既に死亡したものと誤信し犯行を隠すためにBを橋の上から川に投げ入れたところ、Bは転落した際に頭を打って死亡した。この場合、Aには、殺人罪は成立しない。
- アウ
- アエ
- イウ
- イオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢はアとエなので、2が正解です。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. AはBを脅迫しようと考えたが、実際にはCを脅迫しています。これは、行為者が認識した事実と、現実に発生した事実に食い違いがあり、さらに、その食い違いが、脅迫罪(刑法222条)という同一構成要件内に止まるものであるから、具体的事実の錯誤に当たります。判例は、犯罪の故意があるとするには、罪となる事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と、現実に発生した事実が必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもって足りる、としています(最高裁昭和53年7月28日判決)。従って、本選択肢は正しいです。
イ. 罪を犯す意思がない行為は、罰しないとされます(刑法38条1項本文)。罪を犯す意思である行為がない行為は、故意犯として罰せられることはありません。すなわち、故意犯である傷害罪(刑法204条)が成立するためには、傷害の故意が必要です。従って、本選択肢は誤りです。
ウ. Aが偽造した領収書は、社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書として私文書偽造罪(刑法159条)の客体である「事実証明に関する文書」に当たります。もっとも、Aは、領収書が私文書偽造罪の「文書」には当たらないと思っており、これは、刑罰法規の解釈を誤って当該行為が許されると誤信した場合であるから、法律の錯誤に当たります。判例は、法律の錯誤は、故意を阻却しないとしていますから(最高裁昭和62年7月16日判決)、本選択肢は誤りです。
エ. AがBを殴った際、Bが死亡するとは認識も予見もしていなかったから、傷害致死罪のような結果的加重犯が成立するためには、行為者が過重結果を認識又は予見したいることが必要かが問題となります。判例は、暴行と死亡との間に因果関係の存在を必要とするが、致死の結果については、予見を必要としない、としています(最高裁昭和32年2月26日判決)。従って、本選択肢は正しいです。
オ. Aは、Bの頭を鉄パイプで殴った行為(第1行為)によってBが死亡したと誤診しているが、実際は、その後、Bを橋の下から川に投げ入れた行為(第2行為)によってBは死亡しており、これは因果関係の錯誤に当たります。そこで、因果関係の錯誤が存在する場合に、故意が阻却されるかが問題となります。判例は、被告人の第1行為の結果との間には因果関係があり、第2行為の介在はその因果関係を遮断せず、故意を阻却しない、としています。従って、本選択肢は誤りです。
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02
AはBを脅迫しようと考え、Cを脅迫しており、同じ構成要件の中での錯誤になります。判例は本問のような具体的事実の錯誤については、法定的符号説に立っており、AにはCに対する脅迫罪が成立します。
イ ×
AはBを鹿と誤信してライフル銃を発射しており、Bに対する傷害の故意がありません。よって、Aには傷害罪は成立しません。
ウ ×
法律上禁止されている行為であることを知らないことを法律の錯誤といい、法律の錯誤によっては、罪を犯す意思がなかったとはされません。よって、Aには、私文書偽造罪が成立します。
エ 〇
Aは傷害の故意があり、その結果Bを死亡させていますので、因果関係が認められ、傷害致死罪が成立します。
オ ×
本問は因果関係の錯誤の問題であり、AはBを殺そうと思ってBを殺していますので、故意は阻却されず、Aには殺人罪が成立します。
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03
同一の構成要件において具体的事実が錯誤である場合、判例は法定的符号説をとっています。したがってAはCに対する脅迫罪が成立します。
イ誤
抽象的事実の錯誤の場合は傷害の故意はありませんので成立しません。
ウ誤
法律による禁止規定があることを知らない場合であっても判例は有罪としています。したがって私文書偽造罪が成立します。
エ正
傷害罪は暴行罪の結果的加重犯です。したがって暴行の故意があるため傷害致死罪が成立します。
オ誤
典型的な因果関係の錯誤です。人を殺す意思があるため殺人罪が適用されます。
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